著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.163-179, 1998-06-15 (Released:2016-08-26)
参考文献数
25

江原ら(1984)及び山崎&江原(1993)は、会話分析において次のような事実を見いだした。1)男性同士の会話では沈黙が多い。2)女性同士の会話では沈黙が少ない。3)にもかかわらず、男性と女性の間の会話では、男性が女性の話に割り込みやすく、女性が聞き役になる。江原らは、この奇妙な現象の中に性による権力を見いだした、しかし、江原らは、そのような権力を産出するメカニズムを特定できなかった。本稿は、進化ゲーム理論を用いて、このメカニズムを分析する。その結果、性による権力は自我を防衛しようとする感情に起因することが明らかにされる。また、本稿は、男性と女性の間の対等な関係が、否定的な他者に対する寛容によって可能になることを示す。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.225-242, 2012 (Released:2013-08-12)
参考文献数
36

本論文の目的は,社会変動をつうじて地位が形成される過程を明らかにすることにある.本論文では,以下の条件が満足されるとき,ある個人属性は地位としてみなされるようになると仮定した: (1) その属性は個人の能力によって獲得されている,(2) その属性のばらつきが社会変動によって大きくなっている.この仮説を検証するために,本論文では婚姻状態に注目し,1985年SSM調査データ(N = 2,650) とSSP-I 2010データ(N = 1,502)をもちいて婚姻状態が階層帰属意識に及ぼす効果について分析をおこなった.分析結果は,結婚年齢に関するばらつきが相対的に大きい2010年では未婚であることが階層帰属意識に対してネガティブな効果をもっている一方で,結婚年齢に関するばらつきが相対的に小さい1985年では未婚であってもそれは階層帰属意識に対して何も効果をもっていないことを明らかにしている.しかしその一方で,分析結果は,未婚であることが階層帰属意識に対してもっている効果は社会階層間で異なっていることを明らかにしている.これらの事実は,本論文の仮説を限定的に支持するものといえるだろう.
著者
数土 直紀
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.225-242, 2012

本論文の目的は,社会変動をつうじて地位が形成される過程を明らかにすることにある.本論文では,以下の条件が満足されるとき,ある個人属性は地位としてみなされるようになると仮定した: (1) その属性は個人の能力によって獲得されている,(2) その属性のばらつきが社会変動によって大きくなっている.この仮説を検証するために,本論文では婚姻状態に注目し,1985年SSM調査データ(N = 2,650) とSSP-I 2010データ(N = 1,502)をもちいて婚姻状態が階層帰属意識に及ぼす効果について分析をおこなった.分析結果は,結婚年齢に関するばらつきが相対的に大きい2010年では未婚であることが階層帰属意識に対してネガティブな効果をもっている一方で,結婚年齢に関するばらつきが相対的に小さい1985年では未婚であってもそれは階層帰属意識に対して何も効果をもっていないことを明らかにしている.しかしその一方で,分析結果は,未婚であることが階層帰属意識に対してもっている効果は社会階層間で異なっていることを明らかにしている.これらの事実は,本論文の仮説を限定的に支持するものといえるだろう.
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-179, 1995-12-01 (Released:2016-08-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本稿では、サンクションを有する正当化された権力(公式権力)を問題にする。一般には、権力が正当化されるためにはその権力が組織の維持に貢献している必要があると考えられている。しかし、公式権力の行使がパレート劣位な状態を導く場合が存在する。したがって、組織の維持に対する貢献は、公式権力の本質的な規定ではない。また、本稿では、この事実をゲーム理論を用いて明らかにすることで、ゲーム理論が社会現象の分析にとって有効な方法であることを明らかにする。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.41-56, 2009-05-25 (Released:2010-01-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

