著者
大和 広明 三上 岳彦 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.325-340, 2011-04-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
17 18

We analyze the influence of sea breeze on temperature distribution in the Kanto Plain (central Japan) on a day that a sea breeze front was detected (known as sea-breeze front days) using high-resolution temperature data observed by our research team. The high-temperature area on sea breeze front days moves northwest from central Tokyo, and was located at Kawagoe city (middle Kanto Plain) at 14 JST, and the northern Kanto Plain at 16 to 18 JST, respectively. This high-temperature area appears at the head of the sea breeze front to the leeward of central Tokyo, where the daily maximum temperature is highest in Kawagoe city and the northern Kanto Plain. After the sea breeze front passes, the area where the temperature is higher than that at the circumference is distributed in the shape of a wedge. This wedge-shaped area is located to the leeward of central Tokyo where the wind from Tokyo Bay and Sagami Bay forms a convergence zone. The high-temperature area around Kawagoe city, which cannot be found on days with strong winds, is formed from the hindrance of cold air advection caused by sea breeze front penetration. On the other hand, high temperatures in the northern Kanto Plain may not be related to the penetration of sea breeze fronts, which do not reach the northern Kanto Plain on days when the daily maximum temperature is recorded. However, the temperature in the northern Kanto Plain is higher on sea breeze days than on strong southerly wind days, and this suggests that local circulation plays an important role in causing high temperatures in the northern Kanto.
著者
三上 岳彦 永田 玲奈 大和 広明 森島 済 高橋 日出男 赤坂 郁美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100193, 2017 (Released:2017-10-26)

筆者らの研究グループでは、東京首都圏におけるヒートアイランドと短時間強雨発生の関連を解明する目的で、気温・ 湿度(143地点)、気圧(49地点)の高密度観測(広域METROS)を行っている。2015年7月24日の14:00-15:00に、東京南部の世田谷区を中心に時間雨量が約50mmの短時間強雨が発生した。そこで、この日の短時間強雨について、事例解析を行った。この事例解析から、世田谷付近で増加傾向を示す短時間の局地的豪雨の要因として、降雨開始3時間前頃に高温域が形成されると、その約1時間後に熱的低気圧が発生し、さらに2時間後には、南からの海風進入による湿潤空気の流入で水蒸気量が急激に増加して豪雨となると考えられる。豪雨開始と同時に急激な気圧の上昇が起こるが、これは発達した積乱雲内部での強い下降流によるものと推察される。
著者
三上 岳彦 大和 広明 広域METROS研究会
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.317-324, 2011-04-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
10 16

This paper describes our newly developed high-resolution temperature observational system called Extended-METROS, which has been deployed in the Tokyo Metropolitan Area since 2006. Some climatological mean temperature charts using Extended-METROS data are analyzed in terms of urban climatology, and detailed urban heat island temperature patterns are clarified. Rainfall measurements were set up from August 2010 at 40 points in the Tokyo Metropolitan Area. The relationship between urban heat islands and local-scale heavy rainfall patterns in urban areas will also be analyzed based on our high-resolution meteorological observation system.
著者
大和 広明 三上 岳彦 高橋 日出男
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.325-340, 2011-04-25
参考文献数
12
被引用文献数
3 18

We analyze the influence of sea breeze on temperature distribution in the Kanto Plain (central Japan) on a day that a sea breeze front was detected (known as sea-breeze front days) using high-resolution temperature data observed by our research team.<br> The high-temperature area on sea breeze front days moves northwest from central Tokyo, and was located at Kawagoe city (middle Kanto Plain) at 14 JST, and the northern Kanto Plain at 16 to 18 JST, respectively. This high-temperature area appears at the head of the sea breeze front to the leeward of central Tokyo, where the daily maximum temperature is highest in Kawagoe city and the northern Kanto Plain. After the sea breeze front passes, the area where the temperature is higher than that at the circumference is distributed in the shape of a wedge. This wedge-shaped area is located to the leeward of central Tokyo where the wind from Tokyo Bay and Sagami Bay forms a convergence zone. The high-temperature area around Kawagoe city, which cannot be found on days with strong winds, is formed from the hindrance of cold air advection caused by sea breeze front penetration.<br> On the other hand, high temperatures in the northern Kanto Plain may not be related to the penetration of sea breeze fronts, which do not reach the northern Kanto Plain on days when the daily maximum temperature is recorded. However, the temperature in the northern Kanto Plain is higher on sea breeze days than on strong southerly wind days, and this suggests that local circulation plays an important role in causing high temperatures in the northern Kanto.
著者
大和 広明 浜田 崇 田中 博春 栗林 正俊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.197-212, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論文の目的は,長野市を対象にヒートアイランド現象と冷気湖および山風との関係について,土地利用から求めた都市化率と標高に着目して明らかにすることである.寒候期の晴天静穏夜間の100事例を対象に日没時刻を基準とした気温のコンポジット解析をした.日没後2時間半以降に気温が都市部で高く郊外で低い,明瞭なヒートアイランド現象の気温分布が見られた.日没後数時間後には冷気湖も発達し,日出前まで冷気湖の底に明瞭なヒートアイランド現象を伴う気温分布が確認された.長野市中心部では山風が吹いている時に,中立に近い都市境界層が形成されていた.山風による力学的混合により都市境界層が維持されていた可能性が考えられた.また,日没後6時間過ぎ以降は郊外から都市に向かう冷気の流れの存在が示唆され,この流れが冷気湖の底でヒートアイランド現象の強さを若干弱めるものの,ヒートアイランド現象の気温分布を維持していたと考えられた.
著者
大和 広明 森島 済 赤坂 郁美 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.74-84, 2017 (Released:2017-07-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1

