著者
井口 洋夫 MUNRO I.H. UNDERHILL A. PHILLIPS D. SARRE P.J. ROBB M.A. DAY P. 丸山 有成 宇理須 恒雄 吉原 經太郎 斎藤 修二 中村 宏樹 伊藤 光男 DAY Peter R J.Donovan J P.Simons 平谷 篤也 阿波賀 邦夫 川嶋 良章 十倉 好紀 馬場 正昭 宮島 清一 長嶋 雲兵 M H.Palmer 藤平 正道 入江 正浩 P B.Davies A Carrington B J.Howard J M.Brown R N.Dixon 吉野 勝美 川口 健太郎 遠藤 泰樹 小尾 欣一 高見 道生 廣田 榮治 福井 一俊 MUNRO I. MEECH S.R. STACE A.J. SIMONS J.P. DONOVAN R.J. 岡田 正 川崎 昌博 加藤 肇 西 信之
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

分子計算化学に関する5+5ミーティング、放射光利用化学に関する5+5ミーティング及び分子科学5分野合同のミーティングをそれぞれ、岡崎の分子科学研究所、英国ダ-ズベリ-研究所及び英国アビントンのSERC会議所において下記の通り開催した。学術研究上の情報交換・討議が大変有意義な中に実施され、将来計画についても忌憚のない意見交換が行われた。詳細は別途冊子にまとめられる。(1)分子計算化学5+5ミーティング平成5年7月15日-17日に分子科学研究所に於て日英5+5ミーティングが行れた。イギリス側の参加者はDr.B.Sutcliffe(Univ.York),Prof.M.Robb(Kings Colledge),Dr.H.Rzepa(Imperial Colledge),Dr.D.Wales(Cambridge Univ.)とProf.J.Connor(Univ of Manchester)の5名であり、日本側は中村宏樹、大峰巌(分子研)、平尾公彦(名大、東大)、岩田末廣(慶応)、加藤重樹(京大)、山下晃一(基礎化研)の6名であった。英国における計算分子科学の現状、非断熱遷移と多次元トンネル、光異性化反応、水素結合多様性、クラスターの光解離、クラスターの構造、光解離反応、量子波束動力学、溶液のダイナミックス、反応における共鳴現象等々広範囲に亘る有益な討論が行われた。最後に、共同研究実施の問題点、将来への改良点を検討した。若手研究者の交流を深める事、出来れば1996年英国で会合を開く事で合意した。(2)放射光利用化学5+5ミーティング平成5年10月21-22日英国ダ-ズベリ-研において同分野のミーティングを開催した。出席者は日本側から伊藤光男分子研所長、井口洋夫岡崎機構機構長、宇理須恒雄、小杉信博、鎌田雅夫、見附孝一朗、西尾光弘(分子研)及び岩田末廣(慶大)の8名、英国側はA.J.Leadbetterダ-ズベリ-研所長、Munro、West、Hasnain、Jones、Eastham(ダ-ズベリ-)、Comer(マンチェスター)及びWeightman(リバプール大)の8名であった。会議はダ-ズベリ-研の研究プログラムの紹介、分子研SORにおける日英交流の成果報告にはじまり、13件の学術報告がなされた。原子分子の高励起状態、タンパク質分子、固体電子状態、反応素過程、固体表面反応、電励起電子状態理論及び有機材料の光電子分光などについて有益な討議が行われた。最後に、原子分子、固体表面、光表面反応等に関する将来の共同研究の可能性及び1995年に次回ミーティングを開催する可能性について議論した。(3)5分野合同ミーティング平成5年10月17日-20日、英国アビントンのSERC会議所において、5分野合同のミーティングを開催し、学問的議論を行うと共に、今後の日英協力のあり方について討議を行った。学問的討議内容及びその他の詳細については別途に作成される冊子にまとめられる。将来計画等についての議論の概要は次の通りである。(1)英国側科学行政一般についての説明(2)日英協力事業の日本側での運用方法についての説明(3)他機関・財団等に関する情報交換(4)本事業の将来計画について今迄の本協力事業の実績をお互いに振り返り、将来計画を討議した。