著者
辻 延浩 佐藤 尚武 宮崎 総一郎 大川 匡子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

これまでに開発してきた睡眠学習プログラム(指導案)をデジタルコンテンツ化し、そのWeb学習教材の有効性と活用性を検討した。Web教材については、画像等に関わる5項目と、内容等に関わる5項目で評価した。いずれにおいても高い評価が得られ、睡眠教育に対して有効な活用が期待できると考えられた。また、睡眠教育プログラムを滋賀県下の学校園に広めることを目的に、教員が睡眠の科学的知識を習得し、幼児・児童・生徒の基本的な生活習慣の確立に向けて睡眠の教育を展開させることのできる教員の研修プログラムを考案し実践した。その結果、幼稚園の教師ならびに保護者から高い評価を得ることができた。一連の睡眠教育研修プログラムは教師の研修成果を高めるとともに、子どもたちの生活習慣を改善するのに有効であることが確かめられた。
著者
宮崎 総一郎
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.427-434, 2006-06-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The most frequent sleep problems are sleep-related breathing disorders, insomnia, excessive daytime sleepiness, and circadian rhythm disorder. In 2004, we treated 468 sleep disorder patients, at the Sleep Disorder Center, Shiga University of Medical Science Hospital. Forty-nine percent of the subjects were diagnosed as having sleep related breathing disorders, 22% as insomnia, 10% as rhythm disorders and 5% as having excessive daytime sleepiness. Insomnia is a common sleep-wake-related complaint, and sleeping pills are among the most commonly prescribed drugs in clinical practice. However, insomnia is a symptom that can be caused by various disorder's, many of which require specific therapies. One specific cause of insomnia in older adults is restless legs syndrome. This condition, characterized by an urge to move the legs, which is usually accompanied by sensations of discomfort and aggravations of symptoms by rest. Daytime sleepiness is a common complaint. Snoring, the use of hypnotic agents, sleep difficulties, irregular sleep-wake schedule and sleep deprivation are related to daytime sleepiness. Circadian rhythm sleep disorders have intrinsic and extrinsic subtypes: delayed sleep phase syndrome, advanced sleep phase syndrome and non-24-h sleep-wake syndrome. The underlying problem of circadian rhythm sleep disorders is that the patient cannot sleep when sleep is desired. Waking episodes may occur at inappropriate times; therefore, the patient may complain of insomnia or excessive sleepiness.
著者
駒田 一朗 宮崎 総一郎 西山 彰子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.41-49, 2016-03-31 (Released:2016-06-23)
参考文献数
49

睡眠時無呼吸の頻度は高齢になるほど増加する. 50歳未満では睡眠時無呼吸の死亡率が高くなるという報告がある一方, 高齢者では死亡率は高くないとする報告がある. 高齢者の睡眠時無呼吸の重症度や日中の眠気が生命予後に影響を与えるとの報告もある. 高齢者では手術加療や口腔内装置選択の適応例が少なくなるため CPAP に依存することが多いと予想される. 睡眠時無呼吸は認知障害と関連があるとの報告が近年増えており, CPAP 治療により認知機能が改善し, 脳画像での改善がみられることが報告されている. 高齢者の睡眠時無呼吸の対応にあたっては生命予後以外に認知機能改善や認知症予防の観点から対応する必要がある.
著者
宮崎 総一郎 北村 拓朗 野田 明子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.12, pp.1475-1480, 2019-12-20 (Released:2020-01-09)
参考文献数
21

