著者
寺川 直樹 原田 省 板持 広明 谷口 文紀 林 邦彦 小林 浩 百枝 幹雄
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

世界初の前方視的研究「本邦における子宮内膜症の癌化の頻度と予防に関する疫学研究」を企画した。全国の医療施設から約2, 000名の子宮内膜症患者の登録を得て、患者データを解析した。登録患者からの癌発生は7例報告されており、患者登録および解析を継続している。分子生物学的研究としては、卵巣チョコレート嚢胞と卵巣明細胞腺癌組織から上皮細胞群を捕捉したのちに、網羅的遺伝子発現の検討を行い発癌に関与する遺伝子群を検索した。線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)-2遺伝子の卵巣癌組織での発現増強に注目して機能解析を行った。
著者
木山 徹哉 寺川 直樹
出版者
長野県立大学健康発達学部こども学科
雑誌
こども学研究 = The Journal of Child Studies (ISSN:24347272)
巻号頁・発行日
no.1, pp.3-14, 2019-03

子ども、あるいは子ども期という概念がPh. アリエス(Philippe Ariès)やN. ポストマン(Neil Postman)らによって相対化され、近代的子ども観という呼称が一般的になった。この相対性という言 説とともに、我が国においては1970年代以降のいわゆる子ども問題と相俟って、近代的子ども観の動 揺に関する戸惑いや懸念などが表明され、子ども学という学問領域に対する認知と期待も広まっている。 しかし、未だ動揺は解消されず、新たな"子ども" 及び"子ども-大人関係" を定位するには至ってい ない。 本稿では、まず、近代的子ども観の創出の意義とその後を辿りながら、子どもの意義が相対的なもの であることを改めて確認する。次に、今後の社会の在り方として我われにはどのような価値志向が選択 可能か、そしてその価値志向のもとで子どもの意義とそれに対応する教育をどのように捉え直すかにつ いて、一つの試論を述べる。
著者
河野 美江 戸田 稔子 脇田 邦夫 高橋 正国 入江 隆 紀川 純三 寺川 直樹
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-3, 2001-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

目的:10代女性の子宮頸部擦過細胞診における異常例の頻度とその背景を知ることを目的とした.結果:松江生協病院産婦人科を受診した10代女性164例に対し子宮頸部擦過細胞診を行った. クラスIIIa以上の細胞診異常例は12例 (7.3%) にみられ, 11例がクラスIIIa, 1例がクラスIIIbであった. 細胞診異常例12例中4例が妊娠例であり, 性行為感染症が7例にみられた. 追跡が可能であった10例中7例では, 7~84ヵ月の間に細胞診判定が正常化した. クラスIIIbであった1例は子宮頸部円錐切除術で高度異形成と診断された.結論:細胞診異常例が高率にみられたことから, 10代であっても子宮頸部擦過細胞診を行うことが重要であると考えられた. また, 細胞診判定に際してはsexual activityが高い例では性行為感染症を含む炎症性変化に注意が必要であることが示された.
著者
青野 敏博 東 敬次郎 苛原 稔 池上 博雅 廣田 憲二 三宅 侃 田坂 慶一 堤 博久 寺川 直樹
出版者
徳島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

TRHやLH-RHは下垂体前葉からプロラクチン(PRL)やLHの分泌を促進する. 一方PRL産生下垂体腫瘍の治療にはドーパミン(DA)の作動薬であるブロモクリプチンが繁用されており, PRL分泌を抑制するほか, 腫瘍を縮少させる効果のあることが知られている. 本研究の目的はPRL, LH分泌時における下垂体細胞内情報伝達機構について明らかにし, DAのPRL分泌抑制作用を検討する実験系としてラット下垂体前葉細胞またはPRL産生下垂体腫瘍であるGH3細胞を用いた. 実験結果をまとめると, (1)マイトトキシンは下垂体細胞内へCa^<2+>の流入を起こし, PRL分泌を促進した. (2)^<32>Pのホスファチジールイノシトール(PI)への取り込みを検討した結果, TRHはPIの代謝回転を促進した. (3)Ca^<2+>によって活性化され, PIを分解するphosphol:pase Cの作用によってジアシルグリセロール(DG), IP3から産生されPRL分泌を促進した. (4)下垂体前葉にはCキナーゼが存在し, PMAによって活性化された. PMAを細胞に添加するとLH, PRLの分泌が促進された. またTRHを作用させると細胞内のCキナーゼは細胞質から膜分画へ移行した. (5)細胞内に取り込まれた標識アラキドン酸はTRHによって放出された. (6)添加されたアラキドン酸はPRL, LHを放出した. (7)アラキドン酸の代謝産物のうちPGは影響を及ぼさなかったが, lypoxygenaseの代謝産物である5-HETEとLeukotrienB4がPRL, LHの分泌を促進した. (8)下垂体前葉細胞における上記の情報伝達系の各ステップはDAによって抑制されたことからDAは全てセカンドメッセンジャーを抑制していることが考えられた. DAの受容体を持たないGH3細胞ではDAによるPRL分泌抑制作用は認められなかった. 以上の結果より, TRH, LH-RHはDG-Cキナーゼ系, Ca^<2+>-アラキドン酸系を細胞内情報伝達系としていることを明らかにし, DAは受容体に結合後, これらの全てのセカンドメッセンジャーを抑制していると考えられる.