- 著者
-
室田 浩之
奥田 英右
片山 一朗
- 出版者
- 日本小児アレルギー学会
- 雑誌
- 日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.157-164, 2017 (Released:2017-06-30)
- 参考文献数
- 28
アトピー性皮膚炎の臨床症状は乳幼児期と学童期以降では臨床症状および経過そして治療反応性が異なる. 学童期以降では痒みが先行し, 掻破部位に慢性皮膚炎/苔癬化病変を形成する. よって痒みの制御が治療において重要である. アトピー性皮膚炎では皮膚の感覚過敏が生じており, 疼痛や温感など通常は痒みに感じない感覚を痒みに感じることがある. この痒み過敏の原因として炎症に伴って生じる皮膚知覚神経の異常な伸長, 神経栄養因子アーテミンの作用, そして中枢神経の増感などが考えられる. 温熱など環境因子によって誘導される痒みの管理にはまず皮膚炎の治療が優先されるべきである. 汗による痒みの対策として, かいた汗を適切に処理することと, 適切な量の汗をかけるように皮膚炎を制御することが大切である. 刺激のみならず, 視覚的刺激や聴覚的刺激も新たな痒みを誘発する. この “伝染する痒み” はアトピー性皮膚炎患者で顕著にみられる. 本稿では痒みの悪化要因と, それらに対する対処方法に関する知見を紹介するとともに過去の論文をレビューする.