著者
富樫 均 田中 義文 興津 昌宏
出版者
長野県自然保護研究所
雑誌
長野県自然保護研究所紀要 (ISSN:13440780)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-16, 2004
被引用文献数
1

長野市飯綱高原に位置する逆谷地湿原で得られたボーリングコアを試料として、完新世の堆積物の花粉分析、微粒炭分析、14C年代測定を行い、里山の環境変遷を考察した。その結果によれば、飯綱高原においては、約3000年前の縄文時代の後期から火入れをともなう人間活動が活発になり、森林植生への影響が顕著になった。また、約700年前の中世の時代には森林破壊が極大期に達し、森林が減少し草地が拡大した。その後、約400年前以降の近世になって火入れ行為が抑制され、森林が回復し、アカマツ林やスギ林が拡大した。このような人と自然の関わりと変遷の歴史は、現代の里山問題の前史と位置づけられ、里山という場への新たな認識をあたえるものである。
著者
栗林 正俊 富樫 均 浜田 崇 尾関 雅章 大和 広明 陸 斉 畑中 健一郎
出版者
長野県環境保全研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-53, 2017 (Released:2018-03-23)

長野県環境保全研究所では,気候変動影響調査と市民への環境学習の機会の提供を兼ねた講座とし,毎年8月に長野県内の6箇所(長野,上田,飯田,松本,伊那,大町)で,セミの抜け殻調査を1回ずつ実施している。本研究では,2012~2016年の5年間のデータから,セミの分布状況や年次変化を示し,各種セミの抜け殻数と気候条件の相関関係を基に年次変化の要因を考察した。この結果,エゾゼミは標高700m以上の涼しい調査地点で確認され,ニイニイゼミは標高700m未満の暖かい調査地点で確認された。松本会場ではエゾゼミが,長野会場ではニイニイゼミが,それぞれ減少傾向にあるが,長野,上田,松本の3会場ではミンミンゼミが増加傾向にあった。この3会場全てで,ミンミンゼミの抜け殻数は5月の月平均気温と有意な正の相関があった。今後も各地点での調査を継続すると共に,定点で時期を変えて複数回の調査を行い,調査のタイミングによるセミの抜け殻の種類の違いを評価することが課題である。
著者
畑中 健一郎 陸 斉 富樫 均
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.197, 2007

<BR><B>1.はじめに</B><BR> 近年、里山の環境保全に対する関心が高まっているが、里山という言葉そのものにもさまざまな解釈があり、人により受け止め方にも違いがみられる。里山の環境保全をすすめるにあたっては、地域の人々が、里山に対して現在どういうかかわりをもち、また里山に対してどういう意識をもっているかを把握することが重要である。そこで本研究では、長野県民を対象に実施したアンケート調査をもとに、里山に対する住民の意識を明らかにすることを試みた。<BR><B>2.アンケート調査の方法</B><BR> アンケート調査は、2004年2月から3月にかけて、長野県内の84市町村(当時)の住民を対象に郵送により実施した。対象者は各市町村の選挙人名簿から層化3段無作為抽出により抽出し、有効回答数は1120人(有効回答率56%)であった。<BR> 調査項目は大きく分けて、(1)長野県の自然と自然保護に対する意識、(2)里山とのかかわり、(3)里山の生き物に対する意識、(4)地域の伝統行事や組織へのかかわり、(5)今後の里山利用と保全への意識、および回答者の属性である。<BR><B>3.調査結果の概要</B><BR>(1)長野県の自然と自然保護に対する意識<BR> 長野県の自然環境に「満足している」人の割合は66%で、市部よりも郡(町村)部で高い。また年齢別では、50代や60代の高年層よりも20代や30代の若年層で高い割合となっている。県内の自然保護対策については、「もっと推進するべき」が55%、「今のままでよい」が19%、「もっと緩和するべき」が5%であった。<BR>(2)里山とのかかわり<BR> 里山に「親近感を感じる」人の割合は87%と高く、市・郡部での違いはほとんどないが、里山とのかかわりの頻度が高い人の方が「親近感を感じる」割合が高くなっている。<BR>(3)里山の生き物に対する意識<BR> ツキノワグマ、サル、カモシカなどの中・大型動物が、最近、数を回復させはじめていることに対しては、「良いことだと思う」が33%、「困ったことだと思う」が31%、「なんともいえない」が36%と判断が分かれている。市部では「良いことだと思う」、郡部では「困ったことだと思う」の割合が高く、年代別では若年層より高年層で「困ったことだと思う」の割合が高くなっている。<BR>(4)地域の伝統行事や組織へのかかわり<BR> 最近の1年間に参加した行事としては、「初詣」が75%、「お盆の迎え火・送り火」が73%、「お祭り」が69%であった。また、残しておきたい行事としては、「お祭り」が89%でもっとも高い割合となっている。最近の1年間に日常生活の中で参加した組織や作業としては、「地域の共同作業」が62%、「寄合い」が53%であった。<BR>(5)今後の里山利用と保全への意識<BR> 里山で暮らすことを「魅力的だと感じる」人の割合は79%と高く、市・郡部での違いはほとんどないが、高年層ほど高い割合となっている。また、里山での活動に「関心がある」人の割合は63%で、女性より男性、若年層より高年層の方が高い割合となっている。関心がある活動としては、市部では「自然観察会等の実施、郡部では「農業に関連した作業」が多い。今後の里山の利用策としては、「地域住民の憩いの場・癒しの場」が69%、「生活物資を得る場」が41%、「野生生物の保護区」が27%と続いている。<BR><B>4.おわりに</B><BR> 里山に対しては多くの人が親近感を感じており、里山で暮らすことも魅力的だと感じている。しかし、市部と郡部、あるいは若年層と高年層での里山に対する認識の違いも明らかとなった。例えば、自然環境への満足度は郡部の方が高いが、中・大型動物の生息に対しては郡部の方が否定的な考えを持っている。また、若年層より高年層の方が里山により高い関心をもっている傾向もわかった。ただし、里山での活動内容としては、これまで営まれてきた農林業に関わる活動ばかりでなく、自然観察や憩いの場・癒しの場としての里山の利用など、関わり方に対するニーズも多様化している状況がうかがわれる。<BR>
著者
富樫 均 内田 克 楠元 鉄也
出版者
長野県自然保護研究所
雑誌
長野県自然保護研究所紀要 (ISSN:13440780)
巻号頁・発行日
no.2, pp.99-108, 1999

