著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.61-83, 1992

われわれの身の回りには、社会的マッチング現象が満ち溢れている。例えば、部屋割りやプロジェクト割当、プロ野球ドラフト会議、結婚、大学入試制度、ゼミナール配置、就職、人事異動現象などをあげることができる。最近、このような社会的マッチング現象に関する理論的研究が、ゲーム理論と社会的選択理論の枠組みの中で、社会的マッチング理論として様々に展開されてきている。本研究の目的は、『両側選好順序のもとでの「1-q型」社会的マッチング問題』の構造分析とその結果を踏まえた『社会的マッチング方式問題』に焦点を絞って、これらの社会的マッチング理論における成果を体系化することにより、残されている諸課題を、理論的課題、実践的課題、実証的課題に分けて論じることにある。特に、実践的課題と実証的課題については、本稿で体系化される理論的成果の含蓄を、現在社会問題となっている日本の大学入試制度に求めながら論じる。
著者
富山 慶典
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第17回全国大会
巻号頁・発行日
pp.7, 2002 (Released:2002-09-19)

Electronic democracy is an important theme which social informatics must research next to electronic capitalism. Recently, the special numbers are organized in IEEE and IPSA and some books are published within and outside the country. The literatures are different each other about basic disciplines and analytical perspectives, but are common to construct a future research framework and to address research tasks in it. The purpose of this paper is, along with this line, to address research tasks on decision, deliberation and information in electronic democracy from a decision scientific standpoint.
著者
富山 慶典
出版者
群馬大学社会情報学部
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
no.4, pp.55-67, 1997-07-28

Some relationship among the individual choice competence, the number of individuals in the group, its decision rule and the collective choice competence was initially investigated in Condorcet's Jury Theorem. Although several researchers have devloped the theorem in different directions, they in common assume implicitly one collective choice area and introduce only the individual choice competence for the area. In reality, however, there may exist multiple collective choice areas such as 'management strategy and personnel changes planning' and the individual choice competencies may be different for the corresponding area such that 'he/she is good at management strategy but not personnel changes planning'. Under the multiplicity of choice areas and the difference in competencies, how should the group assign what members in it to what collective choice area? Tomiyama (1991) extends the basic model under Jury Theorem to the model of two collective choice areas and formulates in general the group two-decomposition problem. It also gives a solution to this problem under the complete homogeneity assumption that all of the members in the group have the same competence of individual choice for all of the collective choice areas. This paper analyses the problem under the heterogeneity assumption. It is proved that individual rationality and social rationallty may not be compatible. The high-competence decomposition is used to represent individual rationality, and the maximum-sum decomposition and the minimum-difference decomposition are used to represent social rationality. Finally, some unsolved problems are showed.
著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.69-84, 1991

集合的選択の正確確率と個人的選択能力,集団構成員数,集団の決定規則との間の関係は,コンドルセの陪審定理において初めて理論的に分析された.数名の研究者がこの定理を様々に展開してきているが,単一の集合的選択領域を暗黙裡に仮定し,その領域における個人的選択能力だけを導入しているという点で共通している.しかし現実には,“経営戦略と人事移動”というように集合的選択領域は複数存在し,“経営戦略には強いが,人事移動には弱い”というように集合的選択領域によって構成員の個人的選択能力には違いがあると考えられる.領域の違いによって構成員の個人的選択能力が異なり,かつ集団の構成員が限られているという条件のもとで,集団はどのような集合的選択領域にどのような個人的選択能力を持った構成員を配置すればよいのであろうか? この集団分割問題は陪審定理からの従来の展開研究のモデルでは取り扱うことができない.集合的選択領域が1つという仮定のもとでのモデル展開になっているからである.この論文では,陪審定理の証明の前提になっている基本モデルを集合的選択領域が2つある場合に拡張し,新たに集団2分割問題を一般的に定式化し,すべての領域に対するすべての個人的選択能力が等しいという完全同質性の仮定を導入した場合の集団2分割問題に対する解を定理の形で与える.最後に,今後の課題について言及する.
著者
富山 慶典 細野 文雄
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.2_73-2_88, 1999-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
18

