著者
竹藤 幹人 天野 睦紀 室原 豊明 貝淵 弘三
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

低分子量GTP結合タンパク質RhoA(以下、RhoA)は細胞骨格形成、細胞遊走など様々な細胞内機能を制御している。RhoAが制御する細胞内シグナルが疾患については長年、研究されてきたが、RhoAおよびその下流で機能する分子の心臓での働きは不明な点が多い。本研究ではRhoAの標的分子であるRho関連キナーゼに注目し、Rho関連キナーゼの心臓内での新規標的分子を明らかにした。マウス心不全モデルでは、Rho関連キナーゼの活性化されることを確認した。Rho関連キナーゼ欠損マウスでは心不全が改善したことから、心不全発症にRho関連キナーゼが関与していることが示唆された。
著者
柴田 玲 大内 乗有 室原 豊明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.3, pp.139-142, 2016 (Released:2016-03-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

肥満症を中心とした代謝異常,心血管病の病態には,種々のアディポカインの産生異常が関わっている.近年,アディポネクチンなど生活習慣病や心血管病に保護的作用を有している可能性が高いと思われるアディポカインが見出されている.オメンチンもその一つである.肥満症や冠動脈疾患においてオメンチンの血中濃度は低値を示す.オメンチンは,血管において血管新生促進作用やリモデリング抑制作用を有し,心臓においては心筋梗塞縮小効果や心臓リモデリング予防効果を発揮する.今後,オメンチンのさらなる機能解析や発現作用調節機構の解明が,心血管病の病態解明への新たなアプローチにつながると考えられる.オメンチンは心血管病への診断に有用であるだけでなく,今後,治療への応用にも期待される.
著者
奥村 貴裕 室原 豊明
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-40, 2018-01-25 (Released:2018-03-05)
参考文献数
18

高齢社会の進行とともに,心不全患者は激増し,パンデミックと形容されるに至った.高齢者心不全の特徴のひとつは,拡張障害に病態の首座をもつ左室駆出率が保たれた心不全(Heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)である.残念ながら,これまでの大規模臨床試験の結果からは,HFpEFに対する有用な薬物治療は確立していない.HFpEFの病態はheterogeneousであることが推察されており,個々の症例の病態を明確にしたうえで,テーラーメイドな治療方針を立てることが望まれる.
著者
高橋 亮太郎 奥村 健二 大山 智鈴 小川 晃子 大野 正弘 浅野 美樹 田口 宣子 鈴木 正之 池田 信男 室原 豊明
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.277-284, 2012 (Released:2013-09-01)
参考文献数
27

近年、血管内皮機能を非侵襲的に指尖で測定できるreactive hyperemia peripheral arterial tonometry (RH-PAT) が開発された。本研究で我々は、人間ドック受診者を対象にRH-PATを用いた血管内皮機能測定について検討した。当院の2日ドック受診者で脳心血管病の既往がなく投薬を受けていない男性120名(平均年齢53±9歳)を対象とし、2日ドックの検査項目に加え、アポリポ蛋白B100、空腹時インスリン、高感度CRPなどを測定した。また、上腕駆血開放後の動脈拡張反応を指尖容積脈波として検出するreactive hyperemia index (RHI) をEndo-PAT2000を用いて自動計測し、血管内皮機能とした。全例で所要時間30分でRHIの測定が可能であった。RHIの平均値は1.76±0.41あり、RHIは年齢、心拍数、HbA1c、アポリポ蛋白B100、総コレステロール、LDLコレステロール、non HDL コレステロールと有意な負の相関を示した。喫煙歴(packyears)と空腹時血糖値はRHIと有意には至らないものの負の相関の傾向がみられた。RHIを従属変数としたステップワイズ重回帰分析では年齢、LDLコレステロール、心拍数がRHIの独立した規定因子であることが示された。本研究の結果より、人間ドック受診者においてRH-PATを用いて測定した血管内皮機能は心血管病の危険因子との相関がみられ、初期動脈硬化のサロゲートマーカーとしての可能性が確認された。
著者
伊藤 歩 七里 守 江口 駿介 安藤 萌名美 竹中 真規 前田 眞勇輔 任 隆光 鈴木 博彦 神谷 宏樹 吉田 幸彦 平山 治雄 室原 豊明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.724-730, 2015

