著者
上村 繁樹 大久保 努 多川 正 大野 翔平 荒木 信夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.303-312, 2017
被引用文献数
1

インドネシア,ジョグジャカルタのスクナン村では,住民による革新的なごみマネジメント・システムが運営されている。住民は,家庭ごみを,プラスチック,紙,金属・ガラス,生ごみに分別し,資源ごみは売却され,生ごみはコンポストにされて肥料として利用されている。また,プラスチック袋等のごみから作られた工芸品 (エコ雑貨) を生産・販売するなど,さまざまな工夫を凝らしたリサイクル活動がなされている。この活動によって,村に収入が入るだけではなく,村の生活環境も大幅に改善された。本稿では,この地域密着型ごみマネジメント・システムの詳細を紹介するとともに,途上国の農村における廃棄物管理のあり方について考察する。
著者
出口 亜由美 立澤 文見 細川 宗孝 土井 元章 大野 翔
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.340-350, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1 14

ダリア(Dahlia variabilis)の黒色花はシアニジン(Cy)系アントシアニンの高蓄積に起因するものであることが先行研究により示唆されていた.そのため,ダリア花弁に蓄積する Cy 系アントシアニンはペラルゴニジン(Pg)系アントシアニンよりも花弁の明度 L* および彩度 C* を下げるはたらきが強く,花弁黒色化への寄与度が高いことが予想されたが,これまでにそれを示した報告はない.本研究では,ダリア花弁に蓄積する 4 種類の主要なアントシアニン,Pg 3,5-ジグルコシド(Pg 3,5diG),Cy 3,5-ジグルコシド(Cy 3,5diG)Pg 3-(6''-マロニルグルコシド)-5-グルコシド(Pg 3MG5G)および Cy 3-(6''-マロニルグルコシド)-5-グルコシド(Cy 3MG5G)を抽出精製し,異なる pH(3.0,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0 あるいは 7.0)あるいは異なる濃度(0.25,0.5,1.0,2.0 あるいは 3.0 mg·mL−1)における溶液の色(CIE L*a*b*C*)を in vitro で評価した.各アントシアニンの色は溶液の pH により変化した.ダリア花弁の pH に近い pH 5.0 およびアントシアニンが比較的安定な構造を保つ pH である pH 3.0 のいずれにおいても,Cy 3,5diG の L* および C* は Pg 3,5diG と同様あるいは高かったことから,Cy 3,5diG は Pg 3,5diG よりも花弁黒色化への寄与度が高いわけではないと考えられた.一方で,Cy 3MG5G の L* および C* は Pg 3MG5G よりも,特に 2.0 mg·mL−1 以上の高濃度において有意に低く,花弁黒色化への寄与度が高いことが示唆された.同様の傾向が Pg 系アントシアニンと Cy 系アントシアニンを様々な割合で混合した色素の測色でもみられた.Pg 3MG5G の L* および C* は他の 3 種のアントシアニンよりも極めて高かったことから,Pg 3MG5G は 4 種のアントシアニンのなかで最も黒色から遠い色を示すことが考えられた.ダリア花弁に蓄積する Pg 系アントシアニンと Cy 系アントシアニンの量比は品種によって様々であったのに対し,いずれの品種においても 3MG5G 型アントシアニンの蓄積量は 3,5diG 型アントシアニンよりも多かった.これらの結果から,ダリア花弁においては 3MG5G 型アントシアニンが主要に蓄積しており,かつ,Cy 3MG5G が Pg 3MG5G よりも花弁 L* および C* を下げるはたらきが強く花弁黒色化への寄与度が高いために,Cy 系アントシアニンの高蓄積が花弁の黒色化に重要であると示唆された.個々のアントシアニンの花弁黒色化への寄与度は各アントシアニンの構造により決まると考えられたため,L* および C* が最も低いアントシアニンを特定し,それを高濃度で花弁に蓄積させることで,様々な花卉品目において黒花品種を作成することが可能になると考えられた.
著者
大野 翔 保里 和香子 細川 宗孝 立澤 文見 土井 元章
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.177-186, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 10

複色花ダリア(Dahlia variabilis)は,着色した基部と白色の先端部となる花弁をもつ品種群であるが,しばしば一つの花序において花弁全体が着色した単色花弁を生じる.この花色の不安定性は切り花や鉢もの生産において問題となり,しばしば商業的な価値を損なう原因となる.本研究では,花色の不安定性機構の解明と制御に向けて,赤白複色花‘結納’における赤色花弁の発生様相を調査した.‘結納’は複色花弁のみの複色花序,赤色花弁のみの赤色花序,そして赤色花弁と複色花弁とが混在した混合花序を着生した.混合花序において赤色花弁は,花序において複色花弁よりも外側あるいはセクター状に生じ,キメラ個体や枝変わりのような発生様相を示した.赤色花弁の発生頻度は,5 月から 12 月までの圃場での栽培と比較して,10 月から次の年の 7 月までの温室栽培で低かった.冬季から次の年の春季に比較的高い赤色花弁の発生頻度を示した個体を見出し,“R 系統”とし,栄養繁殖後の赤色花弁の発生頻度を調査すると,“R 系統”における赤色花弁を高頻度で生じるという性質は栄養繁殖個体でも維持された.花弁色と葉におけるフラボノイド蓄積の関係を調査すると,赤色花弁を生じる植物体では葉にフラボノイドを蓄積したが,複色花弁のみを生じる植物体では葉にフラボノイドを蓄積しない傾向にあった.したがって,‘結納’の花弁色とシュートにおけるフラボノイド合成能には関連があり,‘結納’の単色花の発生は単なる個々の花弁色の変化だけではなく,植物体全体の変化であると考えられた.