24時間社会の今, 人々の生活スタイルは夜型化し睡眠時間は確実に減少している. 短い睡眠時間でも日常生活に問題なければよいが, 実際には睡眠不足によりもたらされる影響は, 肥満, 高血圧, 糖尿病, 心血管病, 精神疾患等多岐にわたり, 看過できるものではない. 睡眠は「疲れたから眠る」といった, 消極的・受動的な生理機能ではなく, もっと積極的かつ能動的であり,「明日によりよく活動するため」に脳神経回路の再構築 (記憶向上), メンテナンス (脳内老廃物の除去) を果たしている. 睡眠不足や質の悪い睡眠は認知症の促進因子となり, 逆に, 質の良い睡眠は抑制因子となることが近年明らかにされてきている. また, 耳鼻科医が関与することの多い閉塞性睡眠時無呼吸は間歇的な低酸素や高二酸化炭素血症, および頻回な覚醒反応により, 肥満・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常症などの生活習慣病と深く関連していることが報告されている. さらに最近の研究で, 認知症発症に対して睡眠時無呼吸が影響を及ぼしていることがいくつかの大規模研究によって示されている. 今後, 睡眠の観点からも認知症予防に取り組むことが必要であり, 特に30代から50代までの若い世代の睡眠不足や睡眠障害,睡眠時無呼吸に対する早期診断, また若年者からの睡眠教育が第1次予防として重要であると考える.
著者
横田 誠 中山 明峰 蒲谷 嘉代子 竹村 景史 渡邊 暢浩 服部 寛一 宮崎 総一郎 村上 信五
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.91-95, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

The relationship between dizzy patients and stress is well documented, but that between dizzy patients and sleep disturbance is unclear. This study focused on sleep disturbance in dizzy patients through investigations into their hypnotic medications. Six hundred and twenty two patients were studied, who complained of dizziness and visited Nagoya City University from January 1 to December 31, 2007. The major hypnotic was the benzodiazepine group (65%), and was prescribed to 226 patients (36%). Although prescription of hypnotics tended to increase with the age of the subjects, it was even prescribed often in young adults. The approximate ratio of patients taking hypnotics to those who were suffering from insomnia and without dizziness was 2:1. Poor quality of sleep may cause additional stress, leading to a vicious cycle in patients suffering from dizziness.
著者
宮崎 総一郎 北村 拓朗
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.830-835, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
18

睡眠は, 大脳の進化とともに発達してきた. 睡眠は疲れたから眠るといった消極的な生理機能でなく, 「脳を創り, 育て, より良く活動させる」積極的な機能がある. さらに, 記憶や運動技能を向上させる能動的な生理活動がなされる時間でもある.睡眠呼吸障害では, 睡眠中の呼吸努力により覚醒反応が生じ, 睡眠の分断化が起こり, 睡眠が障害される. 小児睡眠呼吸障害では, 睡眠が障害されるために成長ホルモン分泌が障害され, 成長障害が生じる. さらに, 知能低下, 学業成績不良, 夜尿, 注意欠陥, 多動, 攻撃性, などの多くの問題を生じる. 知能低下の説明として, 最近では成長ホルモンに関連してIGF-1の関与が注目されている.小児睡眠呼吸障害の原因として多数を占めるのは, アデノイド・口蓋扁桃肥大であるが, 最近ステロイド点鼻を軽症から中等症の睡眠時無呼吸例で鼻閉の改善とアデノイド縮小効果を期待して, 適用する治療法の有効性が多く報告されている.
著者
宮崎 総一郎 板坂 芳明 石川 和夫 多田 裕之 戸川 清
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.183-189, 1998-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2

