著者
宮口 右二 境 久美子 米倉 政実 堤 将和
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.720-725, 1989-09-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
4 6

グロビンのサクシニル化を行って,サクシニル化グロビンを調製し,その性状について検討した. (1) グロビンはpH 3.0以下で可溶であり,中性付近(pH 7.0~8.0)で最も低い溶解性を示した.これに対してサクシニル化グロビンはpH 4.0付近で最も低い溶解性を示すが,中性からアルカリ性側では高い溶解性を示した. (2) グロビンは硫酸アンモニウム0.1飽和(pH 2.0)で,サクシニル化グロビンは0.4飽和(pH 7.0)で完全に塩析された. (3) サクシニル化グロビンの起泡性はグロビンよりも優れていたが,気泡安定性の面ではグロビンよりも劣っていた. (4) グロビンはpH 2.0, 4.5, 7.0, 9.0, 11.0という条件下では加熱ゲルを形成しなかったが,サクシニル化グロビンはpH 2.0で明瞭なゼリー状ゲルを形成した. (5) グロビンはpH4.0でオボアルブミンの加熱凝集を強く防止した.一方サタシニル化グロビンはグロビンよりも中性に近いpH (pH 6.0)で凝集防止効果を発現した.
著者
胡 建恩 久留主 泰朗 宮口 右二 堤 将和
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.297-302, 2000-10-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

大腸菌の菌体膜に対するグリシンとエタノールの併用作用について検討した. 大腸菌はグリシンやエタノール及びこれらの試薬の併用処理によって紫外吸収物質の漏洩が抑えられた. また, 薬剤処理ではナトリウムの漏洩は認められなかったものの, カリウムの漏洩は認められた. 薬剤処理によってタンパク質の漏洩が認められたが, 漏洩したタンパク質は表在性タンパク質であろうと推定した. 更に, 表在性タンパク質が除去された大腸菌の呼吸能回復はクロラムフェニコールによって抑制された. コハク酸脱水素酵素に対する薬剤の影響を測定したところ, 菌体では活性が増大し, 膜画分では阻害された. 以上の結果からの薬剤は主に大腸菌の外膜層に作用し, 膜の透過性の増大や物質の漏洩, 代謝機能など膜の重要な機能を阻害したものと思われる.
著者
須藤 正巳 御幡 寿 宮口 右二
出版者
茨城県畜産センター
雑誌
茨城県畜産センター研究報告 (ISSN:13466488)
巻号頁・発行日
no.31, pp.43-50, 2001-08

採卵鶏にアルファルファミールを10%(アルファルファ区)とβ-カロチン製剤を0.5%添加(製剤区)した飼料を給与し、卵質及び産卵性に及ぼす影響と機能性物質(β-カロチン)の卵中ヘの移行について検討した。1.産卵性及び飼料消費量、飼料要求率、増体重 産卵率は、製剤区、対照区、アルファルファ区の順に優れていた。平均卵重は、アルファルファ区が他の区と比べて有意に重かった。日産卵量は、製剤区がアルファルファ区に比べて有意に多かった。 給与飼料単価は、対照区91.75円/鶏卵1kgに対し、アルファルファ区98.10円/鶏卵1kgでC-1.07倍、製剤区244.86円/鶏卵1kgであった。 破卵率、飼料消費量、飼料要求率、増体重については、いづれも有意の差が認められなかった。2.卵質 卵黄色で差がみられ、カラーファンスコアは製剤区で薄くなる傾向が認められ、特に試験開始14日目のもので他の区に比べて有意に低くなった。また、L値(明度)、a値(赤色)、b値(黄色)で評価すると、製剤区で明るく、赤色の度合いが薄くなる傾向がみられた。一方アルファルファ区では、赤色度が濃くなる傾向を示した。 ハウユニット値、及び卵殻強度は、3区間で有意の差が認められなかった。3.機能性物質(β-カロチン) 卵黄中のβ-カロチン量は、試験開始14、28日目から製剤区が他の区に比べて有意に増加した。アルファルファ区では、対照区と比べて14、28日目でそれぞれ2.05~4.48倍となったが有意ではなかった。また、血清中のβ-カロチン量は、製剤区が試験開始28日目で他の区と比べて有意に増加した。 給与飼料中のβ-カロチンの出納をみると、摂取量に応じて卵黄中の含量、蓄積量が多くなったが摂取量が増加してもその移行率は低下する傾向を示した。以上の結果から、β-カロチンを目的とした機能性卵(高付加価値卵)の生産が可能であった。
著者
湊 一 宮口 右二 豊田 淳 中村 豊
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

稲わらのNaOH処理は、乾物重量あたり最終含水量35%および最終NaOH濃度0〜4%となるように、稲わらにNaOH水溶液を散布し、0〜21日間貯蔵した。4%NaOHで21日間の処理を行った時に、稲わらのin situ消化率での改善は最大であった。稲わらのリグニンおよびヘミセルロース含量とin situ消化率との間には負の相関が認められた。NaOH処理および無処理の稲わらの細胞壁に含まれるリグニンの特性を明らかにするために、細胞壁のフェノール性化合物の分析を行った。NaOH処理により、稲わらから遊離されるフェノール性化合物の量は、バニリン、p-クマル酸、フェルラ酸、p-ヒドロキシベンズアルデヒドの順に多かった。また、NaOH処理によって、稲わら中のエステル結合型のp-クマル酸の約50%が消失していた。稲わら中のセルロースのin situでの消化率は4%NaOHでの処理により著しく改善された。稲わらの細胞壁ヘミセルロース構成成分中でキシロースのin situ消化率は他の単糖類に比べて劣っていた。しかし、稲わら中のキシロースのin situでの消化率はNaOH処理によって改善された。In situ消化の間に、無処理の稲わらからは等量のグアイアシル-およびシリンギル-リグニンが放出された。他方、NaOH処理稲わらからはグアイアシル-リグニンに比べてシリンギル-リグニンがより多く放出された。走査電子顕微鏡による観察では、稲わらは、NaOH処理によって繊維組織が膨潤し、無数の繊維状物質の突出が確認された。この研究で得られた成績は、セルロースミクロフィブリルを包囲しているヘミセルロース多糖体とリグニンから構築されている網状構造、さらにはこれらの多糖体やリグニンに結合しているフェノール酸類がin situでの稲わら中のセルロースの消化を阻害していることを示唆している。