慢性心不全では睡眠呼吸障害を高率に合併することが知られている. 特にチェーン-ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸の割合が多く, 予後不良因子とされている. 一方, 睡眠呼吸障害に対し治療介入することで, 左室駆出率や生命予後の改善が期待できるとの報告がある. 具体的な治療法として, 閉塞性睡眠時無呼吸においては持続陽圧呼吸療法 (Continuous Positive Airway Pressure ; CPAP) の有用性が確立されている. しかし, 中枢性睡眠時無呼吸にはnon-responderが存在し, CPAPの有用性については議論がある. 中枢性睡眠時無呼吸の治療において, 新しいデバイスとしてadaptive servo ventilation (ASV) に注目が集まっている. 症例は体重増加, 労作時呼吸困難を主訴に来院した74歳, 男性. 外来にて利尿薬等による内服管理をしていたが, 経胸壁心臓超音波検査にて推定収縮期右室圧の上昇を認めた. さらにSwan-Gantzカテーテル検査では, 左心不全を認めるとともに, 右房圧・右室圧の上昇を認めた. 原因精査のため終夜ポリソムノグラフィを施行したところ, チェーン-ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸を認めた. CPAPにて治療を開始したが, 十分な治療効果が得られず, ASVに変更し継続したところ, 無呼吸イベントの抑制とともに左室駆出率は上昇し, 右房圧・右室圧・肺動脈楔入圧はいずれも低下した. ASVはチェーン-ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸を合併した心不全において有効な非薬物治療法と考えられた.
著者
小室 一成 瀧原 圭子 松原 弘明 斉藤 能彦 室原 豊明 福田 恵一
出版者
千葉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

本研究の目標である心不全の病態解明と新たな治療法の確立について多角的に研究を推進できたと考えられる。特にマウスの心機能解析法(心臓カテーテル検査、心臓エコー検査)を確立させたことは、我が国全体における心機能解析技術の飛躍的な向上に寄与できだと思われる。また、本研究代表者や研究分担者らがこれまで世界的にもリードしてきた研究対象であるナトリウム利尿ペプチド、アンジオテンシンII、サイトカイン、三量体G蛋白質、などに着目し、これらの遺伝子改変マウスを作製し実験に用いることができた。心機能に関与する遺伝子をターゲットとした遺伝子改変マウスの解析をおこなうことで心不全の病態を分子レベルで解明した。さらにこれらのマウスに胸部大動脈の縮窄または冠動脈の結紮などの手術を施し、圧負荷心肥大モデル、心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルなどを作製した際の心不全の発症・進展に対する影響も検討した。得られた知見は心不全の発症機序のみならず、心筋細胞が正常機能を維持するための機序についても新しい概念を与えた。心不全発症の分子機序を明らかにすることで心不全の新たな治療基盤を打ち立てることができた。また、心筋細胞の分化・発生の機序に関する研究をおこない、心筋細胞の分化に必須の転写因子や成長因子などを同定した。複数の転写因子を同時に発現させることにより心筋細胞の分化が誘導されることを明らかにした。細胞治療に関する研究では幹細胞生物学と再生医学、心臓病学の領域において先駆的な業績をあげ、国内外における心筋細胞の再生研究に大きな進歩をもたらした。
著者
竹下 享典 沼口 靖 新谷 理 柴田 怜 室原 豊明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

血管新生は既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象であり、その制御は、虚血をきたした組織の血流の改善、あるいはがん細胞増殖の抑制のために重要な治療ポイントである。本研究では、受精卵から成体になる過程で重要な役割を果たすことで知られるNotchシグナルが、成体の虚血組織の血管新生においても重要であることを、細胞内シグナル解析および遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。