階層帰属意識は、日本の社会階層研究において、とりわけ理論的に探求されることの多かった主題である。その代表的な事例として、ファラロ=高坂モデルを指摘することができるだろう。しかし、ファラロ=高坂モデルはある一時点での階層帰属意識分布を問題にしており、構造変動にともなって、それがどのように変化するのかといったことは議論していない。そこで本稿では、この欠を補うべく、階層帰属意識分布の変化の背後にあるメカニズムを理論的に明らかにすることを試みた。その結果、“親の職業的地位を継承している個人は、自身の職業的地位が指示する階層的地位により強くコミットしている”ことを仮定することで、いっけんすると対応関係を欠いていたかのように観察された“職業構造の変動と階層帰属意識の変化”の関係を合理的に説明できることが明らかにされた。そして同時に、そのようなメカニズムの存在を、SSM調査データによって実証的に確認できることも明らかにした。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.163-179, 1998

江原ら(1984)及び山崎&江原(1993)は、会話分析において次のような事実を見いだした。1)男性同士の会話では沈黙が多い。2)女性同士の会話では沈黙が少ない。3)にもかかわらず、男性と女性の間の会話では、男性が女性の話に割り込みやすく、女性が聞き役になる。江原らは、この奇妙な現象の中に性による権力を見いだした、しかし、江原らは、そのような権力を産出するメカニズムを特定できなかった。本稿は、進化ゲーム理論を用いて、このメカニズムを分析する。その結果、性による権力は自我を防衛しようとする感情に起因することが明らかにされる。また、本稿は、男性と女性の間の対等な関係が、否定的な他者に対する寛容によって可能になることを示す。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.103-119, 1992-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

この論考では、情報が役に立つとはどのようなことなのか、このことの解明を目的にしている。人々は、情報を活用することで、事を有利に運ぼうとする。しかし、情報は、それだけで何らかの有用性を持っているわけでない。特に、他者との関わりの中で情報を用いようとする場合、情報は用いられ方次第で、有用にも、有害にもなりうる。そして、人は、与えられた情報を有用なものとして扱おうとする限り、その情報が状況に導入されることで、自分の判断にだけでなく、他者の判断にもどのような変更が生じうるかを検討しなければならなくなる。この事実は、二つの点で重要である。一つは、この事実は、情報を得ることで状況の展開の読みが容易になり、手の決定にいたるまでの負担が軽減される、という常識が誤っていることを示唆している。もう一つは、この事実は、状況に関係する不確定的な要因を確定してくれる情報が他者というより根源的な不確定性への意識的な注意を喚起するということを明らかにしている。つまり、状況の中の不確定性を減少させるはずの情報は、同時に、行為者をして異なる不確定性の存在に意識を向けさせる。これは、情報の逆説的な性格の一つであろう。
著者
数土 直紀
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本プロジェクトでは、進化ゲーム理論を用いた数理的手法により、幾つかの具体的な社会現象を分析した。そしてその結果、権力現象を産出する二種類のメカニズムを特定化することに成功した。一つは、男性と女性というように性によって分割された異なる二集団間に存在する権力が生成されるメカニズムである。このメカニズムが成立する条件下では、自由で相互に対等であるような相互行為であっても、条件さえ整えば半ば必然的に権力関係が形成される。もう一つは、集団内において生成される権力である。このメカニズムが成立する条件下では自発的に搾取されることを選択する「利他的な」個人が広義の合理的選択を通じて出現する。しかも、搾取されることを自発的に選択するために、このような権力は個人の主観に定位する限り検出されない「見えない権力」となっている。本プロジェクトが解明したこれらのメカニズムの特徴は、いずれも自由で対等な相互行為から権力現象を明らかにしているところにある。従来の研究では、権力は自由と対立する概念だと理解されてきた。したがって、自由な相互行為からも権力関係が生成されるという認識が希薄であった,しかしながら、本プロジェクトの成果によって、対等で自由な相互行為からも結果として非対称的な権力関係が生成されうろことが示された。これは従来の権力研究を大きく前進させるものであり、それゆえ本プロジェクトの成果は重要な意義を有していると思われる。
著者
数土 直紀
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.436-453, 2006-09-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
102
被引用文献数
1 1