少ない予算の中でも、大変有意義に進められてきた事を確認しあった。特に、5+5ミーティングは両国間の研究活動情報の交換と共同研究育成の為に大変有益に作用している。今後は、若手研究者の相互長期滞在による共同研究の奨励を一層推進していくべきであるという点で合意した。これには上記(3)の活用が不可欠となろう。来年度以後の具体的計画についても話し合い、その大筋を認めあった。各分野のキーパーソン同志の連絡を一層緊密にする事とした。因みに、平成6年度には、高分解能分光のミーティングを英国で、電子構造のミーティングを日本で開催し、予算の許す範囲で日本人若手研究者を3〜4名派遣する事とした。
著者
井口 洋夫 鈴木 修吾 中原 祐典 市村 憲司 薬師 久弥 緒方 啓典
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度においては、水素を含む3成分系有機超伝導体(Na-H-C_<60>)の試料合成において、超伝導を示す試料と超伝導を示さない試料ができてしまうが、超伝導を示さない試料を超伝導試料に変換する方法を確立した。また、超伝導相及び非超伝導相の構造をリートベルト解析により明らかにした。さらに、Na-H-C_<60>が水素ガス、重水素ガス、ヘリウムガスなどを吸蔵することを見出し、それを特許として出願した。平成10年度においては、超伝導相に対してリートベルト解析から得られた原子座標を使って電子状態の計算を行い、水素は単なるスぺーサーではなくその原子上にも伝導電子が存在し、系全体の電子状態(特に、超伝導性)に関与していることを明らかにした。さらに、この3成分系の範囲を広げて、K-H-C_<60>及びNa-NH_2-C_<60>の有機超伝導体を作成した。(KH)_3C_<60>はK_3C_<60>よりも大きな格子定数をもち、昇温脱離、^1H NMRの実験から水素が格子の中に含まれていることを確認した。さらに興味ある結果として、(NaH)_<4-x>(KH)_xC_<60>(x=0.1,0.5,1,2 and 3)も超伝導を示す上、きわめて安定な超伝導体を作ることを見い出した。これによって、水素を含む3成分系有機超伝導体を大量に作ることが可能になり、水素の存在及び挙動の解析するための中性子回折の実験の準備が整い、今後の本研究の発展に大きな進展をみることができると判断している。これらの結果は水素還元によって異常な伝導性を示す嫌気性電子伝導物質シトクロムc_3(分子量13,955)の電導機構の解明に役立つと判断し、その研究を続行している。
著者
大隅 良典 大隅 萬里子
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

自食作用は、真核細胞に普遍的で重要な生理機能である。我々が見いだした酵母の自食作用をモデル系として、分子遺伝子学的手法により自食作用に関わる分子の同定と機能の解析を進めている。本年度に得られた主な成果は以下の通りである。これまで得られている14個の自食作用不能変異(apg)を相補することを指標にAPG遺伝子群のクローニングと構造解析を進め、本年度までに13個の遺伝子の同定に成功した。これらは全て新規の遺伝子であった。我々が開発したアルカリ性ホスファターゼを用いた自食作用の検出系を用いて、APG遺伝子間の相互作用を解析した結果、Apglタンパクキナーゼの過剰発現によってspg13が抑圧されること、APG7の過剰発現によってapg4が抑圧されることが見いだされた。APG13は、親水性のタンパク質をコードしており、興味深いことにApg13pは増殖期にはリン酸化されており、栄養飢餓下には脱リン酸化される。栄養条件で存在様式が速やかに変動するタンパク質としてはじめて同定されたタンパク質である。APG9は、構造から膜タンパク質であることが推定され、細胞分画法などによりこのことが確認された。自食作用におけるダイナミックな膜動態を解析する上で重要な指標タンパク質となることが期待される。APG7は飢餓条件に応答してその発現が著しく上昇する。現在までにApg1,4,6,7,8,9,13に対する特異抗体を作製し、遺伝子産物の同定と細胞内局在性の解析を進めている。栄養培地中でも、自食作用が誘導されるcsc1,csc2の解析を進め、2つの遺伝子を同定した。
