著者
岩田 淳 下西 英之 小林 正好
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.9, pp.626-637, 2017-09-01

本論文では,ネットワーク業界に20年に1度と言われる革新をもたらしたSDN,NFVにおける研究開発・実証・商用化と本領域の将来の発展の方向性について述べる.現在のインターネットは自律分散制御方式を採用し,個々のネットワーク装置に機能が埋め込まれているため,機能追加・変更が困難な上,装置の機能肥大化を招いている.またデータセンタ等の仮想化が進む環境では,頻繁に生じるサーバやストレージの構成変更に迅速に追随するネットワーク構築・運用が求められるが,自律分散制御に起因する遅延や振る舞いの予測困難性により,迅速,確実なネットワーク変更ができないという課題がある.本課題に対し,筆者らは論理集中型のプログラマブルな制御方式によるネットワークの設計・構築・運用(SDN)と最小限の標準的枠組み(OpenFlow)とによる解決策を提唱し,更にネットワーク装置の仮想化(NFV)と組み合わせ,ネットワークサービスでの高機能化と柔軟性の実証・実用化に成功した.更に,IoTなど実世界のデータをセンシング・解析・最適化する際の広域分散データ解析プラットホームへの本技術の適用へ向け,将来を展望する.
著者
小林 正好 長谷川 洋平 村瀬 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TM, テレコミュニケーションマネジメント (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.707, pp.31-36, 2005-03-04
被引用文献数
15

ネットワークを利用した情報システムの複雑化に伴い, 通信品質劣化時の原因箇所の特定が困難になっている.品質劣化からの迅速な復旧のため, 精度の高い品質劣化箇所の推定法が必要とされている.従来のエンドツーエンドのフローの品質情報集合から品質劣化箇所を推定する方式は, 品質劣化フローが重複して経由するリンクを品質劣化リンクとする推定方式で推定精度が悪い.本稿では, 現在生じている品質劣化の状況を引き起こし得る品質劣化リンクの組み合わせのうち, 最小のリンク数から成るものを品質劣化リンク集合として推定する「最小リンク数推定方式」, および, 最小リンク数推定方式のさらなる精度向上のため, ユーザフローの経路集合に応じた経路であらかじめ計測フローを流しておく「補完試験フロー方式」を提案する.シミュレーションにより, ランダムネットワークトポロジにおいて, 最小リンク数推定方式は既存方式と同じ情報を用いてfalse positive(正常リンクを品質劣化リンクと推定する誤り)をほぼゼロにし, false negative(品質劣化リンクを正常リンクとする誤り)を約1/4に削減出来ることを示す.さらに, 補完試験フロー方式を併用することにより, false negativeの誤りも, ほぼゼロに出来る事も示す.
著者
小林 正好 蔵杉 俊康 小西 弘一 村瀬 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.715, pp.103-110, 2002-03-08

現在のキャッシュサーバは動画像等のストリーミングコンテンツにも対応している.動画像コンテンツ全体をキャッシュすることは,コンテンツサイズが大きいためコスト的に難しい.このため,従来のストリーミングコンテンツ用キャッシュサーバは,コンテンツの先頭部分などを部分的に保持し,保持部分をストリーミング配信すると同時に,後続部分をオリジンサーバからプリフェッチする機能を持っている.しかし,このプリフェッチは,ストリーム配信の品質の安定を目的としており,ボトルネックを共有する一般のWebトラヒックなどの状況を考慮せず行われるため,一般のWebトラヒックとの競合を引き起こす.このため,一般のWebトラヒックのスループットを維持しようとすると,ストリーム配信本数を増やせないという問題があった.本稿では,ストリーミングコンテンツ用キャッシュサーバにおいて,ボトルネックの輻輳度に見合った適応的なプリフェッチを行うことで,ストリーミング配信品質を保ちつつ,一般のWebトラヒックのスループットを向上させる方式を提案する.また,シミュレーションによる性能評価により,若干のバッファコスト増加と引き替えに,一般のWebトラヒックのスループットを従来と同等に保ちつつ,従来の2倍のストリーミング配信本数を同一ボトルネック帯域に収容できる事を示した.
著者
小林 正好 村瀬 勉 定村 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.97, no.617, pp.37-42, 1998-03-19

本稿では, 数百万パケット/秒の処理能力をもつマルチレイヤスイッチの機能をIチップLSIで実現するためのアーキテクチャについて述べる.プロトコル処理の面では, レイヤ2とレイヤ3の冗長処理を省略するとともにフォワーディングテーブル検索処理を統合し, フォワーディングテーブル検索回数を減少させることで高速化を図った.また, ハードウェア面では高速なフォワーディングテーブル検索を実行できる専用アドレスサーチチップを開発し, パイプライン処理によってスループット向上を図った.パイプライン処理ではシーケンサを用い, 複雑な専用処理を行う論理回路マクロとともに, 汎用的な処理の論理回路マクロを組み込むことで処理の高速性と柔軟性を両立させた.