著者
バンチャサック チャイヤプーン 木村 剛 田中 桂一 大谷 滋 コリアド C.M.
出版者
日本家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.60-66, 1998
被引用文献数
4

飼料にシスチンを添加することによってブロイラーの成長及び肝臓中の総脂肪とリン脂質含量に及ぼす影響を検討した。粗タンパク質含量23%の基礎飼料(総含硫アミノ酸=O.69%)に0.098, 0.163, 0.238及び0.324%のシスチンを添加した。シスチン添加によってブロイラーの増体重が統計的に有意に改善された(P<0.05)。しかしその効果はシスチンの添加量とは比例しなかった。シスチン添加によって飼料要求率は改善される傾向を示したが,腹腔内脂肪及び胸肉重量には影響は見られなかった。飼料へのシスチン添加によって脂肪肝スコア及び肝臓中総脂質含量は増加し(P<0.05),その程度はシスチンの添加量と比例していた。また脂肪肝スコアと肝臓中総脂質含量との間には正の相関が観察された。肝臓中リン脂質含量はシスチンの飼料への添加によって統計的に有意に減少した(P<0.05)。
著者
ブンチャサック チャイヤプーン 田中 桂一 大谷 滋 コリアド クリスチーノM.
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.956-966, 1996-11-25
参考文献数
43
被引用文献数
6 2

低タンパク質飼料にメチオニンとシスチン(Met+Cys)を添加することによって雌ブロイラーヒナ(0から21日齢)の成長と脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した.17%タンパク質(CP)含量試料(CP;17%,代謝エネルギー(ME);3,017kcal/kg)にMet+Cysを0.64%,0.93%,1.25%あるいは1.50%を添加した.23%CP含量の飼料(CP;23%,ME;3,017kcal/kg)を対照区とした.飼料摂取及び飲水は自由にさせた.増体量は23%CP飼料区の方が17%CP飼料区より大きかった.しかしMet+Cys1.50%添加17%CP飼料区の増体量は23%CP飼料区の値に近づき統計的に有意な差は観察されなかった.飼料要求率は23%CP飼料区の方が良かった.しかしタンパク質効率,飼料及びエネルギー摂取量は17%CP飼料区と23%CP飼料区との間で統計的に有意な差は観察されなかった.腹腔内脂肪量17%CP飼料区の方が高かった.しかし17%CP飼料区間ではMet+Cysの添加量が大きいほど腹腔内脂肪量は減少した.肝臓におけるacetyl-CoA carboxylase活性は処理間で差が観察されなかったが,fatty acid synthetase活性は17%CP飼料区の方が高い値を示した.一般に,低タンパク質飼料を給与すると肝臓,血清及び胸筋中のトリグリセリド含量は高くなるが,Met+Cysを1.5%添加することによって肝臓中のトリグリセリド含量は高タンパク質飼料区の値に近づいた.血清及び胸筋中の遊離型コレステロール含量は飼料中タンパク質含量の影響を受けなかった.肝臓では17%CP飼料区より23%CP飼料区の方がむしろ高かった.肝臓中リン脂質含量は飼料中タンパク質レベルやMet+Cys添加量による影響は観察されなかったが,胸筋中リン脂質含量は17%CP飼料区へのMet+Cys添加量の増加に伴って高くなる傾向を示した.本実験の結果は17%CP飼料でも適切な量のMet+Cysを添加することによって21日齢までの成長中ブロイラーの成長を改善することができることを,また腹腔内脂肪量は,23%CP飼料区の値よりは大きかったが,17%CP飼料にMet+Cysを添加することによって減少させることができることを示唆した.
著者
大谷 滋 田中 桂一
出版者
岐阜大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

鶏における細胞レベルでの糖新生機序と脂肪肝の糖新生機序におよぼす影響を明らかにするため, 正常鶏, 実験的に作成した脂肪肝症鶏および肥育終了時のブロイラー鶏の肝臓からコラゲナーゼ灌流法により単離肝細胞を調製し, そのグルコース新生能について比較検討した.本実験で用いたin situで酵素液を灌流する方法により, すべての供試鶏において, 細胞収量および細胞生存率ともに良好な単離肝細胞を得ることができた. 単離肝細胞による種々の基質からのグルコース生成量は, すべての供試鶏において, 乳酸およびフラクトースからが最も高く, ついでピルビン酸, オキザロ酢酸であり, グリセロール, アスパラギン酸およびアラニンからのグルコース生成量は非常に低いかほとんど認められなかった. 正常鶏から調製した単離肝細胞では, グルカゴンおよびc-AMPの添加によりフラクトースおよび乳酸を基質としたグルコース生成量は無添加より明らかに増加し, グルカゴンあるいはc-AMPに対する応答能は単離細胞調製操作で損なわれなかった. 実験的に作成した脂肪肝症鶏から調製した単離肝細胞でのグルコース生成は正常鶏よりも明らかに低く, 肝臓に脂質が異常に蓄積した場合その肝細胞におけるグルコース生成能は阻害を受けることが認められた. 肥育終了時のブロイラー鶏より調製した単離肝細胞によるグルコース生成量は正常鶏とほとんど同じであり, 腹腔内に多量の脂肪が蓄積し, 肝臓も肥大して黄褐色の外観を呈していたのにも関わらずグルコース生成能の低下は認められなかった. 肥育末期に発生するブロイラーの突然死の原因が血糖値の急激な低下であるとしても, それが肝臓におけるグルコース生成能の異常によるものだけではなく, 他の要因との複合によるものであると考えられた.
著者
大谷 滋 田中 桂一
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.45-51, 1992-12-25

糖新生物質の一つであるグリセロールからの糖新生について,実験的に作成した脂肪肝症雛で検討した。28日齢の雛を2群に分け,1群は対照区として市販配合飼料を給与し,他の1群には同飼料にdienestroldiacetateおよびpropylthiouracilを添加した飼料を12日間給与して脂肪肝症鶏を作成し脂肪肝症区とした。処理終了後,両区の雛にグリセロールを投与し,投与前,投与0.5,1,3および5時間後に翼下静脈より採血して全血中グリセロール濃度および血禁中のグルコースと遊離脂肪酸濃度を測定した。採血後,肝臓を採取し,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量を測定した。また,処理終了後の両区の雛を24時間あるいは72時間絶食した後,同様の測定を行なった。絶食前の脂肺肝症区の肝臓は対照区雛に比べ明らかに肥大し,明色化した。また,肝臓組織中のトリアシルグリセロール含量は脂肪肝症区で高く,対照区の10倍の値を示した。体重100g当りの肝臓重量は脂肪肝症区では絶食日数を延長するに伴い低下したが,対照区ではほとんど変化しなかった。グリセロール投与前の血漿中グルコース濃度は絶食前では両区に差は認められなかったが,絶食24時間および72時間では脂肪肝症区の方が低い値を示した。対照区では,全血中グリセロール濃度および血漿中遊離脂肪酸濃度は絶食により増加したが,脂肪肝区ではほとんど変化は認められなかった。グリセロール投与後の血漿中グルコース濃度は脂肪肝症区よりも対照区の方が上昇が速かった。脂肺肝症の鶏では肝臓からのグリセロール放出およびグリセロールからの糖新生は抑制されていると推察される。