著者
大峰 巌 笹井 理生
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

水は化学反応で用いられる最も一般的な溶媒であり、かつ電子的、動力学的に大きな溶媒効果を反応に及ぼす。従って水の動的性質を知ることは非常に重要である。また水自身幾つかの特異的性質を持ち、多くの研究によってその物理化学的性質が明かになってきている。しかしミクロレベルの水の動力学的性質についてはまだ未解決の部分が多い。特に水溶媒中での化学反応系とのダイナミカルな相互作用では、個別運動と集団運動との動力学的な結合を明らかにする必要がある。ここでは、水のもつ多体系としての力学が陽に現れる事が多い。水素結合によって結ばれたある集団的な運動が水の運動の基本となっており、この相関の強い運動の記述が重要である。この水の動力学を理解するためには、水の運動に係わるポテンシャル・エネルギ-面の特徴を調べ、反応経路に於ける山の高さ、曲率などを調べ、集団運動を引き起こすPhaseーSpaceの大きさを調べる。分子動力学法に基ずくトラジェクトリ-計算を行い、その解析により、集団運動の時間的、空間的スケ-ルを調べるなどを通じて水に於ける基本的構造の変化の性質を理解する必要がある。我々は水の多体的相互作用の様相を調べる為に、まず水の基本構造をQuenching法によって求め(定義し)その時系列の変化をしらべた。その結果、20ー40個の水分子のLocalな集団運動が、水の変化の基本単位となっている。基本的な構造変化には、変位の大きなものと小さなものがある。即ち水の系はある長さの時間(サブ・ピド秒間)小さな変位を繰り返した後、大きな変位を起こして変化して行く。大きな構造変化はどの様にして起こるのであろうか。この事を調べる為、我々は、まずTrajectoryに沿ったいわゆるReactionーcoordinate(反応座標)を決定した。また大きな変化に伴うエネルギ-の山は一般に小さく2ー3Kcal/mole程度である。この事は、一般に水の基本的構造変化は、PhaseーSpase上であるminimaの郡から次のminimaの郡への細いPathを見つける時間によて制限されている。この様な水の集団運動に依って生ずる大きな揺らぎはその中での化学反応のダイナミクスに大きな影響を及ぼすことが分かった。
著者
岡田 泰伸
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

小腸上皮は吸収組織であると共に分泌組織でもある。糖やアミノ酸などのNa^+依存性の能動的吸収は絨毛上部で、Cl^1の能動的分泌はリーバーキューン腺部で行われるものと広く考えられている。ところが一部にはこの教科書的見解に対する強い疑問も依然として存在し、この「吸収・分泌機能の絨毛内分化」仮説にといての細胞レベルでの直接的検討がますます必要となっている。本研究の目的は、パッチクランプ法の適用によってこれを可能とするための哺乳動物小腸上皮細胞実験システムを得る点にある。まず私たちは、酵素的に単離した小腸上皮細胞enterocyteを用いてこの点の検討を始めたが、刷子縁の消失に見られるような単一細胞への分離による極性の喪失という致命的欠点によってそれを阻まれた。そこで今年度以前は刷子縁膜・基底側壁膜極性を完全に保持したモルモット小腸の絨毛上皮及び腺上皮の単離組織標本を得るための方法を開発した。今年度は、単離絨毛及び単離腺にパッチクランプ法を適用して、それらから各種イオンチャネル電流が記録できることを明らかにした。また絨毛部からはグルコースに応答する電流の存在も観察された。それゆえ、チャネル特性やグルコース応答の小腸「腺-絨毛軸」における勾配についての今後の研究に適用可能であることが明らかになった。今年度は、スライス標本を得るための方法の開発にも成功をみたが、これにおけるギガシールの達成には今までのところ成功せず、これにパッチクランプ法を適用していくためには細胞表面をクリーンにするためのいくつかの工夫などが必要であることがわかった。
著者
木村 克美 小倉 尚志 阿知波 洋次 佐藤 直樹 長嶋 雲兵 春日 俊夫 長倉 三郎 中村 宏樹 谷本 能文 北川 禎三 大野 公一 吉原 經太郎 OGURA Haruo
