著者
森田 紘圭 大西 暁生 田畑 智博
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.113-124, 2019-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
17

東日本大震災における災害廃棄物の多量発生を契機に,現在,各地域の自治体では,積極的に災害廃棄物処理計画の策定を進めており,それに伴い災害時の広域的な処理体制構築や準備が進められているところである。一方,個々の被災現場におけるがれき処理においては,高齢化による自助努力の難しさやボランティアの不足などの課題があり,十分に対策が進んでいない。本研究は,災害時における廃棄物処理,特に初動期における被災家屋におけるがれき処理段階を取り上げ,地域の世帯特性に応じた対応可能性について基礎的分析を行うものである。具体的には,多摩川水系のうち東京都・神奈川県の洪水想定区域内に居住する住民400人を対象に,水害発生時における災害廃棄物処理への対応に関するアンケート調査を実施することで,世帯特性に応じたがれき処理への対応可能性や支援希望などを把握し,その結果を用いて地域ごとの各世帯における災害廃棄物処理への対応可能性や地域コミュニティや行政に対する支援ニーズの分析を行う。分析の結果,1)初動期の被災家屋のがれき処理においては住民が行政・ボランティアなどに希望する支援として清掃・運搬を行うための機材調達や運搬などの支援ニーズが高いこと,2)60歳以上を中心として構成される世帯では自分や家族のみによるがれき処理が困難であること,3)60歳未満を含む世帯であっても夫婦のみの世帯は支援を依頼する主体が少ない傾向があること,などが明らかとなった。また,多摩川水系で支援の必要性を確認すると,対象地域において比較的高齢化が進んでおり外部支援が必要となることが明らかとなった。
著者
大西 暁生 石 峰
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、黄河流域を対象に水利権転換の導入によって引き起こされるであろう水資源への影響と、環境汚染・資源消費・社会経済への影響を総合的に検討した。具体的には、地域の経済成長と水利用との関係を把握するとともに、地表と地下の水利用の実態を解明した。さらに、効率性を考慮することで転換可能水量を算出し、水需給ギャップの把握と黄河の流出量への影響を検討した。そして、工業生産(インフラ建設投資等)の水資源に対する影響を分析することによって、最終的にはこの流域における省資源型・環境調和型社会を目指した適正な水資源配分のあり方を水利権転換といった観点から検討した。
著者
一ノ瀬 俊明 大西 暁生 石 峰
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.167-179, 2013-03-29 (Released:2014-04-15)
参考文献数
25

中国の黄河流域において,大西ら(2006)の推計した水資源需給構造と,Ichinose et al.(2009)の推計した地下水利用構造とを地域別に直接比較することにより,データが存在せず実態把握の困難であった当該流域における地表水の利用構造を描き出すことを試みた。黄河流域に大部分が含まれる35 の地級行政単位を抽出し,立地の近接性と水資源需給構造の形態的類似性(共通する特徴)に着目してそれらを12 の小流域に分類した。一般に上流域では地表水に依存し,農業での利用割合が低いため,地下水利用の季節変動性は小さい。一方,中流域から下流域では地下水への依存の度合いが高くなり,農業での利用割合が高くなるため,地下水利用の季節変動性は大きくなる。とりわけ,その傾向は黄土高原において顕著である。また,最下流域では再び地表水に依存している。さらに地下水利用構造の類似性にもかかわらず,小流域の中でも地表水を含めた水資源の需給構造に多様性が見られる地域がある。とりわけ中流域では,大河川へのアクセスの状況に応じて多様性が顕著である。
著者
森杉 雅史 大野 栄治 宮田 譲 根本 二郎 大西 暁生 金 広文
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、近年のメコン川流域諸国の急激な経済発展に起因する水資源に関わる諸問題を、経済と環境の二つの視点に即し、統計整備と幾つかの解析を試みるものである。具体的には得られた地域内間表のサーベイと、諸国の経済状況、並びに、誘発環境負荷分析の下で諸地域の相互依存状況を見ていく。また現地調査により水質悪化に伴う疾病対策の評価も行っている。また一方で目下流域諸国の中では情報整備が抜きんでている中国を対象とし、河川流域の水資源に関する需給モデルを展開する。また、費用関数やフロンティア分析の応用などによって、水資源の農産物に対する生産性、課徴金制度の効果なども吟味している。