著者
大野 栄治
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-27, 2020 (Released:2020-02-06)
参考文献数
23

【目的】造血器腫瘍患者は固形腫瘍患者に比べて緩和ケア病棟を利用することは少ない.この研究では,緩和ケア病棟に入院した造血器腫瘍患者の臨床的特徴を明らかにした.【方法】われわれの緩和ケア病棟で5年間に死亡した造血器と固形腫瘍患者の,症状の重症度および有病率,最後の治療から死亡までの期間を比較した.【結果】560人のがん患者のうち56人(10%)が造血器腫瘍の患者であった.造血器腫瘍患者は固形腫瘍患者と同じ程度の症状重症度であり,症状では倦怠感(52% vs. 32%; p=0.004)と発熱(45% vs. 21%; p=0.0004)を多く認めていた.治療終了から死亡までの期間の中央値は造血器腫瘍で69.0日,固形腫瘍で94.5日であった(p=0.031).【結論】緩和ケア病棟に入院した造血器腫瘍患者は,固形腫瘍患者と同程度の症状重症度があり,同様のホスピスケアが必要である.
著者
大野 栄治 森杉 壽芳 高木 真志 鈴木 慎治
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.29-37, 1997

わが国では,ほとんどの大気汚染物質は度重なる規則によって減少しているが,NOxについては増加傾向にある。このNOx問題の主な原因はディーゼル車の増加にあるといわれているが,ディーゼル車は経済優先政策により税制面(特に自動車用燃料に関わる税)においてガソリン車よりも優遇されている。したがって,汚染者負担原則に従うならば,NOx問題を解決するためには軽油税を引き上げるなどしてディーゼル車を減らすべきであると考えられる。そこで本研究では,軽油税の引き上げやディーゼル車の車齢制限策などのディーゼル車抑制策によるディーゼル車台数および大気汚染物質(窒素酸化物NOx,一酸化炭素CO,炭化水素HC,浮遊粒子状物質SPM)の排出動向を分析するためにコーホート型ディーゼル車普及率予測モデルを構築し,種々のディーゼル車抑制策の効果を検討した。分析の結果,NOxのみならず他の大気汚染物質(CO,HC,SPM)の削減効果もあり,また比較的人々の合意が得られ易いという観点から,軽油税(軽油価格)の引き上げが最も適当であるとした。
著者
大洞 久佳 大野 栄治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
no.30, pp.45-54, 2002

本研究は, 旅行費用法による環境価値計測の可能性を示すことを目的とし, 環境価値に含まれる各種要素 (利用価値, 随意価値, 遺贈価値, 代位価値, 存在価値) の相関関係から, 利用価値によって環境価値のどの程度が説明できるかを検証した.まず, 各価値には有意な相関関係があり, 各価値が独立していないことを明らかにした.次に, 利用価値と各価値の相関関係より, 利用価値で説明できる部分は, 随意価値の80.17%, 遺贈価値の57.79%, 代位価値の76.60%, 存在価値の36.71%, 合計価値の78.98%であることを示した.したがって, 利用価値以外の環境価値も利用価値で80%程度説明できるため, 利用価値を評価対象とする旅行費用法で環境価値の相当部分が計測できることの可能性が示された.
著者
森 龍太 今井 海里 大野 栄治 森杉 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_31-I_41, 2014

日本では,1992年にUNESCOの世界遺産条約を締約した後,2013年末までに17件が世界遺産リストに登録されている.そのうち,白神山地はそこに広がるブナの原生的自然林およびそれに付随する公益的機能によって世界自然遺産に登録されているが,そのブナが温暖化の進行により衰退の危機に瀕している.もし世界遺産登録後のモニタリングにより顕著な普遍的価値を失っていると判断されると,世界遺産リストから抹消されることとなる.本研究では,温暖化による世界自然遺産への影響として白神山地の世界遺産登録抹消を想定し,それによる白神山地観光訪問への影響を分析した.その際,旅行費用法に基づく仮想行動法を用いて,白神山地のレクリエーション価値の変化を推計した.
著者
宮城 俊彦 大野 栄治 森杉 壽芳
出版者
日本地域学会
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.229-246, 1991-12-30 (Released:2008-10-10)
参考文献数
20

Traffic equilibrium problems become very complex when multi-type of users are on networks in which the effects of a certain type of user on other users are heterogeneous. Since transportation cost function on each link in a network should be defined as the vector function, the usual mathematical optimization formulation is no longer useful except for a special case. For such a general class of traffic equilibrium problems, only either the variational inequality approach or the fixed point approach can be applicable. Almost all of the approaches recently developed use the variational inequality approach.Although the variational inequality approach has become the primary mode of analysis in the area of traffic equilibrium and very general. as a model, convergence results for algorithms for solving this general model often impose restrictions on the model that go beyond the monotonicity assumptions required in the equivalent convex optimization approach.This paper presents the theory of a new algorithm for the network equilibrium model that works in the space of path flows using a label and pivot technique in a fixed point approach. The idea of a pivot method that is extended to the traffic equilibrium problem in this paper has been motivated by a classical model of equilibrium in an exchange economy. However, the algorithm presented here is different from the economic equilibrium application in the following ways:(1) We work not on a price simplex but in the space of proportionate flows on path joining origin-destination pairs.(2) An appropriate labelling that produces a traffic assignment equilibrium is constructed.The calculation method is constructed on the facts that the labelling method appropriate to the traffic equilibria is to assign the number of paths available with the highest travel cost to each vertex on the simplex generated by changing the proportion of path flows and that if each vertex of a subdivided simplex has a differet number to each other, that simplex includes an equilibrium solution. Furthermore, the method is generalized to produce accurate solution in corresponding with the requirement of accurate prediction of network flows.
著者
三村 信男 江守 正多 安原 一哉 小峯 秀雄 横木 裕宗 桑原 祐史 林 陽生 中川 光弘 太田 寛行 ANCHA Srinivasan 原沢 英夫 高橋 高橋 大野 栄治 伊藤 哲司 信岡 尚道 村上 哲
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

気候変動への影響が大きいアジア・太平洋の途上国における適応力の形成について多面的に研究した.ベトナム、タイ、南太平洋の島嶼国では海岸侵食が共通の問題であり、その対策には土地利用対策と合わせた技術的対策が必要である.また、インドネシア、中国(内蒙古、雲南省など)の食料生産では、地域固有の自然資源を生かした持続可能な農業経営・農村改革が必要である.また、本研究を通して各国の研究者との国際的ネットワークが形成されたのも成果である.
著者
森杉 雅史 大野 栄治 宮田 譲 根本 二郎 大西 暁生 金 広文
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、近年のメコン川流域諸国の急激な経済発展に起因する水資源に関わる諸問題を、経済と環境の二つの視点に即し、統計整備と幾つかの解析を試みるものである。具体的には得られた地域内間表のサーベイと、諸国の経済状況、並びに、誘発環境負荷分析の下で諸地域の相互依存状況を見ていく。また現地調査により水質悪化に伴う疾病対策の評価も行っている。また一方で目下流域諸国の中では情報整備が抜きんでている中国を対象とし、河川流域の水資源に関する需給モデルを展開する。また、費用関数やフロンティア分析の応用などによって、水資源の農産物に対する生産性、課徴金制度の効果なども吟味している。