著者
高野 剛志 森田 紘圭 戸川 卓哉 福本 雅之 三室 碧人 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_125-I_135, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

本研究では,大規模災害に対応した減災・防災計画を被災者の生存・生活環境の観点から検討するために,発災から復興までの間にインフラ・施設の利用可能性や住宅・周辺地区の状況によって徐々に変化する被災者の「生活の質(Quality of Life: QOL)」水準を小地区単位で評価可能なモデルシステムを構築した.岩手・宮城県を対象に東日本大震災の状況を評価した結果,事前の道路ネットワーク強化が被災直後のQOL低下抑制に大きな役割を果たす一方で,津波によるインフラ・施設破壊が津波到達地区外のQOLの回復を阻害する状況が明らかになった.これにより,道路網のリダンダンシー確保と各種生活施設の防災性向上を複合して実施する必要性が明らかになった.
著者
中村 一樹 森 文香 森田 紘圭 紀伊 雅敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_683-I_692, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21

近年,道路整備の方針は歩行者中心の多機能な空間整備へと転換が求められているが,従来の歩行空間整備は個別の機能に注目しており,多機能性を包括的に評価する手法が確立されていない.そこで本研究では,歩行空間の機能別のデザインが包括的な知覚的評価に与える影響を特定することを目的とする.まず,歩行空間整備のガイドラインをレビューして,多様なデザイン要素を機能別に整理した.そして,全国の整備事例のデザイン要素の水準を指標化し,道路タイプごとにデザイン要素の特徴を類型化した.最後に,各機能のデザインの知覚的評価のアンケート調査を行い,その意識構造について共分散構造分析を行った.この結果,歩行者は歩行空間デザインの機能に階層的なニーズを持ち,これを考慮した機能間のデザインの組合せが重要であることが示された.
著者
中島 弘貴 森田 紘圭 名畑 恵 真鍋 陸太郎 村山 顕人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.85-93, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究は、地域組織や社会的企業による任意のものも含む構想・計画とその実現手段である規制・誘導・事業という地域の制度的環境が創発する小規模事業を通じて既成市街地の再生の実態把握を行うものである。名古屋市中区錦二丁目を舞台とする”長者町まちづくり”プロジェクトの事例分析を通して、不動産・公共空間の暫定活用、改修・転用といった小規模事業と市街地再開発事業という大規模な面的開発の連携した既成市街地再生の過程を明らかにするとともに、その過程で制度的環境を通じて地域の共通の方向性を有したままテーマの異なる様々な小規模事業が展開されるエリアブランディングの仕組みが構築されたことを示した。そして、小規模事業と行政計画・事業のどちらが先行するかによって、地域の制度的環境の果たす役割が異なるという示唆を得た。
著者
森田 紘圭 稲永 哲 藤森 幹人 村山 顕人 延藤 安弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.709-714, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

現在、日本では自動車需要の頭打ちや歩行環境改善のニーズの高まりから、道路空間の見直しの議論が進んでいる。特に近年では、歩行者や滞留者にとってより快適な空間形成やその運営方法への着目が高まりつつある。本研究は、名古屋市中区錦二丁目地区における歩道拡幅社会実験における交通実態調査を実施し、自動車交通への影響を分析するとともに、温熱環境や天候、歩行空間への木材活用による歩行空間の快適性や歩行者行動の分析を行うものである。分析の結果、1)歩道拡幅による車道狭窄は通過交通の走行速度低減に効果があること、2)季節変化による屋外気温や天候の変化は歩行行動と密接な関係があり、温熱環境のコントロールが歩行空間の快適性向上に寄与する可能性があること、3)歩行空間への木材の使用は都心部において自然や景観の代替として捉えられ、歩行環境の改善に大きく寄与する可能性があることが明らかとなった。
著者
森田 紘圭 大西 暁生 田畑 智博
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.113-124, 2019-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
17

東日本大震災における災害廃棄物の多量発生を契機に,現在,各地域の自治体では,積極的に災害廃棄物処理計画の策定を進めており,それに伴い災害時の広域的な処理体制構築や準備が進められているところである。一方,個々の被災現場におけるがれき処理においては,高齢化による自助努力の難しさやボランティアの不足などの課題があり,十分に対策が進んでいない。本研究は,災害時における廃棄物処理,特に初動期における被災家屋におけるがれき処理段階を取り上げ,地域の世帯特性に応じた対応可能性について基礎的分析を行うものである。具体的には,多摩川水系のうち東京都・神奈川県の洪水想定区域内に居住する住民400人を対象に,水害発生時における災害廃棄物処理への対応に関するアンケート調査を実施することで,世帯特性に応じたがれき処理への対応可能性や支援希望などを把握し,その結果を用いて地域ごとの各世帯における災害廃棄物処理への対応可能性や地域コミュニティや行政に対する支援ニーズの分析を行う。分析の結果,1)初動期の被災家屋のがれき処理においては住民が行政・ボランティアなどに希望する支援として清掃・運搬を行うための機材調達や運搬などの支援ニーズが高いこと,2)60歳以上を中心として構成される世帯では自分や家族のみによるがれき処理が困難であること,3)60歳未満を含む世帯であっても夫婦のみの世帯は支援を依頼する主体が少ない傾向があること,などが明らかとなった。また,多摩川水系で支援の必要性を確認すると,対象地域において比較的高齢化が進んでおり外部支援が必要となることが明らかとなった。