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

わが国とスウェ-デンとが共通に関心をもち,かつ共に高いレベルを保持している分子科学の諸分野において相互に研究者を派遣し,国際共同研究の態勢をつくり,研究の発展に貢献しようとする目的で本研究課題がとりあげられた.昭和63年3月分子研長倉所長とウプサラ大学シ-グバ-ン教授の間で共同研究の合意書が取り交わされ,これが今回の三年間の共同研究のベ-スになっている.とくに光電子分光及び光化学磁場効果の分野をはじめ,時間分割分光,シンクロトロン放射光科学,理論化学の分野も含められた。ウプサラ大学はESCAのメッカであり,K.シ-グバ-ン教授(昭和56年ノ-ベル物理学賞受賞)の開拓的な仕事が今も受けつがれている.同教授は現在レ-ザ-ESCA計画を遂進中で,新しい装置の開発に取り組んでいる.とくにレ-ザ-技術を導入するESCAとトロイダル回折格子を用いる高分解能光電子分光において,分子科学研究所の協力を求めている.分子研木村らはすでにレ-ザ-光電子分光で進んだ技術をもっており,シ-グバ-ン教授に協力することができた.木村の協力研究者であった阿知波洋次都立大助教授をウプサラに派遣し,レ-ザ-光電子装置の立上げに協力し,ウプサラで最初の光電子スペクトル(レ-ザ-による)が得られた.一方,共鳴線(NeI,HeII)用のトロイダル回折格子は日立の原田達男博士の協力を得て,実現し,高分解能実験の成果を期待している。ウプサラ大物理学研究所C.ノ-ドリング教授はESCAの初期に活躍した人であるが,現在はX線分光の研究を行っているが,ルント大学のシンクロトロン放射光施設でも新しい装置を製作しており,本研究課題の二年目に分子研に招へいすることができ,今後のシンクロトロン放射光研究における共同研究についても意見交換を行い有益であった。光化学反応の磁場効果の研究では長倉三郎総合研究大学院大学学長が開拓的な業績をあげているが,今回のスウェ-デンとの共同研究では,第一年次にウプサラ大学を訪問し,アルムグレン教授と光化学磁場効果について討議をかわした.谷本助教授(広島大)も光化学反応の磁場効果の研究でウプサラ大を訪れ,アルムグレン教授とミセル溶液に代表される微視的不均一溶液系の物理化学過程のダイナミックについて討議した.それぞれ今後の協力関係の基礎がきづかれた。時間分解分光では,カロリンスカ研究所のリグラ-教授は生体系のピコ秒時間分解蛍光分光法およびピコ秒光応答反応について,シンクロトロン放射光による研究と合せて,わが国との協力を希望しており,今後の協力関係が期待できる分野であることがわかった.生体分子構造の分野では分子研北川教授と小倉助手がイェテボリ大学及びシャルマ-ス大学のマルムストロ-ム教授を訪れ,チトクロ-ム酸化酵素に関して密接な協力研究を行った.今後の共同研究の基礎づくりができた。とくに小倉助手はニケ月の滞在で,マルムストロ-ム教授の研究室で,チトクロ-ム酸化酵素の時間分解吸収分光の研究とプロトン輪送の分子機構の理論的研究を行った。東大佐藤助教授はリンシェ-ピン大学の表面物理化学研究室のサラネック教授を訪れ,二ヵ月滞在し,この間に電子分光法による導電性高分子(とくに共役系高分子)とその表面の電子構造の研究で大きな成果をあげ,今回の日本-スウェ-デン共同研究の一つのハイライトでもあった。分子研長嶋助手はストックホルム大学シ-グバ-ン教授を訪れ,ニヵ月滞在して遷移金属錯体の電子構造の理論的計算を行うための計算機プログラムの開発について協力研究を行った。さらに分子研春日助教授は一年目にルント大学マツクス研究所(放射光実験施設)を訪れ,ストレッジリングの加速電子の不安性に関する種々のテスト実験を共同で行い,両者の放射光施設の発展のために有益な実験デ-タが得られた。三年目にはウプサラ大学で,分子科学第一シンポジュ-ムを開催することができ,日本から6名がスウェ-デンから12名の講演者がでて,全部で50名ほどのシンポジュ-ムであったが,極めて有意義なものであった.スウェ-デンとの交流のパイプは少しづつ太くなっており,今後の協力関係が期待できる.
