著者
岡山 寧子 森本 武利 木村 みさか 小松 光代
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,健康な高齢者における暑熱障害予防プログラムの開発を目的とし,高齢者の水分出納と飲水行動,生活行動の特徴から、暑熱障害予防策を検討するものである.研究期間は2年間で,平成15年度は,水分出納と身体活動量や飲水行動、他の生活習慣等を調査し,水分出納や飲水行動に影響を及ぼす因子を抽出した.同16年度は,調査結果に基づきプログラムを作成し,試行した.以下がその結果である.1.暑熱障害の既往のない健康な高齢者における真夏時の生活行動と飲水行動は,活動面では比較的ゆったりと過ごし,それに見合った食事や水分を摂取し,暑さに対応した暮らしぶりが認められた.また,暑さ対策として,飲水量は「こまめにお茶や水を摂取」する者が多く,飲むタイミングに工夫を凝らした意図的な飲水を実践する者が多かった.暑さで外出を控える者は少ないが,帽子や日傘の使用者が多く,クーラー使用者は少ない.2.暑熱障害予防プログラムの中の飲水支援では,高齢者自身のライフスタイルの中に効果的に飲水行動を組み込むことが重要であり,効果的な飲水行動の実践のためには,(1)飲水への正しい知識を持てること,(2)自分の状況から飲水必要量を正確に見積もれること.(3)飲水摂取の時間帯を工夫し,必要な水分量を摂取できること,(4)要介護高齢者は,介護者が上記を十分考慮して対応すること等をプログラムのポイントとして指導する.3.暑熱障害予防プログラムの試行として,上記1.2をふまえ,健康な高齢者向けの「暑熱障害の予防」について講演を実施すると共に,コメディカルスタッフ向けの雑誌に飲水指導のあり方を掲載した.その評価としては,まだ十分な検討はできていない.現在のところ,飲水の必要性とその方法は理解できたという評価が多いが,実際の飲水行動につながっているかは,継続的な観察が必要であり,課題である.
著者
眞鍋 えみ子 小松 光代 岡山 寧子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1_123-1_131, 2014-04-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
23

【目的】 看護学士課程卒業後,同一医療機関で勤務する看護職34名を対象に3年間の〈職務ストレッサー〉と〈心理的ストレス反応〉の変化とその関連要因を検討した。 【方法】 就業12,24,36か月目の時期に自記式質問紙調査を行い,内容は属性のほかに〈職務ストレッサー〉〈ストレス対処行動〉〈情緒的支援〉〈心理的ストレス反応〉であった。 【結果】 1年目では「看護能力不足」によるストレッサーを認知し,そのストレッサーが強いほど「個人的達成感の低下」を示した。2年目では,「上司との関係」に関するストレッサーは「個人的達成感の低下」を助長する一方で,「同僚」や「医師」に関するストレッサーは「個人的達成感の低下」を抑制していた。2年目までは,接近型問題対処行動をとるほど「脱人格化」の行動傾向は少なくなった。 【考察】 ストレッサーやストレス対処行動の質の変化や行動傾向にあわせた支援の重要性,とくに1年目は看護実践能力の向上,2年目は人間関係調整能力の習得支援の必要性が示唆された。
著者
桝本 妙子 山田 陽介 山田 実 中谷 友樹 三宅 基子 渡邊 裕也 吉田 司 横山 慶一 山縣 恵美 伊達 平和 南里 妃名子 小松 光代 吉中 康子 藤原 佳典 岡山 寧子 木村 みさか
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.390-401, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
43
被引用文献数
6