睡眠時無呼吸の病因ならびに長期治療成績を左右する因子として, 睡眠体位と肥満は重要である.肥満と体位の及ぼす影響を, 気道内圧測定を含む睡眠検査を実施した68例(平均年齢: 47.2歳, 平均肥満度: 120.5%)について検討した.68例をやせ群(肥満度90%未満)+普通体重群(肥満度90%以上, 110%未満), 過体重群(肥満度110%以上, 120%未満), 肥満群(肥満度120%以上)の3群にわけた.肥満群の無呼吸+低換気数(AHI)は47.1/hr.で, やせ・普通体重群(32.6/hr.), 過体重群(31.3/hr.)に比し有意に高値であった.また肥満群の最低酸素飽和度値は80.1%で, やせ・普通体重群(85.0%), 過体重群(85.8%)に比し, 有意に低値であった.食道内圧変動値に関しては, 肥満群45.4cm H20, やせ・普通体重群33.5cm H20, 過多体重群32.5cm H20であった.側臥位の検討では, 肥満群は, 仰臥位と同様, やせ・普通体重群に比しAHI, 食道内圧変動値が有意に大きい値であった.側臥位での呼吸障害の改善度は, その肥満度に反比例していた.また仰臥位から側臥位に体位変換することで, AHIと食道内圧変動値がともに50%以上減少した症例数は67例中30例(44.8%)であった.
著者
宮崎 総一郎 小林 隆一 北村 拓朗
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-18, 2011 (Released:2012-02-15)
参考文献数
26

睡眠は高度の生理機能に支えられた積極的な適応行動であり, 健康を支えるための重要な役割を担っている。睡眠障害初診患者のうち, 睡眠時無呼吸症候群を中心とした睡眠呼吸障害が半数以上を占める。睡眠時無呼吸症候群では, 睡眠中の呼吸努力により呼吸中枢を介して呼吸性覚醒が生じ, 結果として睡眠の分断化, 睡眠障害へとつながる。質の良い睡眠がとれないことで, 睡眠時無呼吸症候群は, 循環器疾患や脳卒中, 糖尿病の発症に関連し, 集中力・記憶力・学習能力や感情のコントロール, 作業能率などを障害し, 産業事故, 交通事故等の原因となる。多彩な症状で臨床各科を横断的に受診する可能性が高い睡眠時無呼吸症候群を診療する際に, 陥りやすいピットフォールについて, 著者が今までに経験した症例, 文献からの症例報告に睡眠学の知見をまじえて概説した。
著者
辻 延浩 佐藤 尚武 宮崎 総一郎 大川 匡子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校の系統的な睡眠学習カリキュラムを構築することを目指して, 教材を開発するとともに, 睡眠学習プログラムを作成して実践化を試み, その有効性について検討した。さらに, 開発した睡眠学習教材をデジタルコンテンツ化し, 学校園の授業や校内研究会等で活用できるようにすることを目的とした。得られた結果の大要は以下のとおりである。(1) 現行の小学校体育科の保健領域(3~6年生)の指導内容に沿って睡眠の科学的知見を位置づけ, 発達段階をふまえた系統的な睡眠学習教材を作成した。睡眠学習における児童の評価は, 3年生と4年生では, 授業の楽しさ, 内容の理解度,生活への活用度,教具の適切度ついてほぼ全員から「大いにある」または「まあまあある」の評価が得られた。5年生と6年生では, 中学年に比べて「あまりない」あるいは「まったくない」とする児童の数が多少増えているものの, 多くの児童から高い評価が得られた。授業者および授業観察者の評価では, 提示した資料の説明の仕方でいくつかの改善点が指摘されたが, いずれの学年の授業においても, 児童が睡眠の科学的知見を通して, 自分の睡眠生活を見直したり, 再発見したりしていたことが高く評価された。これらの結果から, 開発した教材およびプログラムは, 児童に睡眠の大切さに気づかせるとともに, 睡眠に関する知識を深めることができると考えられた。(2) Web教材は, 「睡眠科学の基礎」, 「健やかな体をつくる睡眠6か条」, 「快眠に向けて補足6か条」で構成させた。Web教材に対して質問紙調査(5段階評価)を実施した結果, 画像等に関わる項目の平均得点は3.9~4.3の範囲にあり, 内容等に関わる項目の平均得点は3.8~4.5の範囲にあった。Web教材の改善に向けては56件の具体的な指摘を受けた。これらをふまえて, リンクのはり方, 図の色調, 図中の文字, カット図の挿入について改善を加えた。