著者
柴 建次 周 英明 越地 耕二 塚原 金二 土本 勝也 大海 武晴 中村 知道 遠藤 誠子 増澤 徹 巽 英介 妙中 義之 高野 久輝
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.341-346, 1998

DC-DCエネルギー伝送効率が86%以上の完全埋込型人工心臓駆動用体外結合形経皮エネルギー伝送システム(ECTETS)のin vitro及びin vivo実験を行った。体内コイル、体内整流回路をヤギ皮下に埋込み、体外に設置された(1)電子負荷装置または(2)電気油圧駆動方式完全埋込型人工心臓をECTETSにより動作させた。その結果、(1)において、DC-DCエネルギー伝送効率は、81.4%(出力電力19.2W)であった。In vitroと比べ効率が低下したのは、体外コイル滅菌のための消毒液の付着により分布静電容量が増加したことが原因であることがわかった。また、(2)人工心臓の駆動(70bpm)においては、駆動電力、拍出流量、DC-DCエネルギー伝送効率、埋込部最高温度はそれぞれ20.7W、6.2L/min、82.1%、40.4℃となり生体に影響がない程度であることが確認された。
著者
角田 幸秀 妙中 義之 巽 英介 上所 邦広 中村 真人 増澤 徹 柴 建次 越地 耕二
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-35, 2000

完全体内埋込み型人工心臓 (TAH) の開発において, 安全性・耐久性に優れた経皮エネルギー伝送システム (TETS) の開発はきわめて重要である。今回, 現在開発中の電気油圧方式TAH (EHTAH) システムのTETSに対して長期間の<I>in vivo</I>評価を行った。体重39kgの成山羊の胸壁に体内コイルを埋込み, 1日のうち20Wで23時間および40Wで1時間のスケジュールで連続経皮エネルギー伝送を行い, 体外コイルの表面温度, 体内コイルの内部側表面温度, 伝送効率を測定した。その結果, 4カ月以上にわたって82-85%の伝送効率で連続伝送を行い得, また各部の温度上昇も十分許容可能な範囲にあった。以上より, 現在開発中のTETSは, 安定性及び耐久性の面で, 十分な実用性を有することが確認された。
著者
増澤 徹 妙中 義之 巽 英介 宮崎 幸治 戸田 宏一 大野 孝 安 在穆 中谷 武嗣 馬場 雄造 宇山 親雄 高野 久輝 越地 耕二 福井 康裕 高橋 克己 笹川 広志 塚原 金二 土本 勝也 大海 武晴
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.260-265, 1996-04-15
参考文献数
8
被引用文献数
7

長期体内埋込実験可能な全人工心臓システムの実現のために、1) 油圧駆動用血液ポンプの改良、2) モータ駆動方式改良による効率向上、3) 経皮的エネルギー伝送部と体内埋込用電池との結合、4) 急性実験によるシステム埋め込みの検討および埋込時の発熱観察を行った。最大流量8L/min、効率12%の全人工心臓を実現し、経皮的エネルギー伝送および体内埋込用電池にて1時間以上の駆動が可能であることを確認した。また、急性動物実験にて、システム全体が体内に完全に埋込可能であること、体内に埋め込んだ状態で人工心臓の発熱が4℃以下であることを確認した。本結果より十分に長期体内埋込実験に耐えうる全人工心臓システムを実現できたと考える。今後は長期体内埋込評価実験に移行し、システムの更なる評価および改良を行っていく。
著者
高野 久輝 井街 宏 YOON Shin Le CHEOL Sang K HAN Ik Jo KYUNG Phil S IN Seon Shin SEON Yang Pa BYOUNGーGOO M 妙中 義之 松田 武久 加藤 久雄 MIN Byoung-Goo
出版者
国立循環器病センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

