著者
伊藤 次郎 岡安 崇史 野村 浩一 安武 大輔 岩尾 忠重 尾崎 行生 井上 英二 平井 康丸 光岡 宗司
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.13-23, 2021
被引用文献数
2

<p>植物の育種や栽培管理技術の高度化には,植物の成長や環境応答性を定量的に計測し,評価するための技術が求められる.最近では,ICTの目覚ましい発展を背景に,植物の生育特性の計測を高速に行えるフェノタイピング技術の開発研究が盛んに行われている.本研究では,廉価なIoTデバイスに加えて,オープンソースとして提供されている画像処理・解析ライブラリなどを用いることにより,植物の生育情報を自動計測可能な植物フェノタイピングロボットを開発した.本ロボットは,水耕栽培ベッド両側に配置したレール上を走行する構造で,ARマーカを用いてロボットの走行制御と位置認識を行うことにより,植物の生育画像をスケジュールに合わせて自動計測する機能を有している.ホウレンソウを対象に,幼苗定植直後から収穫までの生育画像を毎日4時間毎にロボットに搭載されたRGB-Dカメラで撮影する試験を行い,植物フェノタイピングロボットとしての性能を評価した.その結果,開発したロボットの位置制御性能は3 mm程度であることがわかった.本ロボットを用いて,栽培ベッド全体の画像および深度情報の自動計測を行い,成長予測や生育不良検知などへの応用に対する可能性を示した.</p>
著者
鍋島 怜和 安武 大輔 北野 雅治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.207-213, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
32

主枝2本仕立ての無摘心栽培を行い,ピーマンの多収要因となる形質を明らかにするために,8品種を用い,収量および生育特性,乾物生産について品種間差異を調査した.果実新鮮重(果実FW)から,本研究で用いた8品種の中では,‘土佐Pレッド’および‘トサヒメ’が高収量品種,‘さらら’および‘グリーン800号’を低収量品種であると判断した.高収量品種は低収量品種に比べて,果実数は同等以上であり,完熟果1果当たりの果実重は,2つの低収量品種の中間程度であった.果実への乾物分配率は,本試験に用いた品種間では大きな差はなく,また果実重(果実FWおよび果実DW)との間に相関は認められなかった.一方,地上部総乾物生産量(TDM)は,果実重(果実FWおよび果実DW)との間に高い正の相関を示し,さらに,高収量品種のTDMは低収量品種に比べて大きい傾向がみられた.これらのことから,多収には果実への乾物分配率より,TDMの増加が大きく貢献していると考えられた.また,生育特性の中では,栽培初期,中期および終了時の主茎径および主枝節数は果実FWとの相関は有意でなかったが,栽培終了時のTDMに対して高い正の相関を示した.
著者
楢崎 幸範 田上 四郎 山本 重一 濱村 研吾 力 寿雄 天野 光 大久保 彰人 安武 大輔
出版者
福岡県保健環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

北部九州の広域で観測される大気汚染について2010年~2012年の春期を中心に同位体化学を含む環境動態解析及び健康影響評価を実施した。西日本では大気環境が悪化し,春先から梅雨にかけて都市部以外でも空がかすむ現象が頻発した。汚染大気中には化学物質の他,黄砂や花粉が観察された。これらの複合大気汚染が原因で鼻炎の悪化,アレルギー疾患,呼吸器疾患等の増加が懸念された。なかでも,2010年5月20~21日には越境大気汚染物質によると思われる濃い霧に包まれ,視程が悪く鉄道や航空機等の交通機関に支障をきたした。この間,黒色炭素,硫酸塩,鉛,オゾン及びベンゼン等の人為起源成分が高濃度で検出された。この濃霧は1945年のロサンゼルスと同様なメカニズムで発生していたことを突き止めた。また,同時に大気汚染物質に曝された黒い黄砂の存在を明らかにした。
著者
小林 哲夫 森 牧人 長 裕幸 荒木 卓哉 安武 大輔 北野 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

半乾燥地の黄河上流域(甘粛,中国)に実験圃場を設置し,また日本における室内実験を併用して,二種類の塩類化土壌の改良技術,すなわち灌漑畑地の塩類化プロットから塩類を除去する有効な技術として著者によって提案されたPSW-Well法と,土壌からの塩類吸収能力が高い作物(クリーニングクロップ)の栽培に基づく生物学的改良法,についての実験を行った.その結果,両方法が有効に機能するための必要条件が示された:(1)PSW-Well法は,流域内の帯水層系が均質で,宙水面が発達しないことが有効に機能するための必要条件である.(2)クリーニングクロップは,塩類をよく吸収するだけでなく,水要求度が低いことが必要である.