著者
佐々木 栄作 中谷 武嗣 穴井 博文 広瀬 一 高野 久輝
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1444-1449, 1992
被引用文献数
1

IABPは簡便な補助循環法として広く用いられ, 種々の機種が市販されているが, バルーンや駆動装置の特性はあまり検討されていない. われわれは, 電気インピーダンス(Z)計測を利用したバルーン容量のリアルタイム測定法を開発した. 本法は導管内にバルーンを留置し, バルーンの前後に設置した電極間のZを計測するものである. バルーン容量(V<sub>B</sub>)は, V<sub>B</sub>=[(R<sub>I</sub>-R<sub>D</sub>)/R<sub>I</sub>]V<sub>0</sub>, (<sub>0</sub>:電極間導管容量, . R<sub>D</sub>, R<sub>I</sub>:バルーン収縮時, 膨張時のZ値)で計算される. 本法により, 市販駆動装置4機種とバルーン4機種6種の駆動圧-容量曲線, 応答速度, 外部負荷圧の影響を検討した. バルーンはそれぞれ圧-容量特性が異なり, また駆動装置も駆動圧, 駆動圧波形に差を認めた. したがって異機種組み合わせて使用する場合, 安全で適切なIABP駆動を行うために, その特性を理解することが重要であると考えられた.
著者
増澤 徹 妙中 義之 巽 英介 宮崎 幸治 戸田 宏一 大野 孝 安 在穆 中谷 武嗣 馬場 雄造 宇山 親雄 高野 久輝 越地 耕二 福井 康裕 高橋 克己 笹川 広志 塚原 金二 土本 勝也 大海 武晴
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.260-265, 1996-04-15
参考文献数
8
被引用文献数
7

長期体内埋込実験可能な全人工心臓システムの実現のために、1) 油圧駆動用血液ポンプの改良、2) モータ駆動方式改良による効率向上、3) 経皮的エネルギー伝送部と体内埋込用電池との結合、4) 急性実験によるシステム埋め込みの検討および埋込時の発熱観察を行った。最大流量8L/min、効率12%の全人工心臓を実現し、経皮的エネルギー伝送および体内埋込用電池にて1時間以上の駆動が可能であることを確認した。また、急性動物実験にて、システム全体が体内に完全に埋込可能であること、体内に埋め込んだ状態で人工心臓の発熱が4℃以下であることを確認した。本結果より十分に長期体内埋込実験に耐えうる全人工心臓システムを実現できたと考える。今後は長期体内埋込評価実験に移行し、システムの更なる評価および改良を行っていく。
著者
中谷 武嗣 山岡 哲二 藤里 俊哉
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

体重約10kgのクラウン系ミニブタから下行大動脈(内径5mm、長さ10cm)を清潔下で摘出し、冷間等方圧印加装置にて超高圧を印加(980MPa、10min)することによって細胞を破壊した後、DNase及びRNaseを含む生理食塩水にて洗浄した。続けて、エラスチンの除去は、凍結乾燥して真空熱架橋後、エラスターゼ溶液内に浸漬することで消化した。この際、エラスターゼ処理時間を変化させることで、残存エラスチン量を調節しその効果を検討した。また、リン脂質の除去は、二酸化炭素を用いた超臨界流体処理によって行った。二酸化炭素に若干量のアルコールをエントレーナとして添加することによって、リン脂質を効果的に抽出することができた。得られた脱細胞化血管にブタ血管内皮細胞および平滑筋細胞を播種し、独自に開発した回転培養装置を、平滑筋細胞は組織内への細胞播種システムを基本とした。回転培養装置では表面のみでの細胞増殖が認められたため、内皮細胞へと応用した。組織はイブヘの細胞播種は、3D細胞インジェクターを利用して可能となったが、その後のリアクター培養による効率よい増殖効率までは至らなかった。作成した脱細胞化血管を1cm^2程度に分割し、ラット背部皮下に埋め込むことにより、脱細胞血管の最大の問題である石灰化の検討を行った。1〜3ヶ月経過後に摘出して、X線CT、および、元素分析による石灰化量を行った。その結果、脱エラスチン処理、および、冷間等方圧印加処理後の洗浄液からカルシウムイオンあるいはリン酸イオンを除去することで、石灰化を効率よく抑制できる可能性が見いだされ、ブタ移植実験により検証を進めている。
著者
中谷 武嗣 山岡 哲二
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

心筋梗塞に対するインジェクタブルゲル注入療法が注目されているが、梗塞部位リモデリングの抑制のために最適なゲル化材料の特性は明らかとなっていない。ポリアルギン酸など非分解性のインジェクタブルハイドロゲルを心筋梗塞部位へ注入することで心機能が回復することが報告されているが、長期にわたって残留するこれらの材料が最適とは考えにくい。本プロジェクトでは、さらに、炎症性が小さくてかつ分解することにより長期炎症を回避できるゲルの開発と評価を進めた。低炎症性を期待して生体内に存在するタンパク質の高次構造を模倣した自己組織化ペプチドを検討し、さらには、αヒドロキシ酸を主成分とするインジェクタブルゲルも開発し、それらの、感温性およびゲル化挙動について詳細に検討するとともに、皮下埋入試験による炎症誘起性の評価とその治癒能力について検討した。心筋梗塞モデルラットは、左冠動脈を結紮して作製した。結紮してから4週間後に心臓機能の指標である左室短縮率(% FS)を超音波エコー装置にて計測し、% FSが25%以下のものを心筋梗塞であると判断した。その後、30Gの注射針を用いて生分解性ハイドロゲルを心筋梗塞部位へ100μl注入した(n=4)。コントロール群としてアルギン酸ゲル(n=5)、または生理食塩水(n=5)を用いた。注入から4週間後に、% FSの測定ならびに摘出した心臓の組織学的評価により治療効果を検討した。生分解性ハイドロゲル注入群では、% FSは1か月間で、生理食塩水の場合と比較して有意に改善しており、、開発した生分解性ハイドロゲルは梗塞部位への注入により心機能を有意に改善できる。さらに、炎症系細胞密度は、アルギン酸注入群より有意に減少しており、新たなハイドロゲル群は高い% FSの回復と低い炎症性が達成される有用なシステムであることが示唆された。