著者
小木 和孝
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.88-93, 2014 (Released:2016-01-25)
参考文献数
15

故斉藤一医学博士(1910-2014)は,1935年倉敷労働科学研究所に入り,労働科学研究所にあって研究を続け,1982年に所長を退任後までにわたって,労働科学研究を先導し,支えてきた。産業現場調査をもとに労働負担に着目して,その実態と改善策について実証的研究を行った。とりわけ,高温環境における水分喪失と内部環境の調整,労働時間と交替制のあり方,技術革新下の労働生活実態にそくした健康対策について半世紀を越えて研究を続けた。労働の生理的負担とそれに伴う血液性状など内部環境の調整を睡眠時を含む生活実態に見合って調査する研究手法が基盤になっている。研究成果をもとに,これからの産業労働のあり方についての労働科学的見地から多くの提言を行い,広く応用された。アジア地域との国際協力にも積極的に取り組んだ。人を惹きつける人徳に根差した指導と洞察力により,労働科学研究の発展に大きく貢献した。
著者
小木 和孝 内村 喜之 堀野 定雄 酒井 一博
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.171-184, 1973

空港管制席作業空間について, 人間工学研究者10人と学生12人が2種の評価的リスト (米国ダンラップ社A, 日本人間工学会N) および修正的リスト (オランダのワーキンググループH), の3種の人間工学チェックリストを用いてチェックした. 研究者に比べて学生群は問題項目を見落しやすく, とくに定性的評価を行なうリストで目立った. 他方Aリストのように限定しすぎる定量的設問を主にする場合も指摘される問題点が制約された. 当管制席で重要とされた姿勢転換・脚空間の余裕とそのための視界の確保について, 対策選択式のHリストは問題意識を広げやすく, 一致度もよかった. このように人間工学チェックリストでは, 項目の網羅性のほかに, 融通性の高い修正的機能をもつことと人間工学知識をもつ多人数による使用とが肝要だと考えられる.
著者
吉川 徹 川上 憲人 小木 和孝 堤 明純 島津 美由紀 長見 まき子 島津 明人
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.127-142, 2007-07-20
参考文献数
29
被引用文献数
6

職場のメンタルヘルス向上を目的とした職場環境等の改善のためのアクションチェックリスト(Mental Health Action Check List, 以下MHACL)を開発した.ストレス対策一次予防における職場環境改善等の進め方と意義について検討した.3つのステップによりMHACLを開発した.(1)文献レビューと改善事例の収集と分類,改善フレーズの作成とMHACLのひな型作成,(2)産業現場への適用と産業保健スタッフ等を含むワークショップによる試用,(3)改善フレーズの見直しと改善領域の再構成を行って,広く職場で使える改善アクション選定チェックリストとして提案した.文献レビューにより職場環境等の改善を支援する8つの改善技術領域が整理された.全国の84事業場から延べ201件の事例の職場のストレス対策に役立った改善事例が収集できたので,これら事例から代表的な改善フレーズを抽出し,40項目からなるMHACL原案が作成された.現業職場の職員105名を対象としたMHACL利用の参加型研修会により,MHACLを用いて多様な改善提案を引き出せることが確認された.産業保健スタッフを対象としたMHACL利用のワークショップでは,MHACLの使用者とその受け手の明確化,使用手順と職域でのリスクアセスメント方法のマニュアル化,使用言語の平易化,などが必要と指摘された.これらの経験から,最終的に30項目で構成されるMHACLが作成された.それらの項目は,技術領域としてA)作業計画への参加と情報の共有,B)勤務時間と作業編成,C)円滑な作業手順,D)作業場環境,E)職場内の相互支援,F)安心できる職場の仕組みの6つの領域にまとめられた.現場ですぐ取り組めるメンタルヘルス改善アクション項目からなる職場環境改善用のチェックリストを作成した.今後チェック項目を利用した職場介入経験者との意見交換を行って,使いやすいチェックリストと利用方法を検討していく予定である.MHACLの利用によるストレス対策一次予防の推進による成果が期待される.