著者
石井 啓義 寺尾 岳
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

今回の研究では、日本全国を対象として水道水リチウムと自殺率の関連を、自殺に影響を与える可能性のある種々の要因で補正しながら検討することが目的であった。日本全国の785市と東京都の23区を合わせた808市・区の水道水を全て採取し、それらのリチウム濃度を測定した。自殺の標準化死亡比(SMR)を2010年~2014年の5年分算出しその平均値を自殺率として使用した。自殺率を従属変数とし、各市・区の水道水リチウム濃度、8地方、水道水リチウム濃度と各地方の交互作用を独立変数とし、人口による重み付けをしながら重回帰分析を行った。その結果、日本全国においても水道水リチウムは男性の自殺率の低さと有意に相関した。
著者
石井 啓義 平川 博文 寺尾 岳
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-34, 2020 (Released:2020-03-30)
参考文献数
35

元素のひとつであるリチウムは,双極性障害や治療抵抗性うつ病の治療薬として広く使用されている。最近の研究では,リチウムは自殺予防効果や認知症予防効果を有することを示唆する報告が散見され,さらにこれらの効果は臨床的に使用される治療濃度よりもはるかに低濃度でも発揮する可能性がある。今回,水道水や血中に含まれる微量なリチウムと自殺や認知症との関連について,筆者らの調査を含めて解説する。微量なリチウムのメンタルヘルスへの効果を明らかにするにはさらなる調査が必要である。
著者
石井 啓義 寺尾 岳
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

リチウムの抗自殺効果に注目して、疫学調査を行った。九州全域の118 市を対象に、 297 ヶ所において水道水中に含まれるリチウム濃度を測定し、 さまざまな要因で補正しながら、自殺率との相関を検討した。その結果、大分県、佐賀県、長崎県の 3 県において、女性の自殺率と水道水リチウム濃度の間に有意な負の相関を認めた。
著者
寺尾 岳 谷 幸夫
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.337-340, 1988-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 2

常用量のbenzodiazepine系薬剤(以下BZDと略す)を中断後, 重度の離脱症状を呈した2例を報告した. 症例1は61歳男性で, nitrazepam1 0mg/日を離脱後7日目にせん妄を呈した. 症例2は49歳女性で, nitrazepam 5mg/日とtriazolam 0.5mg/日を離脱後4日目に幻聴, 5日目に視覚性の認知障害を呈した. 常用量のBZD中断において離脱症状が生じることは少なく, さらにこのような精神病様状態が発生することは稀である. 本論文では, 6ヵ月以上の服用期間と強度の不眠を危険因子として挙げ, さらに症状発生日の予測法についても言及した. 不幸にして精神病様状態が発生した場合の処置として, diazepamの静注を勧めた. また, BZDの常用量投与の際にも中止する場合には漸減が望ましいと考え, 具体的な漸減法を示した.
著者
河野 健太郎 石井 啓義 寺尾 岳
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.74-80, 2019-08-15 (Released:2020-10-05)
参考文献数
40

19世紀,気質の概念は Kraepelin ら精神科医から提唱されていた。Kraepelin の概念を継承し,Akiskalは双極性障害と単極性うつ病が連続性を持ち,それらを包含する概念として「双極スペクトラム」を提唱した。また,双極スペクトラムに関連するTemperament Evaluation of Memphis, Pisa, Paris and San Diego-autoquestionnaire version(TEMPS-A)で同定された抑うつ,循環,発揚,焦燥,不安の5つの感情気質を示した。本稿ではTEMPS-Aの気質中心に関連する,様々な研究を紹介する。TEMPS-Aの気質とTemperament and Character Inventory(TCI)の気質の関連についての研究,気質と光の関係についての研究,fMRIやPETを用いた気質に関連する脳機能画像研究,最後に薬物反応性や自殺などふくめ,臨床への応用が期待される研究について提示したい。
著者
溝上 義則 寺尾 岳 山下 瞳 河野 寿恵 田中 悦弘
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.77-82, 2013-08-15 (Released:2014-12-26)
参考文献数
16

軽躁状態を呈する中年男性の統合失調症患者に対し,薬物療法や通常の精神療法と並行して,絵画療法を行った。描画の定量的指標として,描画時間,描画面積,毎分描画面積を測定し,精神状態との関連を検討した。精神状態については,Clinical Global Impression-Severityにてカルテ記載をもとに後方視的に評価した。その結果,軽躁状態の改善とともに,作品の描画時間が有意に減少した。絵画療法の時間を測定することで,患者の全体的な理解に役立つ可能性が示唆された。