研究室配属とは,大学における卒業研究やゼミナール活動などのために,学生を研究室に配属させることをいう。“学生は1つの研究室にしか所属できず,研究室は定員をもち,学生と研究室の両方の意向にもとづいて配属するということを前提として,すべての学生をどこかの研究室に必ず配属する”という要請を満たす研究室配属制度を対象とする。社会的マッチング理論に基づく学生志願型GS制度は,この要請を満たし,かつ,いくつかの理論的に望ましい性質をもっている。しかし,すべての学生がすべての研究室に対する線形の選好順序に基づいて全研究室数分の順位を表明するということを仮定している。実際の研究室数はそれほど小さくないため,非現実的である。この制度を実際に利用できるようにするためには,比較的小さな学生表明順位ですべての学生の配属が可能であるか否かを調べなければならない。そのため,モンテカルロ・シミュレーションを実施した。その結果,学生の情報処理能力からみて無理がなく,配属される研究室に対する学生の希望順位の格差を小さくできる比較的小さな学生表明順位と,配属される学生数を研究室間で均一化できる小さな研究室定員との組の存在が明らかになった。
著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-16, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
60
被引用文献数
3

民主的な社会には、2つの異なる集合的意思決定問題がある。ひとつは、人々の選好をいかに集約して社会的選好を導き出すかという問題である。もうひとつは、人々の判断にもとづいていかにして社会的判断を形成するかという問題である。これらの問題を解決するためには、それぞれに相応しい理論と方法が必要となる。これまでの集合的意思決定研究は選好集約論の探求に偏りすぎていた。置き去りにされてきた判断形成論の探求をすすめなければならない。そうだとすれば、選好集約論と判断形成論の基本的な特徴は何か、判断形成論の探求は民主的決定の隣接領域における最近の研究動向といかなる関連性をみてとれるのか、それは現代社会にとってどのような意義があるのか。本稿の目的は、古代ギリシャから現代までの集合的意思決定研究の歴史を概観することにより、これらの問いにたいする展望的な答えを得ようとすることにある。本稿の主張は、選好集約論の探求がもはや不要であるという点にはない。判断形成論の探求をすすめる必要があり、これらの理論が民主的決定にとって相補的な関係にあるという点にある。
著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.2_125-2_142, 1989-10-20 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9
著者
数土 直紀 赤川 学 富山 慶典 盛山 和夫 金井 雅之 伊藤 賢一 樽本 英樹
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本プロジェクトは、期間中に合計12回の研究会を学習院大学において開催した。また、研究会での成果を、海外を含む各種学会・会議において発表報告をした。研究会での報告内容は、次の通りである。(1)「ウォルト・ディズニーの思想」、(2)"Evolution of Social Influence Networks in Unanimous Opinion Formation"、(3)「Social Capital概念の適用可能性」、(4)「階層意識上の性-権力」、(5)「Dunkan WattsのSmall Worldシミュレーションを応用して」、(6)"Independence of Protestantism and Capitalism"、(7)「規範性のメタ理論的考察」、(8)「『社会構造のモデル樽築』」、(9)"Evolution of Distributive Justice in Social Influence Networks"、(10)「政治的権力の正当性からの独立性」、(11)「後期ハーバーマスの展開の体系的分析」、(12)「都市型公共空間における不関与の規範の形成」、(13)「損害賠償額が上昇するメカニズム」、(14)「シミュレーションということ:く社会>の理解/記述/創出」、(15)「構成主義と構成されざる現実」、(16)「利他的な行為者はゲームをどうみているか」、(17)"Escape from Free-riders"、(18)「倫理的判断の不偏性」、(19)「ロマンティック・ラブの日本的受容〜『主婦の友』に見る「愛」と「恋愛」の変遷〜」、(20)「社会移動表における非対角セルの分析」、(21)「社会運動への動員における紐帯の効果」、(22)「メディアと「信頼」」。最終年度は、プロジェクト期間中に参加者が議論を基にした論文を収録し、計13本、約280ページの報告書を作成した。