- 著者
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数土 直紀
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.2-19, 2016 (Released:2016-08-06)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
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本稿は,新しい分析概念として複合化された社会メカニズムを提示することを目的としている.この概念は,有名なコールマンボート(Coleman 1990=2004)から想を得ている.従来のコールマンボートでは一連の因果関係だけが想定されているが,新しい概念では複数の因果関係が併存することを想定している.このように想定することで,私たちは複雑な社会現象をより深く理解することが可能になる.本稿では,新しい分析概念の有効性を示す一つの事例として,回帰モデルの有限混合を前提にした性別役割意識の分析をおこなった.最近の世論調査によると,日本人の性別役割意識の趨勢が不安定化している.このような変化を説明するためには,高学歴化・女性の労働力参加と性別役割意識を結ぶ2つの因果関係を想定することが必要になる.一つは性別役割意識に囚われなくなる人びとを生むが,もう一つは,ワークライフバランスを無視した働き方を強いることで,性別役割意識を肯定するような人びとを生む.その結果,性別役割意識の趨勢が不安定化するのだ.SSP-I 2010 (N=1,739) による分析結果は,本稿の仮説を支持するものになっている.このことは,複雑な社会現象の解明には,複合化された社会メカニズムの存在を仮定することが有効であることを明らかにしている.