著者
岡本 佳子 坂部 裕美子 神竹 喜重子 荒又 雄介 辻 昌宏 大河内 文恵 平野 恵美子 小石 かつら
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.e25-e30, 2023 (Released:2023-09-25)
参考文献数
22

本稿は18〜20世紀ヨーロッパ歌劇場における上演傾向研究の一環として、フィールドワークと文献による興行情報の調査結果をデータ化・蓄積するにあたっての諸問題を提示する。具体的には、ポスターや年鑑からデータを抽出・統合する際、資料の選択、視覚的側面の配慮、項目や備考欄情報の取捨選択、上演言語の特定、作品の改変による紐付けが困難な場合がある。とりわけ、各資料の掲載項目自体が、地域や時代固有の価値観を色濃く反映していることから、それらの価値観の保持は統一的なフォーム作成の意図と相反することがある。様々な資料の比較から得られたこれらの知見を共有することは、データベース作成への新たな視座を提供するものであろう。
著者
小石 かつら
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

現在では演奏会の開始音楽として「演奏会用序曲」は一般的である。しかし、そもそもオペラの開始音楽であった「序曲」が、聴衆を惹き込むプロムナードとして「演奏会」のオープニングに用いられはじめ、次第に単独作品「演奏会用序曲」として作曲されるようになった経緯は、現在まで明らかにされてこなかった。また、「演奏会序曲」というジャンルが生み出されることになった社会的、文化的背景についても明らかになっていなかった。本研究では、ライプツィヒの演奏会記録を用い、演奏会用序曲の演奏状況を調査し、今日とは全く違う状況であったことを明らかにした。また、当時の出版目録を調査することによって、家庭での演奏会用序曲をはじめとするオーケストラ作品の受容も明かにし、演奏会用序曲の位置づけを試みた。これらを背景に、メンデルスゾーンの「演奏会用序曲」の中から、一番作曲時期の遅い2作品である《静かな海と楽しい航海》と《美しきメルジーネの物語》を取り上げ、詳細な成立史をまとめた。また、個々の作品の改訂に関して、楽曲分析をおこなった。このうち、《美しきメルジーネの物語》について、日本音楽学会の全国大会において発表した。2月には、研究成果をベルリン工科大学音楽学研究所にて発表すると同時に、ベルリン国立図書館音楽部門所蔵の書簡を用い、演奏会用序曲の受容について調査を行い、研究の全体を補完した。