本稿ではまず, 日本における数理社会学研究の最近の動向を, 進化ゲーム理論やシミュレーションなどの台頭, および世代継承の観点から議論するさらに, 国際化と啓蒙活動の盾発化を中心に, この時期の数理社会学会の活動を概観し, そうした動向・活動の中から出てきた新しい流れを, テーマおよび方法の違いに気をつけながら, 可能な限り紹介する
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.71-75, 1994-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
1

ここではまず、論文「権力関係の存在可能性」(数土,1993)で明らかにされた定理3の証明に誤りがあることを指摘し、その証明を訂正する。次に、同論文の証明に省略が多いことを指摘し、特に重要と思われる定理2(補助定理1を含む)のより詳しい証明を紹介する。最後に、この定理2が社会秩序問題に対して持つと考えられる含意を指摘する。
著者
大浦 宏邦 海野 道郎 金井 雅之 藤山 英樹 数土 直紀 七條 達弘 佐藤 嘉倫 鬼塚 尚子 辻 竜平 林 直保子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

秩序問題の中核には社会的ジレンマ問題が存在するが、社会的ジレンマの回避は一般に二人ジレンマの回避よりも困難である。本研究プロジェクトでは、Orbel & Dawes(1991)の選択的相互作用の考え方を拡張して、集団間の選択的な移動によって協力行動が利得のレベルで得になる可能性を検討した。まず、数理モデルとシュミレーションによる研究では、協力型のシェアが大きければ選択的移動が得になる可能性があることが明らかになった。次に所属集団が変更可能な社会的ジレンマ実験を行った結果、協力的な人は非協力者を逃れて移動する傾向があること、非協力的な人は協力者がいるうちは移動しないが、協力者がいなくなると移動することが明らかとなった。この結果は、特に協力的なプレーヤーが選択的な移動をする傾向を持つことを示している。実験室実験の結果を現実社会における集団変更行動と比較するために、職場における働き方と転職をテーマとした社会調査を実施した。その結果、協力傾向と転職行動、転職意向には相関関係が見られた。これは、実験結果の知見と整合的だが、因果関係が存在するかどうかについては確認できなかった。方法論については、基本的に進化ゲームやマルチエージェント分析は社会学的に有意義であると考えられる。ただし、今回主に検討したN人囚人のジレンマゲームは社会的ジレンマの定式化としては狭すぎるので、社会的ジレンマはN人チキンゲームなどを含めた広い意味の協力状況として定義した方がよいと考えられた。広義の協力状況一般における選択的移動の研究は今後の課題である。
著者
数土 直紀 赤川 学 富山 慶典 盛山 和夫 金井 雅之 伊藤 賢一 樽本 英樹
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本プロジェクトは、期間中に合計12回の研究会を学習院大学において開催した。また、研究会での成果を、海外を含む各種学会・会議において発表報告をした。研究会での報告内容は、次の通りである。(1)「ウォルト・ディズニーの思想」、(2)"Evolution of Social Influence Networks in Unanimous Opinion Formation"、(3)「Social Capital概念の適用可能性」、(4)「階層意識上の性-権力」、(5)「Dunkan WattsのSmall Worldシミュレーションを応用して」、(6)"Independence of Protestantism and Capitalism"、(7)「規範性のメタ理論的考察」、(8)「『社会構造のモデル樽築』」、(9)"Evolution of Distributive Justice in Social Influence Networks"、(10)「政治的権力の正当性からの独立性」、(11)「後期ハーバーマスの展開の体系的分析」、(12)「都市型公共空間における不関与の規範の形成」、(13)「損害賠償額が上昇するメカニズム」、(14)「シミュレーションということ:く社会>の理解/記述/創出」、(15)「構成主義と構成されざる現実」、(16)「利他的な行為者はゲームをどうみているか」、(17)"Escape from Free-riders"、(18)「倫理的判断の不偏性」、(19)「ロマンティック・ラブの日本的受容〜『主婦の友』に見る「愛」と「恋愛」の変遷〜」、(20)「社会移動表における非対角セルの分析」、(21)「社会運動への動員における紐帯の効果」、(22)「メディアと「信頼」」。最終年度は、プロジェクト期間中に参加者が議論を基にした論文を収録し、計13本、約280ページの報告書を作成した。