関東地方で実施した高密度観測から得られた夏季の気温と気圧データに対して主成分分析を行い,これらの時空間変動にみられる特徴を明らかにした.気温場と気圧場それぞれの上位3主成分には,海陸風循環,ヒートアイランド現象,北東気流に関係した空間分布が認められ,相互の主成分間に有意な相関関係が存在する.これらの気温と気圧の関係は,いずれも相対的に気温が高い(低い)地域で気圧が低い(高い)傾向を示す.晴天日の気温と気圧の分布には明瞭な日変化が認められ,日中には海風の発達に伴い,関東平野の内陸部で相対的に高温低圧となり,日没後から夜間にかけては,ヒートアイランド現象が顕在化して東京都心から北側郊外にかけての都市部で相対的な高温低圧傾向が認められた.これらの観測事実に基づいた解析から,晴天日の気温と気圧の主要な日変化パターンに,内陸部の高温低圧に伴う海風循環とヒートアイランド現象に伴う高温低圧が認められた.
著者
大和 広明 高橋 日出男 三上 岳彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100057, 2012 (Released:2013-03-08)

筆者らの研究グループでは首都圏全体のヒートアイランド現象を空間的・時間的に高密度に観測するために,気温の観測網を展開している.この観測網を「広域METROS」と呼称している. この広域METROSのデータを使って,夏季日中に南寄りの風が吹いた日を対象に気温分布を解析したところ,首都圏の気温分布は海風の影響を強く受けていたことが明らかになった.典型的な海風前線が見られた日には,海風前線が関東平野の中央部を進行する13~15時には,海風が進入している沿岸域が低温となり,海風前線の前面で気温が高い傾向が見られた.このうち,東京の風下では特に他の地域に比べて海風前線の進入が遅く,風が弱く,気温が高かった.東京の風下に形成される高温域の中心は埼玉県川越市付近に位置していた.この時間帯には従来のAMeDASデータの解析から関東平野の高温の中心であるとされた埼玉県熊谷市付近でも周囲よりも気温が高く,午後の早い時間の内陸の高温域は,関東平野の中央部と北西部の2つの地域に分離されることが明らかになった.一方で、総観規模でやや強い南寄りの風が吹きやすい気圧配置の日の気温分布を解析したところ,海風前線が風の水平分布からはほとんど見られずに,午後の早い時間帯に川越市付近に顕著な高温域が見られずに,関東平野の北部に高温の中心が位置していた.このことから,川越市付近の高温域の形成には海風前線が関係していることが示唆された. 内陸の高温域(川越市付近と熊谷市付近)の気温が沿岸部と比較して相対的に一番高くなるのは,典型的な海風前線が見られる日であった.特に川越と沿岸部の気温が拡大する時には東京の風下で海風前線が停滞しているときであった. 内陸の高温域で気温が高くなりやすい原因として下降流の存在が考えられた.川越付近では海風前線の通過前に露点温度の顕著な現象が観測される.これは海風前線前面に存在する弱い下降流に対応していると考えられ,海風前線の進入が遅いことで川越付近では長く下降流域に存在することによって気温が高くなると考えられる.一方で,熊谷付近では海からの空気の進入が他の風向の日に比べて遅く,谷風循環の下降流が長く続くために,気温が高くなっていると考えられる.また,地上の観測データから移流量を計算したところ,高温域形成に移流の影響はないと結論づけられた.
著者
高橋 日出男 大和 広明 紺野 祥平 井手永 孝文 瀬戸 芳一 清水 昭吾
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.127, 2011