著者
諸橋 憲一郎
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は生殖腺や副腎皮質などのステロイドホルモン産生組織の形成機構を明らかにすることを目的に行われた。主に核内レセプター型転写因子であるAd4BP/SF-1とDax-1の相互関係を明らかにすることに主眼をおいた。結果として、Dax-1遺伝子の転写がAd4BP/SF-1によって活性化されることが明らかになった。またこの活性化がDax-1遺伝子上に存在するAd4配列によるものであることが証明された。しかしながらこれらの結果はin vitro系で得られたものであったため、このような調節が生体内で機能していることを示すことが重要であると思われた。そこでAd4BP/SF-1遺伝子のハクアウトマウスを用い、Dax-1の発現を調べたところ脳下垂体と視床下部における発現は消失していた。この結果は生体内においてもAd4BP/SF-1はDax-1遺伝子の主要な転写因子として機能していることを示すものであった。一方、Dax-1はAd4BP/SF-1の転写活性に対し抑制的に働くことをP450SCCとP45011β遺伝子を用い明らかにしてきた。従って、Ad4BP/SF-1はステロイドホルモン産生に不可欠な遺伝子の転写を活性化するとともに、自らの転写抑制因子の転写を活性化していることになる。このような調節系は微妙な転写調節を可能にするものであると推測される。生体内においてAd4BP/SF-1により発現調節を受ける遺伝子はいずれも組織の特異性を規定するものが多く、その発現量は精密に調節される必要がある。Ad4BP/SF-1とDax-1による一見複雑とも思われる調節系が、このような精密な調節を可能にしているものと思われる。
著者
中村 宏樹 ZHAO YI
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

化学反応動力学を詳細に特徴づける時に、初期及及び終状態(内部状態)を指定した反応過程に対する断面積なる物理量が良く用いられるが,内部状態の詳細には拘らず、全体として反応が起こり易いのかどうかを特徴つける量に熱反応速度定数がある。初期内部状態については熱分布についての平均を取り、終状態については全て和を取る。Zhao氏はアメリカで電子的に断熱な化学反応の熱反応速度定数の理論とその具体的評価を行って来たが、我々の所ではその経験を活かし、しかも我々独自の非断熱遷移理論(Zhu-Nakamura理論)を用いて電子的に非断熱な化学反応の熱反応速度定数を評価する理論を構築し、その具体的応用を行う研究を進めている。始終電子状態を指定した熱反応速度定数を、遷移状態が非断熱結合の為に生じている場合について定式化する理論を構築した。現在、この理論を用いて1次元及び2次元系での計算を行いその有効性を確認している。多次元系の量子力学的厳密計算は不可能であるので、この理論の活用が期待される。1-2次元系で旨く行くことが確認出来れば、今後、多次元系への適用に挑戦する。
著者
伊藤 繁
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

従来の分光法あるいは室温EPR法では測定が困難であった、緑色植物の光化学系2酸素発生反応に働くMn原子、及び特殊なキノン、Z、の反応中心内部での存在部位を極低温EPR法を用いて明らかにした。Z分子と外部溶液中に加えた常磁性イオンDysprosiumとの相互作用の強さが両者間の距離の-6乗に反比例し、後者の濃度に比例する事を利用して、Z分子が膜外側表面から約45オングストローム内側表面から約15オングストロームの距離に存在しており、内側表面には33Kd,24Kd,18Kdの3種のタンパク質が結合してDysprosiumがZ分子の近傍に結合するのを妨げている事を明らかにした。