著者
河津 雄介 三隅 二不二 小川 暢也 大里 栄子 宮本 正一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.22-30, 1973
被引用文献数
1

本実験は, プラシーボー投与にともなう薬効暗示と実験者の監督的指示とが, 被験者の知覚運動技能や自律反応に及ぼす影響について吟味したものである. 薬効暗示はstimulantとdepressantの二種, 監督的指示はP型, M型および特定の監督的指示を与えないO型の三種であった. 課題は鏡映描写で, 生理反応は指尖脈波を記録し心拍数を指標とした.<BR>仮説は, 1) 鏡映描写の成績や心拍数はプラシーボー投与にともなう薬効暗示の種類によって異なった影響を受けるであろう. 2) 上述の影響は, 実験者の与える監督指示のちがいに応じて異なった相乗効果を及ぼすであろう.<BR>生理反応 (心拍数) については明確な条件差は見出されなかったが, 鏡映描写の成績に次のような条件差が見出された. 仮説Iについては, depressant暗示がstimulant暗示よりも鏡映描写の成績にポジティブな効果を及ぼした. 仮説IIについては次のような結果がみられたedepressant暗示群ではP型の監督指示を受ける群が最も成績がよく, 次にO型でM型は最低であった. 一方, stimulant暗示群ではM型が一位, O型が二位, P型が三位という順位であったが, 条件間の差は有意でなく傾向のみであった.<BR>P型とM型の監督指示の影響が, 薬効暗示がdepressantかstimulantかで異なった相乗効果を及ぼす現象即ち, depressantの場合P型が, stimulantの場合M型が望ましい相乗効果を及ぼすことについて, PM式リーダーシップ論におけるP-M相乗効果との関連から考察が加えられた.
著者
郷田 賢 宮本 正一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.211-218, 2000-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
22
被引用文献数
9 16

This study examined the effect of the changes in facial expressions in different parts of the face on emotion recognition. Fiftytwo university students participated in the study. Seven emotions were selected as being the most suitable for categorization and expression: namely, anger, fear, surprise, disgust, sadness, happiness, and neutrality. Picture of these emotions were used to create stimulus materials, composed facial expressions were created by combining the upper and the lower parts of the pictures expressing different emotions. The participants were asked to categorize the type of emotion represented by each picture. The results showed that the upper area of the face was more often associated with anger, fear, surprise, and sadness. On the contrary, the lower area was more often associated with disgust and happiness. There were no significant differences between parts of the face associated with neutral emotions. Based on these results, we conclude that affected areas of the face differed as a function of emotion being experienced. Finally, the relationship of our results with Yamada's model (1993) was discussed.
著者
宮本 正一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.35-43, 1989

1. 本研究は選択反応課題の作業遂行過程において, 観察者の存在が被験者の作業成績, 自己評価反応, そして心拍数にいかなる影響を及ぼすかを検討しようとするものである。<BR>2. 大学生36名が, 前半・後半とも一人で課題を遂行する単独群と, 後半だけは一人の観察者が存在する条件下で課題を行う被観察群とにランダムに分けられた。<BR>3. 課題は漢字1文字と数字1文字との対を5組記憶し, ある遅延時間後に, 呈示された漢字に対する数字を答えるという, 選択反応課題である。選択反応をした後, 被験者は自分の反応に対して「正解」あるいは「マチガイ」いずれかの自己評価をするように求められた。<BR>4. その結果, 観察者の存在は作業成績, 「正解」と自己報酬的に自己評価する比率などには影響を与えなかったが, 自己評価, 特に「正解」と自己評価する時の反応潜時を長くさせた。また瞬時心拍数が実験の進行とともに低下するのを抑制した。<BR>5. これらの結果は社会的促進の動因理論と情報処理自己呈示モデルから考察された。
著者
宮本 正一
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.69-77, 1987

1. 本研究は遅延選択反応課題の作業遂行過程において, 観察者の存在が被験者の自己呈示行動にいかなる影響を及ぼすかを検討しようとするものである。<BR>2. 大学生67名が, 前半・後半とも一人で課題を遂行する単独群と, 後半だけは一人の観察者が存在する条件下で課題を行なう被観察群とに分けられた。<BR>3. 課題は漢字1文字と数字1文字との対を4組記憶し, ある遅延時間後に, 呈示された漢字に対する数字を答えるという, 遅延選択反応課題である。選択反応後, 被験者は自分の反応に対する自信度を表明し, さらに反応の正誤をCRT上に表示するかどうかの選択をせまられた。<BR>4. その結果, 観察者の存在は正反応数などには影響を与えなかったが, 自信度の回答時間を長くさせた。また公的自意識傾向を低下させた。<BR>5. これらの結果は社会的促進の動因理論と情報処理自己呈示モデルから考察され, 公的自意識得点の低下は積極的自己呈示の技巧から解釈された。
著者
宮本 正一 小川 暢也 三隅 二不二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-104, 1973-12-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
16

本研究は回避反応の習得と消去におよぼす社会的条件刺激の有効性を実証するために行なわれた. 社会的条件刺激はグリッド越しのとなりの部屋で他のラットに電気ショックを与えることにより作り出された, 恐怖反応である. 従来の手続きによるBuzzer群と比較した結果, 次のことが明らかになった.1. 習得基準までの試行数, その間の回避反応数の2測度には2群間の差がみられず, 反応潜時だけはSocial群がBuzzer群より短い傾向が認められた.2. 消去に関しては, 基準までの試行数, CR数, 反応潜時の3測度でいずれにも2群間に顕著な差が認められ, Social群の消去抵抗がBuzzer群より著しく大きかった.これらの結果は代理経験と社会的刺激のもつ複雑性の2つの観点から考察された.
著者
宮本 正一 安永 智秀
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.49, pp.47-52, 1993-07-25

日本産のメクラカメムシ亜科に含まれる近縁な2積を検したところ,いずれも既知の属にあてはまらない未記載種と判明したので,新属Adelphocorisellaを創設し,各種にA.lespedezae,A.insulanaの種小名を与え,後種については終齢幼虫も含め記載,図示した.前種は本州(青森市,つくば市),九州(福岡市)において,マメ科植物(マルバハギ,クズ)から得られている.後種は西表島,与那国島から知られ,クズの1種に寄生する.この両種は互いに酷似するが,分布が異所的であることに加え,頭頂複眼間の幅,触角の長さ,雄交尾器の形状などに相違がある.Adelphocorisella属は,Adelphocoris属と極めて近縁で,一見非常によく似ている.しかし,雄交尾器のvesicaにAdelphocoris各種の共有新形質である櫛状骨片と鈎状骨片を欠く上,体がやや小さく,前胸背につやがないこと,脛節棘が淡色であること,雄の腹部生殖節(把握器基部付近)に突起がないことで区別でき,新属として扱うことに矛盾はない.なお各種の和名であるが,それぞれカスミヒゲナガメクラガメ(lespedezae),リュウキュウヒゲナガメクラガメ(insulana)としておきたい.