<B><U>◆はじめに</U></B>:東京など沿岸部の大都市では,海風吹走時に都市域風下側で海風前線が停滞しやすく,そこでの上昇流が強化されること,海風前線前方の地上付近には弱風域・下降流域が存在することなどが数値モデル(Yoshikado 1992, Kusaka et al. 2000, Ohashi and Kida 2002など)やパイバル観測結果の解析(Yoshikado and Kondo 1992)から指摘されている.しかし午後以降の海風前線通過後における都市域の風系鉛直構造については明確に示されていない.東京都心風下にあたる都区部北側には降水エコーや強雨の高頻度域が認められ,これを考察するためにも鉛直流に関する理解が不可欠である.本観測では,東京都心の海風風下側でドップラーソーダを用いて三次元風速成分の鉛直分布を測定し,海風前線の通過時とそれ以降における鉛直流の構造の把握を目的とした.<BR><B><U>◆観測概要と解析資料</U></B>:観測は2010年8月24, 25日の日中に戸田市戸田公園付近の荒川左岸河川敷で実施した.両日とも午後に関東平野北部や関東山地で発雷があったものの,観測場所では概ね晴天で経過した.観測項目は,ドップラーソーダ(Scintec社製MFAS)による700mまでの三次元風速成分(平均時間30分),パイバル(30分~1時間ごと),総合気象測器(Luft社製WS600)による地上1.5mの風・気温・水蒸気量・気圧(1分平均),および長短波放射(英弘精機社製MR-50,1分間隔)である.また,当日の気象条件の解析にあたり,東京都と埼玉県の大気汚染常時監視測定局(常監局)の観測値およびMTSAT可視画像を参照した.<BR><B><U>◆観測結果と考察</U></B>:観測両日とも太平洋高気圧のリッジが日本のすぐ南(30N付近)に位置しており,700hPa付近までは一般風として南~南西風が期待された.常監局の風データによると,都区部東部において,両日とも10時頃より東京湾岸から南東~南南東風が北側へ拡大し,その後に都区部西部で南~南南西風が強まった.12時には埼玉県南部(都県境付近)まで,15時には埼玉県中北部まで南風が達しており,これに対応した積雲列の北上も認められた.また,観測点では水蒸気混合比(地上)の増大が24日は12時半頃,25日は12時頃にあり,これ以降は地上から1300m程度上空(パイバル観測による)まで安定して南風が卓越していた.つまり,この頃に観測点を通過した海風前線がその後さらに内陸へ進入したと考えられる.<BR> 図は24日のドップラーソーダによる風速の南北(V)および鉛直(W)成分の時間変化(南風層の下側半分に相当)であり,海風前線の通過に対応して,上空には大きな上昇流(1m/s以上)が認められる.海風前線が埼玉県中北部まで移動したと判断される15時においても,200mより下層には弱い下降流がある一方で,上空には1m/s近い上昇流が持続的に存在している(25日も同様).海風前線が都市域を通過した後に認められた都市(都区部)風下の大きな上昇流は,風系や対流雲発生に対する都市の影響を考えるうえで興味深い現象と考えられる.今後,都心風上側あるいはより内陸側を含めた複数個所で同時観測を実施する予定である.<BR><BR>図 ドップラーソーダによる風速の南北(V)および鉛直(W)成分(24日)<BR>図のベクトルは鉛直成分を10倍に拡大している.等値線は鉛直成分の大きさを示す.
著者
栗林 正俊 富樫 均 浜田 崇 尾関 雅章 大和 広明 陸 斉 畑中 健一郎
出版者
長野県環境保全研究所
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-53, 2017 (Released:2018-03-23)

長野県環境保全研究所では,気候変動影響調査と市民への環境学習の機会の提供を兼ねた講座とし,毎年8月に長野県内の6箇所(長野,上田,飯田,松本,伊那,大町)で,セミの抜け殻調査を1回ずつ実施している。本研究では,2012~2016年の5年間のデータから,セミの分布状況や年次変化を示し,各種セミの抜け殻数と気候条件の相関関係を基に年次変化の要因を考察した。この結果,エゾゼミは標高700m以上の涼しい調査地点で確認され,ニイニイゼミは標高700m未満の暖かい調査地点で確認された。松本会場ではエゾゼミが,長野会場ではニイニイゼミが,それぞれ減少傾向にあるが,長野,上田,松本の3会場ではミンミンゼミが増加傾向にあった。この3会場全てで,ミンミンゼミの抜け殻数は5月の月平均気温と有意な正の相関があった。今後も各地点での調査を継続すると共に,定点で時期を変えて複数回の調査を行い,調査のタイミングによるセミの抜け殻の種類の違いを評価することが課題である。
著者
三上 岳彦 森島 済 日下 博幸 高橋 日出男 赤坂 郁美 平野 淳平 佐藤 英人 酒井 慎一 大和 広明
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

東京首都圏に設置した独自の気温・湿度観測網と気圧観測網のデータ等を用いて、夏季日中のヒートアイランドの時空間変動を明らかにするとともに、熱的低気圧の動態と局地的短時間強雨発生との関連およびその要因の解明を試みた。夏季の気温と気圧データに主成分分析を適用した結果、上位主成分に、海陸風循環、ヒートアイランド、北東気流に関連した空間分布が認められた。局地的短時間強雨の事例解析を行い、豪雨発生の前後で気圧の低下と上昇が起こり、海風起源の水蒸気量の増加が確認できた。領域気象モデル(WRF)による都市域での短時間強雨発生に関する数値実験を行い、都市域で夜間の降水が増えていることが明らかになった。