また同じ方法をチトクロームb-559に適用してこのチトクロームのヘムが膜表面からやはり15オングストローム程内側に存在する事を明らかにした。 光化学系2の電子受容体として働くキノン(Qa,Qb)と鉄原子の相互作用をやはり極低温EPRで測定、解析した。これらのキノンが共に鉄原子と相互作用している事、Qbは電子伝達阻害剤オルトフェナントロリンやDCMUの結合により鉄原子との相互作用を失い、これらの阻害剤と鉄原子の相互作用が新たに出現するので、これらの阻害剤がQbの結合部位にはいり反応を阻害している事を光化学系2粒子、及び光化学系2反応中心コア複合体を用いてあきらかにした。またpH,酸化還元電位依存性の測定により、この鉄原子の存在環境の特性をあきらかにした。光化学系1反応中心においては、反応中心クロロフィルP700の近傍のクロロフィルの配列状態、光化学系1に存在するがその機能が明確にされていなかったヴィタミンK1が電子受容体として働き、逆反応を妨げ効率のよい光化学反応を行わせていることを明らかにした。
著者
月田 承一郎 月田 早智子
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

初年度においてケ-ジド化合物を用いた凍結システムが完成したので、2年度は、このシステムの評価も兼ねて、2種類の実験を行った。第一の実験は、ATP非存在下でアクチンフィラメントにフルデコレ-ションしたミオシンサブフラグメント1(S1)がATP濃度の急激な上昇に伴い、どのようにしてアクチンフィラメントから離れていくかを追跡しようというものである。ケ-ジドATP存在下でS1のアクチンフィラメントへの結合様式があまり変わらないのを確認したのち、このようなサンプルに光を照射し、その後の変化をディ-プエッチングレプリカ像のコマ取り写真として解析した。その結果、S1が光照射後15ミリ秒あたりからアクチンフィラメントから離脱しはじめ、その結合様式を大きく変えていく様子を初めて捉えることに成功した。得られた像が持つ意味を正確に理解するためには、まだ、多くの実験を進めなくてはならないと思われるが、少なくともこの実験によって、我々の開発したシステムにより、滑り運動系における蛋白質相互作用をきわめて高時間分解能の電子顕微鏡像として追跡できるという確信が得られた。第二の実験は、無負荷の状態で最高速度で収縮している瞬間の単離筋原線維を急速凍結し、そのクロスブリッジの様子を観察しようとするものである。この収縮は極めて短時間で終わってしまうため、ケ-ジド化合物のシステムを用いる必要がある。現在、光照射後最大収縮速度で短縮中の筋原線維の急速凍結に成功し、そのディ-プエッチングレプリカ像を得つつある。このような方法により得られる像が筋収縮の分子機構を考えるうえで重要な情報を与えてくれるものと期持出来る。以上、我々が開発したケ-ジド化合物を利用した急速凍結システムは、ほぼ完成しており、このシステムがきわめて強力な研究手段となりうることが証明された。
著者
井口 洋夫 直江 俊一 田中 桂一 城田 靖彦 中原 弘雄 三谷 忠興 丸山 有成 高塚 和夫 加藤 重樹 大峰 巌 中村 宏樹 諸熊 至治
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

