- 著者
-
山本 隆彦
- 出版者
- 東京医科歯科大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
体内に埋込まれた人工心臓に対して非侵襲にエネルギーや情報を伝送する方法として体外結合型経皮エネルギー情報伝送システムはきわめて有用である.本研究ではエネルギー伝送のための磁束と情報伝送のための磁束が直交関係となり,相互干渉のきわめて少ない一体型経皮トランスフォーマの試作と評価を行った.今年度は研究開発中の一体型経皮トランスフォーマの実用化に向けて,着脱の容易が容易になるような機構の導入およびシリコーンによるコーティングを行い,このときのエネルギー及び情報伝送特性を評価した.その結果,試作した経皮トランスフォーマにより,全人工心臓駆動定格消費電力の2倍に相当する40Wのエネルギーを伝送可能であると同時に.4.800bpsの通信速度において1Mbitの情報を誤りなく伝送可能であることを確認した.次に,東京医科歯科大学において研究開発中の補助人工心臓MedTech Heartの実用化を目指し,薬事法により定められているEMCに関する性能評価を行った.その結果,試験項目の一つであり,空間を介して外部に対し放出する電磁波を測定・評価する放射性妨害波試験においてCISPRの限度値を超過した.電磁波の放射源の一つとして各部を電気的に接続するためのケーブルがアンテナとして動作していることが明らかとなったため,ケーブルのシールド,さらに施したシールドを接地し再度放射性妨害波の測定を行った.その結果,外部に対して放出する電磁波の強度をCISPRの限度値以下に低減することができた。また,本対策を行っだ状態において外部電磁界に対する耐性を評価する放射イミュニティ試験を行った.その結果,誤作動は一切確認されなかった.本研究において行ったEMC対策の手法はMEdTech Heartを実用化する上できわめて有用であると同時に、医療現場における電磁環境向上にも大いに貢献するものと考えている.