著者
藤原 祥裕 伊藤 洋 神立 延久 小松 徹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.171-176, 2009-01-15 (Released:2009-04-11)
参考文献数
9

麻酔は手術などによる痛みから人類を救い, いわば人道主義のシンボルとして人類に大きく貢献したと評価されている. 近年, 有効かつ安全な鎮痛法として超音波ガイド下神経ブロックが大きな注目を集めているが, このような技術は, 従来の鎮痛法に比べ, 救急・集中治療領域でも応用可能であると考えられる. 今後世界的に, 正当な理由なく十分な鎮痛を施さないのは基本的人権の侵害であるとみなされる可能性がある. 麻酔科医は患者の痛みを取り除くため, 臨床・研究を通じて最大限の努力をする責務を負っているのみでなく, 他の専門分野の医療従事者にも有効な鎮痛手段について紹介していく必要がある.
著者
小松 徹
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.87-90, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
8

生体内には常に数千種類を超える酵素が発現しており,特定の酵素のはたらきの異常が病気の進行と関連する例が数多く報告されている.特定の疾患と関わる酵素の機能を理解することは,病気の診断,薬の開発に直結する非常に重要なものであるが,その機能は生体内の種々の要因によって動的に制御されており,いまだに,疾患との関わりが見出されていない酵素も数多く存在している.著者らは,酵素の有する活性に着目し,生体内の様々な酵素の活性を網羅的に評価する研究手法と,見出された活性の責任タンパク質を非変性電気泳動を用いた活性評価によりプロテオーム中から高精度に発見する研究手法(diced electrophoresis gel法)を組み合わせることで,生体内の様々な酵素の機能異常を活性レベルの解析から発見し,新たな創薬標的,バイオマーカーの候補タンパク質を見出す方法論(enzymeのomics = enzymomics法)の開発を進めてきた.本論文では,酵素の活性を高感度に検出する蛍光性分子を用いた解析を中心として,その方法論と展望について紹介させていただく.
著者
小松 徹也 魚住 洋一 臼井 雅宣
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1025, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】髄外胸髄腫瘍の術後予後は良好と言われているが,具体的な回復経過を詳細に報告したものは少ない。今回,髄外硬膜外の胸髄腫瘍によりTh6以下の不全対麻痺(ブラウン・セカール症候群)を呈する症例を担当し,術前から退院までリハビリを実施した。術前から術後7週間にわたってASIAスコアと歩行スピード(10m歩行・Timed Up & Go:以下TUG)の評価を行ったので報告する。【方法】症例は67歳 女性 身長161cm,54kg。既往歴として62歳時に右乳癌に対して乳房部分切除を施行されホルモン療法を当院外科外来で行っていた。現病歴は,2015年3月より歩きにくさを自覚,5月よりT字杖歩行,7月からは屋内伝い歩きとなり外出を控えるようになった。同月,当院脳神経外科を受診し8月1日脊髄造影MRIでTh2-3に髄外硬膜外腫瘍を認めたため,加療目的で8月4日入院となった。8月7日術前リハビリ開始,8月17日に再度MRIを撮影し乳癌転移を否定した後,8月27日脊髄腫瘍摘出術が施行された。腫瘍は髄膜腫(Meningotheliel meningioma,WHO Grade1)と診断された。8月31日からリハビリ再開となり9月4日より両松葉杖歩行を開始。9月8日より右ロフストランド杖歩行開始,3度の自宅外泊を実施し,10月17日に自宅退院となった。退院時の歩行能力は屋内独歩・屋外ロフストランド杖歩行であった。【結果】術前評価:意識は清明,コミュニケーション良好。両上肢に感覚・運動障害は見られず,握力は右18.6kg,左19.0kg。四肢に可動域制限を認めず。異常感覚として腹部から両下肢にかけてしびれ感とつっぱり感があり,Babinski反射は両側ともに陽性。膀胱直腸障害を認めず。基本動作は物的介助にて自立。歩行は両松葉杖にて指尖介助レベルであり連続40m程度。FIM113点(移動能力と浴槽への移譲動作のみ低下)。自宅は二階建てで夫と二人暮らし。本人のneedsは「歩けるようになって早く帰りたい」であった。ASIAスコア(運動82/100,痛覚67/112,触覚88/112)。10m歩行は27.3秒。術後1週:ASIAスコア(運動84,痛覚80,触覚97)。術後2から6週:ASIAスコア(運動86→91→93→94→95,痛覚101→109→109→110→110,触覚103→110→111→111→111)。歩行スピード(10m歩行 計測実施せず→14.3秒→11.9秒→8.87秒→9.4秒,TUG 計測実施せず→計測実施せず→16.9秒→11.6秒→12.37秒)。術後7週(退院前):ASIAスコア(運動97,痛覚111,触覚112)。歩行 スピード(10m歩行 8.9秒。TUG 11.9秒)。屋内独歩,屋外右ロフストランド杖歩行での退院となった。【結論】髄外胸髄腫瘍の症例を担当した。ASIAスコアの触覚スコアは術後7週で満点となり,痛覚スコア・運動スコアは術後7週では満点にはならなかった。歩行スピードは術前と比較し明らかな回復を認めた。本症例を通じ,髄外硬膜外胸髄腫瘍の術前および術後7週間にわたるASIAスコアと歩行スピードの具体的な回復の経過を知ることができた。