湿原の環境変遷史の解読を目的とした研究にとって,サンプリング計画の策定は基本的かつ重要な課題である.飯綱火山南東麓に位置する逆谷地湿原において,厚さ約13mにおよぶ泥炭層のサンプリングを行った.サンプリングには水圧式シンウォールサンプラーを用い,事前に弾性波探査によって掘削位置を選定した.本稿はサンプリング計画とその実際についての事例報告である.
著者
富樫 均 田中 義文 興津 昌宏
出版者
長野県自然保護研究所
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-16, 2004 (Released:2011-01-21)

長野市飯綱高原に位置する逆谷地湿原で得られたボーリングコアを試料として、完新世の堆積物の花粉分析、微粒炭分析、14C年代測定を行い、里山の環境変遷を考察した。その結果によれば、飯綱高原においては、約3000年前の縄文時代の後期から火入れをともなう人間活動が活発になり、森林植生への影響が顕著になった。また、約700年前の中世の時代には森林破壊が極大期に達し、森林が減少し草地が拡大した。その後、約400年前以降の近世になって火入れ行為が抑制され、森林が回復し、アカマツ林やスギ林が拡大した。このような人と自然の関わりと変遷の歴史は、現代の里山問題の前史と位置づけられ、里山という場への新たな認識をあたえるものである。
著者
富樫 均 内田 克 楠元 鉄也
出版者
長野県自然保護研究所
巻号頁・発行日
vol.2, pp.99-108, 1999 (Released:2011-03-05)

湿原の環境変遷史の解読を目的とした研究にとって,サンプリング計画の策定は基本的かつ重要な課題である.飯綱火山南東麓に位置する逆谷地湿原において,厚さ約13mにおよぶ泥炭層のサンプリングを行った.サンプリングには水圧式シンウォールサンプラーを用い,事前に弾性波探査によって掘削位置を選定した.本稿はサンプリング計画とその実際についての事例報告である.
著者
富樫 均 酒井 潤一 公文 富士夫
出版者
長野県自然保護研究所
雑誌
長野県自然保護研究所紀要 (ISSN:13440780)
巻号頁・発行日
no.2, pp.33-41, 1999
被引用文献数
1

飯綱火山南東麓に位置する逆谷地湿原において堆積物の採取と分析をおこなった.逆谷地湿原は標高約934メートル,面積約4ヘクタールのミズゴケ湿原である.湿原内でのボーリングにより,約13mの厚さの湿原堆積物を採取し,堆積物の記載をおこなった.堆積物は大部分が連続する泥炭層からなり,泥炭層中には多数の薄い火山灰層が狭在する.この試料について,14C年代測定と火山灰層の対比をおこなった.その結果,広域火山灰層である阿蘇4火山灰(Aso-4)ならびに大山倉吉火山灰(DKP)が確認され,泥灰層の堆積の開始は約10万年前にまでさかのぼることが明らかになった.10万年の寿命をもつ生きている湿原の存在は非常にめずらしいものであり,この湿原に記録されている環境変遷史と生態系の成り立ちを明らかにするために,さらに詳細な分析が予定されている.
著者
富樫 均 酒井 潤一 公文 富士夫
出版者
長野県自然保護研究所
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-41, 1999 (Released:2011-03-05)

飯綱火山南東麓に位置する逆谷地湿原において堆積物の採取と分析をおこなった.逆谷地湿原は標高約934メートル,面積約4ヘクタールのミズゴケ湿原である.湿原内でのボーリングにより,約13mの厚さの湿原堆積物を採取し,堆積物の記載をおこなった.堆積物は大部分が連続する泥炭層からなり,泥炭層中には多数の薄い火山灰層が狭在する.この試料について,14C年代測定と火山灰層の対比をおこなった.その結果,広域火山灰層である阿蘇4火山灰(Aso-4)ならびに大山倉吉火山灰(DKP)が確認され,泥灰層の堆積の開始は約10万年前にまでさかのぼることが明らかになった.10万年の寿命をもつ生きている湿原の存在は非常にめずらしいものであり,この湿原に記録されている環境変遷史と生態系の成り立ちを明らかにするために,さらに詳細な分析が予定されている.