著者
出利葉 浩司 宮武 公夫 財部 香枝 矢口 祐人 宮武 公夫 財部 香枝 矢口 祐人
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

明治年間に北海道を訪問し、アイヌの人びとに出会った西洋人とくにアメリカ人が残した記録類について、「出会い」という視点からながめてみることが本研究の目的である。日記、書簡類などのうち、ハイラム・ヒラー書簡、ロミン・ヒチコック講演草稿、セントルイス万国博覧会におけるフレデリック・スター収集資料記載情報については、翻刻、翻訳し、公表することができた。また、セントルイス万国博覧会、ロンドン万国博覧会をめぐる人類学的問題について、調査された資料をもとに、それぞれ論考をまとめることができた。
著者
宮武 公夫 桑山 敬巳 権 錫永
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、従来の博覧会研究が、展示されたモノや建築、権力・イデオロギー論からの演繹的研究、文化の政治学の側面に焦点を当てていたのに対し、20世紀初頭の博覧会における具体的なヒトの展示(経験や実践)に焦点を当てることで、近代への過渡期における国民国家、植民地主義、近代人類学、先住民アイデンティティの生成や変容に関して新たな視点を与えるものである。研究成果としては以下の通りである。宮武公夫の研究は、1904年セントルイス博覧会の人類学展示のために渡米した9名のアイヌに関する写真や工芸品という非文字資料に焦点を当て、20世紀初頭の異種混交的なセントルイス博覧会における人類学展示の姿を明らかにした。具体的には、国内と米国の7カ所の研究機関や個人の所蔵する、多様な撮影者によるアイヌ関係写真のほぼ全数を調査するとともに、博覧会で作成されたハイブリッドな工芸品などを明らかにした。また、これらをとおして、近代への過渡期における博覧会での、アイヌの人々の民族やエスニシティの領域を横断する実践と創造の姿を明らかにすることができた。また桑山敬巳の研究は、展示領域と外部世界の境界にあるギフトショップに注目し、各地のギフトショップにおけるキモノのギフトが生み出す「異民族イメージ」について明らかにした。また権錫永の研究は、植民地統治下に支配者側によって開催された特異な博覧会として、日本の朝鮮統治下の博覧会を対象にしている。この研究では、従来の研究が日本側資料に依拠しているのに対して、当時の朝鮮メディア資料や、近年の韓国における博覧会研究を参照しながら研究をおこない、植民地支配者側と批判する朝鮮メディアという対立する言説の検討と、実際に動員された朝鮮農民などの経済問題や博覧会体験の問題を明らかにし、植民地博覧会の複合的な姿を明らかにしている。
著者
梶原 景昭 望月 哲男 佐藤 研一 小山 皓一郎 天野 哲也 宮武 公夫 西部 忠 権 錫永 国広 ジョージ 越野 武
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

調査研究の結果、得られた知見は以下の通りである。1.「北方」を地理的に定義するのではなく、わが国との関わりを中心に文明論的に、そして近年の国際関係、地域連繋の点から定位すると、極東ロシア、北東アジア、中央アジアを含む、北西ユーラシアの拡がりに21世紀的な意味を見出すことができる(「北方」といえば北米、スカンディナヴィア、極北、ロシア北部等を含むが、ここでは上述の積極的な定義が重要である)。2.1で定めた「北方」地域に関しては、その大半が社会主義の洗礼を受けたことも含め、ロシア語、ロシア文明のきわめて強い影響下にある(学術制度から日常生活にも到る)。3.しかしながらこうした文明・文化の状況は現在あくまでグローバル化の渦中にあり、いわゆる従来のロシア文明ととらえることは妥当でない。4.中央アジア、極東ロシアにおける韓国の存在は極めて大きい。それに反し、歴史的にはさまざまな関わりがあるもののわが国の存在感は弱い。5.上述の域内でのヒト・モノの移動は想像以上に進行している(アゼルパイジャン、チェチェン人が極東ロシアに多数移住していること、またスターリン時代の強制移住による中央アジアの朝鮮人の存在など)。6.この地域を概観すると、周辺地域である日本、韓国などの相対的な経済先進地域が北方中心域に刺激を与えているようにみえるが、こうした経済的インパクトが社会変化を支配するところまではいっていない。7.ユーラシア鉄道計画等の北方地域に関わるプロジェクトに対し、日本の関心と関与が圧倒的に少ない。