1. 分子計算化学に関する討論会に参加ならびに調査、共同研究計画打ち合せ(諸熊、中村、大峰、加藤、高塚)今回の日程は、9月19ー21日は第23回英国量子理論会議に出席して若手の理論化学研究者と交流を深めた後、週末をはさんで、日本側5人、英国側12人出席の小さな合同シンポジウムで、質の高い情報交換と交流打ち合せを2日間行うというもので、いずれも会場、宿舎ともオックスフォ-ド大の古いカレッジの1つであるJesus Collegeが使われた。日英シンポジウムでは、シミュレ-ション、電子状態、動力学の各分野とも現役のトップクラスと新進気鋭をそろえ、英国側の並々ならぬ意気込みがうかがわれた。また、交流を一層巾広くするため、英国側の講演者には比較的なじみのすくなかった若手が起用され、フレッシュなプレゼンテ-ションと高いレベルの討論が行われた。この分野におけるこの数年間の研究協力の成果をふるまえ、今回のシンポジウムは終始きわめてなごやかな雰囲気で行われた。特に、日英とも新しい世代のコンタクトが広がったことは今後の協力の発展の上に意味が大きいと思われる。2. 物質化学に関する日英討論会に参加、並びに大学・研究所訪問の調査、共同研究計画打ち合せ(丸山、三谷、中原、城田)「特異な物性をもつ有機分子性固体及び金属配位化合物」という主題に関する日英討論会が、1991年3月17ー20日の間英国バ-スにおいて開催された。日本側5名、英国側10名の招待者及びオブザ-バ-が参加し、5つにわけられたそれぞれのセッションで日本人1名、英国人2名の講演があり、活発な質疑応答が行われた。“高分子"のセッションでは光機能性ポリマ-の光電変換素子特性、高分子液晶などが報告され、“LB膜"では、膜構造の新しい評価法や機能性について議論がなされた。“分子性結晶"では導電性金属錯体及びその超伝導特性と電子構造との関連が考察された。午後のポスタ-セッションでは、多数の報告がなされ盛会であった。最終日の“フタロシアニン及び薄膜"では薄膜の構造と機能に関する最近の研究が紹介され、さらに新しいフタロシアニンの合成例も報告された。“混合原子価錯体"では、一次元遷移金属錯体のソリトン、ポ-ラロン状態及びそれに関連した光誘起構造相転移の可能性など最新の話題が紹介された。全体的な印象として、英国の現状はそれ程新奇な展開は認められないが独得な執拗さをもって新しい問題にとり組んでいる姿勢が印象に残った。3. 不安定分子の高分解分光法による研究(田中)1)速度変調法による分子イオンの赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光本法は高電圧交流電場を用い放電によりイオンを生成すると同時に荷電子の併進速度に変調を加え選択的にイオン種を検出する方法である。赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光法に速度変調を組合せ、H_2O^+,PO^+,CS_2^+イオンの検出を行い充分な経験と成果が得られた。2)金属カルボニル分子の超音速分子噴流中における赤外吸収分光法Ni(CO)_4,Cr(Co)_6,やV(Co)_6などの金属カルボニル化合物は比較的高い蒸気圧を持ち、レ-ザ-光照射による光分解反応との関連により興味が持たれている。これらの金属カル化合物をArガス中に気化させ超音速自由噴流として真空中に噴射し、赤外ダイオ-ドレ-ザ-分光法により主にCO伸縮領域の振動回転遷移を観測した。4. 軟X線分光に関する研究・調査(直江)800〜4000eVのsoft XーRay領域でのビ-ムポ-トの状況、特に調整技術及び測定法について、UVSORの二結晶分光器との比較を含め調査し、さらに半導体試料について測定を行った。上記エネルギ-領域でも特に800〜1500eVの領域は、照射損傷のため分光結晶としてベリルという天然の鉱物を使用する方法が唯一のものとなってきている。第一結晶の水冷や各種薄膜フィルタ-の複合使用によって約1年程度の結晶寿命を実現している。また90%透過の薄膜を10モニタ-として使用し、放射光ビ-ムの変動に対応している点は注目される。試料槽はタ-ボポンプのみの排気により10^<-7>〜10^<-8>torrの真空度とし、測定の迅速化に努めている。しかし、今回の一連の単結晶試料の測定によって試料槽内での表面処理が重要であり、測定の迅速化だけが視点ではないことが判明した。