完全体内埋み込み型人工心臓の駆動システム、さらには、生体医用材料の血液適合成に関し、日・韓両国のメンバ-が韓国が会し、討論を行った。以下に、討論された問題点にそって両国の現状をまとめる。1.駆動システム国立循環器病センタ-では、摩擦ポンプ(アクチュエ-タ)を正・逆転させる事で、シリコン油を左右交互に動かし血液ポンプを駆動させるエレクトロハイドロリック方式が採用されている。本システムの利点は、アクチュエ-タを血液ポンプと離れた位置に埋め込み可能で、従来開発をおこなってきた空気駆動型人工心臓がそのまま利用でき、またその胸腔内へのフィッティングを損なうことが無い。しかし、モ-タ-を正・逆転させる事による効率の低下が大きい点が、現在の欠点である。生理的状態に設定された循環回路を用いたテストでは、最大60回の心拍と5L/minの心拍出量が得られている。また、成山羊を用いた急性実験でもほぼ同等の結果が得られている。今後、アクチュエ-タのデザイン及びモ-タの改良を行い、効率を向上させる事が大きな課題である。東京大学では、ユニ-クなアイデアの埋め込み型人工心臓が開発されている。これは、一つの遠心ポンプに2つの3方弁を付け、更に、それぞれの3方弁に血液の輸入出ポ-トを取り付けたもので、3方弁を切り替える事で一つのポンプが両心室の機能を果たす。現モデルを用いたin vitroテストでは、5L/min程度の流量が証明されているが、一つのポンプを用いる事による動静脈血シャントやシステムの抗血柱性等が今後の課題である。ソウル大学では、2つの血液サックの間でアクチュエ-タを左右に動かし血液を駆動する、ペンデュラムタイプの埋め込み型人工心臓が開発されている。5頭の動物実験がすでに行われ、100時間の生存記録を得ている。本システムでは、アクチュエ-タと2つのサックがひとつのハウジングの中に収められており、ポンプのデサインの自由度が低い。このため、人体内での解剖的適合性に問題がある。2.材料表面での抗血柱性の獲得国立循環器病センタ-では、医用材料表面に血液が接した場合の内因性血液凝固系やカリクレイン・キニン系の活性化に関する研究が行われている。ビタ-ガ-ドの種子から、これらの系の活性化を阻害するインヒビタが見つけられており、人工臓器や体外循環に応用できる可能性がある。また、血液面だけでなく材料面からのアプロ-チも行われている。すなわち、光照射で開裂するフェニルアジド基を吸着させたい蛋白等に化学反応させ、本物質を目的とするポリマ-上で光照射により吸着させる技術の開発が行われている。様々なポリマ-、蛋白質に応用可能であり、人工臓器やバイオセンサへの応用が期待できる。ソウル大学では、より高い抗血柱性を獲得する為に、ポリウレタン表面を内皮細胞や蛋白分解酵素であるルンブロカイネ-スで被覆する研究が行われている。また、ペンデュラムタイプ人工心臓の血液室内での、流れと血柱形成の関係に関する研究も行われている。3.その他自然心では、左右心拍出量が数%異なるが、埋め込み型人工心臓においてこの左右差をいかに実現するかは、大きな問題である。国立循環器病センタ-では、心房内シャントを利用する事を考えている。東京大学のタイプの人工心臓では、3方弁の開閉の時間を変える事で比較的容易に実現できる。ソウル大学では、血液サックを2重にして外側のサックをペンデュラムに固着し、ペンデュラムの動きを非対称にする事と、さらにペンデュラム周囲のシリコン油と空気の量を調節する事で、左右差を実現しようとしている。人工心臓には機械弁を用いるのが現在の主流であるが、ソウル大学では、人工心臓と同じ材料のポリウレタンを用いた人工弁の開発と評価が行われている。製作コストが低い事が利点であるが、耐久性や石灰化の問題が今後の課題である。
著者
田村 望 山本 隆彦 青木 広宙 越地 耕二 本間 章彦 巽 英介 妙中 義之
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. C, A publication of Electronics, Information and System Society (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.150-151, 2008-01-01
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

In Totally-Implantable Artificial Heart (TAH) system, Transcutaneous Optical Information Transmission System (TOITS) and Externally Coupled Transcutaneous Energy Transmission System (ECTETS) are effective for driving, controlling and monitoring the TAH. Using these systems, a patient needs to wear an optical coupler and a transcutaneous transformer separately, and then the patient's QOL (Quality of Life) will be deteriorated. Therefore, we research the energy and information transmission by wearing an unified transcutaneous transformer. In this paper, the unified transcutaneous transformer for the energy and information transmission was investigated. As a result, the unified transformer, by which the coupling between the energy and information transmission was reduced, was developed.
著者
築谷 朋典 妙中 義之 辻本 良信 堀口 祐憲
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,従来の血液ポンプには見られない多段延伸ポンプの設計・製作を行い,血液ポンプとしての実用性を実験的に検証することを行う.本年度は,単体のポンプで血球を破壊せずに高圧を発生することが可能な血液ポンプという新たな医学的ニーズを反映した要求仕様を決定しそれに基づいてポンプの設計を行った.仕様として,特に低流量・高圧力である条件を考え,平均流量3.0L/min,発生圧力500mmHgを基準とした.従来よりも高揚程型とするために,以下にあげる特徴をもつ要素の設計を行った.1.高揚程化のためのサクションボリュート入口流路2.高圧用のインペラ翼形状(羽根枚数,出口角)3.ラジアルスラスト軽減のためのダブルボリュート出口流路ついでこれらの基本仕様にもとづいてポンプの試作を行い,基本性能を満たしていることを確認し,内部流れに関して数値流体力学を使用した解析を行い,血球破壊,血液凝固の観点から以下に示す設計変更を行った.・ 羽根車へのフロントケーシングの付与・ ダブルボリュートケーシングと羽根の距離拡大・ 案内羽根にシュラウドを設置試作機については,ポンプ内部の漏れ流量拡大等の影響により,水力学的性能は若干低下しているがその影響は軽微である.数値計算に基づいて形状変更を施した結果,ポンプ効率を大きく損なうことなくポンプ内部での溶血に関わる高いせん断応力の領域を低減し,血栓形成に関わる淀み領域の解消に成功した.