著者
岩渕 仁 中原 徳弥 岡本 真智子 浅野 学 小口 健一 黒川 清 山西 八郎 舘田 一博 山口 惠三
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.617-622, 2011-07-28 (Released:2011-08-26)
参考文献数
19
被引用文献数
4 2

感染症は本邦における透析患者の死因として第2位にあげられる.なかでも敗血症は直接生命を脅かすものとして最も警戒すべき感染症である.最近9年間に自施設で経験した敗血症症例を集積し解析を行った.延べ205名の患者に計465回の血液培養検査を試み,陽性率は23.7%であった.この結果73例が臨床的に敗血症と診断された.患者背景として糖尿病合併は46例,カテーテル留置ありは47例であった.菌種については球菌:桿菌の比率は約4:1であり,最も頻度の高い菌種はブドウ球菌であった.メチシリン耐性ブドウ球菌の検出頻度は増加していた.転帰については過半数の38例が経過中に死亡した.メチシリン耐性菌がそのうちの24例を占め,致死率の高さが再認識された.また多変量解析の結果,危険因子としてCRPならびに血小板数の減少が死亡リスクを高めることが判明した.
著者
石原 哲 小林 覚 前田 真一 斉藤 昭弘 兼松 稔 栗山 学 坂 義人 河田 幸道 小口 健一 小林 克寿 出口 隆 北島 和一
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.1291-1295, 1991-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

血液透析患者における膿尿, 細菌尿の実態を知る目的で, 尿路感染症の急性症状を示さない時期に尿検査を実施した結果を報告する.尿沈渣白血球数は5コ/hpf以上が59.7%, 10コ/hpf以上が43.5%, 細菌尿は104CFU/ml以上が29.8%, 105CFU/ml以上が21.0%と, いずれも高頻度であった. 膿尿, 細菌尿の頻度に有意な性差はなかった. 腎炎群, 糖尿病腎症群間にも有意差は認められなかったが, 多発性嚢胞腎が原疾患である症例では, 膿尿, 細菌尿の程度が高い傾向が認められた.1日尿量と膿尿および1日尿量と細菌尿の分布および統計学的検討より, 少なくとも1日尿量400ml以下の場合には通常の基準を用いて感染尿の決定をすることは好ましくないと考えられた.
著者
中本 佳代子 小口 健 石垣 智也
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1662, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】リハビリテーションにおける患者の転倒転落事故(以下,転倒転落)は,療法士の不注意等が原因である事例がある。その背景には療法士個人が有する要因や就労特徴があるものと考えられるが,そのような調査はこれまで散見される程度であり,また個人の就労特徴やストレス,職務満足に着目した検討は行われていない。そこで本研究では,転倒転落に関連し,療法士個人に起因する要因を,就労特徴や職務満足に着目し検討することを目的とした。【方法】療法士個人に起因する転倒転落について,2015年度の転倒転落インシデント31件(患者影響レベル0~3a),アクシデント0件(3b以上)から内容を分類した。調査対象は,当院療法士(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士)68名であり,個人の就労特徴や職務満足度を問う22項目のアンケート調査を行った。内容は,職種,年齢,役職,勤続年数,配偶関係,朝食摂取の有無,通勤時間,病院出勤時刻,睡眠時間,有給休暇取得状況,業務の課題・制約,職場ストレス,職務満足度,私生活について等である。回答は当該項目の有無,7件法(全く感じない~非常に感じる)によるリッカート方式で求めた。統計解析は各アンケート回答項目のデータ分布から,「どちらともいえない」以上を有とする二値型データ(有無)に加工し,転倒転落有群と無群の比較をカイ二乗検定にて行った。その後,転倒転落有を目的変数とし,カイ二乗検定で有意差を認めた3項目(睡眠時間がとれている,上司が個人的な相談を聞いてくれる,同僚が個人的な相談を聞いてくれる。)を説明変数としたStepwise法によるロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。【結果】2015年度転倒転落インシデントは48件あり,うち療法士に起因するものは31件であった。質問紙回収数は62(回収率91%),回答職種は,理学療法士43名,作業療法士13名,言語聴覚士6名,経験年数6.4±5.3年であった。カイ二乗検定の結果,転倒転落有群において,睡眠時間がとれている(P<.05),上司が個人的な相談を聞いてくれる(P<.05),同僚が個人的な相談をきいてくれる(P<.05)と回答する者が有意に少なかった。ロジスティック回帰分析における,転倒転落への独立関連要因は,睡眠時間がとれている,オッズ比0.14(95%CI:-3.8~-0.17)(P<.05)。個人的な相談を職場の上司は聞いてくれる,オッズ比0.09(95%CI:-4.75~-0.08)(P<.05)であった。(判別的中率76.8%)。【結論】療法士の不注意等で引き起こされた転倒転落インシデントには,一般的に考えられているような療法士の経験年数の少なさではなく,睡眠を適切量とれているか,または上司に適切に相談ができるかといった就労特徴や,職場満足に関する要因が重要である。そのため,経験年数を問わず,継続的な医療安全教育の実施と,相談がしやすい職場環境づくりが必要といえる。