目的 地域在住自立高齢者の転倒リスクとその関連要因および性差を検討した。方法 京都府亀岡市の65歳以上の全高齢者の中で要介護 3 以上を除く18,231人に対して2011年 7~8 月に行った自記式留め置き式質問紙調査への回答者13,159人のうち(回収率72.2%),要支援・要介護認定者を除く「自立高齢者」12,054人について分析した。調査票は個別に配布し郵送で回収した。調査内容には,基本属性,鳥羽らによる転倒リスク簡易評価指標 5 項目,日常生活圏域ニーズ調査基本チェックリスト25項目,老研式活動能力指標13項目を用い,高齢者の諸機能や生活機能の低下の有無を示す 9 つの指標(①運動機能,②低栄養,③口腔機能,④閉じこもり,⑤物忘れ,⑥うつ傾向,⑦ IADL,⑧知的能動性,⑨社会的役割)で調査した。分析は,性,年齢別の転倒リスクとその関連要因および性差をカイ二乗検定とロジスティック回帰分析により把握し,9 つの評価指標を独立変数,年齢と教育年数を共変量,転倒リスクを従属変数とするロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行って各要因による転倒リスクへの独立した影響を性別ごとに分析した。結果 本調査回答者の過去 1 年間の転倒率は20.8%で,転倒リスク高群は26.6%であった。転倒リスクは,男女とも加齢とともに高くなり,女性はすべての年齢層において男性よりも高かった。また,男女とも,すべての評価指標と転倒リスクとの関連がみられ,それぞれの要因を調整した結果では,男性は運動機能,低栄養,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に,女性は運動機能,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に有意な関連がみられ,運動機能低下は男女とも最も強い要因であった。性差では,低栄養,口腔機能は男性の方に,IADL,知的能動性は女性の方に転倒リスクとの関連が強かった。結論 地域在住自立高齢者の 5 人に 1 人は過去 1 年間に転倒を経験し,4 人に 1 人は転倒リスクを有していた。転倒リスクと 9 つすべての評価指標との間に有意な関連がみられ,とくに男女とも運動機能低下が最も大きかった。また,転倒リスクに影響する要因に性差がみられ,性別を考慮した支援策が必要と示唆された。
著者
山縣 恵美 渡邊 裕也 木村 みさか 桝本 妙子 杉原 百合子 小松 光代 岡山 寧子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.369-379, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
33

目的 高齢者の閉じこもり予防および改善の支援に向けて,地域在住自立高齢者を対象とした体力測定会に参加した者の2年間の閉じこもりに関する状態の変化とその関連要因を明らかにすることを目的とした。方法 亀岡市10地区の高齢者6,696人に対し2011年7月に日常生活圏域ニーズ調査(以下,ベースライン調査)を実施し,その回答者に2012年3~4月に体力測定会を開催し1,379人が参加した。この1,379人に対し2013年9月に再度体力測定会の案内を郵送し,参加を希望した638人に質問紙調査(以下,追跡調査)を実施した。本研究の対象者は,両調査で閉じこもり関連項目に回答した522人とした。分析には,ベースライン調査より基本属性,日常生活状況,健康状態,基本チェックリスト,生活機能に関する項目を,追跡調査より閉じこもりに関する項目を用いた。閉じこもりは,基本チェックリストの2項目のうち,1項目以上該当したか否かで評価した。両調査から,1) 非閉じこもりであった者が,そのまま非閉じこもり(非閉じこもり維持群)であったか,閉じこもり項目に該当(閉じこもり移行群)したか,2) 閉じこもり項目該当者が,それを改善(閉じこもり改善群)したか,そのまま(閉じこもり継続群)であったかで対象者を分類した。各群の特性を比較後,ロジスティック回帰分析を行い,閉じこもりに関する状態の変化に関連する要因を明らかにした。結果 ベースライン調査で非閉じこもりであった375人中,非閉じこもり維持群が326人(86.9%),閉じこもり移行群が49人(13.1%)であった。また,閉じこもり項目に該当した147人中,閉じこもり改善群が85人(57.8%),閉じこもり継続群が62人(42.2%)であった。2年後に新たに閉じこもり項目に該当する要因として,社会的役割が低いこと(OR=1.481,CI=1.003-2.185)が,閉じこもり改善の要因として,治療疾患がないこと(OR=14.340,CI=1.345-152.944),知的能動性が高いこと(OR=2.643,CI=1.378-5.069)が選択された。結論 2年間の縦断研究より,非閉じこもりであっても社会的役割の乏しい高齢者への支援の必要性が,また,閉じこもり項目該当者に対しては,治療疾患,知的能動性を考慮した支援の必要性が示唆された。