著者
大塚 篤司 椛島 健治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.973-977, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
22

我が国には約40万人のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)の患者がいるとされる.ADは慢性的なかゆみを伴う皮膚疾患であり,その背景として湿疹ができやすい体質があると考えられている.その体質として皮膚の乾燥が候補因子であったが,十分な解析はなされていなかった.ところが,2006年にADの有病率とフィラグリン遺伝子の相関関係が指摘されたことで,皮膚のバリア機能と免疫とのクロストークが注目を集めることとなった.
著者
五十嵐 敦之 佐伯 秀久 安部 正敏 椛島 健治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.6, pp.1491-1504, 2023-05-22 (Released:2023-05-20)
参考文献数
14

本調査では,アトピー性皮膚炎に対する抗炎症外用薬(ステロイド外用薬,タクロリムス軟膏,デルゴシチニブ軟膏)3剤の使用実態や医師の治療満足度を把握する目的で,皮膚科専門医を対象としたアンケート調査を実施した.ステロイド外用薬は,効果が良好との回答が多く,急性期治療における治療満足度が高かった.デルゴシチニブ軟膏は,副作用等の安全性に対する懸念が少ないとの回答が多かったが,他の薬剤との併用や変更などの使用実態についての情報は十分でなく,リアルワールドでのエビデンスを構築していく必要性が確認された.
著者
小嶌 綾子 辰巳 和奈 夏秋 優 大日 輝記 椛島 健治
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.313-316, 2018 (Released:2019-08-13)
参考文献数
16

10歳代後半,男性。約 1 ヶ月間,中南米ベリーズ国のプレイセンシアへ渡航し,森林や海で蚊などによく刺された。帰国 4 日前より左側胸部に痒みを伴う皮疹を認め,その後も腫脹が持続した。 2 週間後の数日間,皮疹部に激痛があり,皮疹中央部に瘻孔が出現し,浸出液を認めた。皮疹の出現から約 5 週間後,浸出液の増加があり周囲を圧迫したところ瘻孔から虫が排出され,翌日当科を受診した。持参した虫体をヒトヒフバエと同定し,自験例を皮膚蠅症と診断した。幼虫は形態や大きさから 2 齢幼虫の可能性が高いものと推定した。ヒトヒフバエは中南米に限局して棲息する昆虫で,哺乳動物の皮膚に寄生して成長し一定期間を経て自然に排出され創は治癒するが,寄生している時期は痛みを伴うため一般的な治療法として,圧出,外科的な摘出,または現地でよく行われることとして呼吸のための孔を塞ぎ虫を誘い出す方法などがある。今後,海外旅行の機会の増加や渡航先の多様化はさらに加速すると考えられる。難治性の癤様結節をみた際には本症の可能性も念頭において,海外渡航歴についての問診を行うことも重要と考える。 (皮膚の科学,17 : 313-316, 2018)
著者
椛島 健治 成宮 周
出版者
一般社団法人 日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.535-541, 2002-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
12

One of the major risk factors triggering or worsening human inflammatory bowel disease (IBD) is the administration of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) . Since NSAIDs share inhibition of the enzyme-cyclooxygenase (COX) that catalyzes production of prostanoids, some prostanoids are formed and negatively modulate the extension of IBD. We used mice deficient in prostaglandin (PG) E2 receptor EP1, EP2, EP3, and EP4, and examined the roles of prostaglandin E2 in DSS-induced colitis model. Among the PGE2 receptor-deficient mice, only EP4-deficient mice developed severe colitis with 3% DSS treatment, which induced only marginal colitis in wild-type mice. Conversely, administration of an EP 4-selective agonist (AE 1-734) to wild type mice ameliorated severe colitis normally induced with 7% DSS, while that of an EP 4 agonist, AE 3-208, suppressed recovery from colitis and induced significant proliferation of CD 4+ T cells. In vitro AE 3-208 enhanced and AE 1-734 suppressed the proliferation and Th 1 cytokine production of lamina propria mononuclear cells from the colon. DNA microarray analysis revealed elevated expression of genes associated with immune response and reduced expression of genes with mucosal repair and remodeling in the colon of EP 4-deficient mice. We conclude that EP 4 maintains intestinal homeostasis by keeping mucosal integrity and downregulating immune response.
著者
宮地 良樹 松村 由美 椛島 健治
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

紫外線は紅斑(日焼け)・皮膚老化・免疫抑制・発癌など多岐に渡る影響を生体に及ぼす。皮膚科領域では、紫外線による免疫抑制作用は重要で、様々な皮膚疾患に紫外線治療が応用されているが、その反面、腫瘍免疫機能の低下により、皮膚癌を誘発することが問題となっている。一方、プロスタグランジン(PG)E2は、各々異なるシグナル伝達系を持っ4種類のサブタイプ受容体EP1、EP2、EP3、EP4を有し、紫外線照射によりのPGE2産生が強く認められることが知られていた。ところが各受容体の発現レベルや分布の複雑さ故、紫外線照射におけるPGE2の機能解析は困難であった。そこで我々は研究目的をPGE2の紫外線照射における生体への役割の解明と治療への応用に定め、課題の実現を目指している。まず、紫外線照射による紅斑形成において、マウスに紫外線照射を行うと、耳介の腫脹が起こるが、この腫脹反応がNSAIDにより減弱し、プロスタノイドの関与を示唆させた。そこでPGE2受容体欠損マウスに紫外線を照射するとEP2、EP4欠損マウスにおいて耳介腫脹反応が減弱していることが確認された。また、皮膚局所の炎症細胞の浸潤、血管径の減少、ドップラー血流計による局所血流量の減少も認められた。したがって、紫外線紅斑の形成には、PGE2-EP2,EP4シグナルが重要であることが示唆された。さらに、紫外線の局所免疫挿制作用を検証するために、紫外線を腹部に3kJ/m2照射した3日後にハプテンであるDNFBを腹部に塗布して感作する。その5日後にDNFBを耳介に塗布し24時間における耳介腫脹変化を確認すると、紫外線を照射しなかったグループに比べ耳介腫脹が減弱し、局所の免疫抑制効果を検証できる。この局所免疫抑制作用がプロスタノイドの産生を阻害するNSAIDの投与により消失することをC57BL/6マウスで確認したのでプロスタノイドがこのメカニズムにおける重要な分子であることが強く推測される。今後も引き続きPGE2各受容体欠損マウスにこのモデルを行い各受容体の役割の解明を行い、紫外線誘発発癌との関連の関係の解明を目指す。