著者
小西 敏郎
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.418-426, 2009-07-15

いま全国の多くの地域基幹病院やセンター病院などの急性期病院には手術患者が集中しつつあり, 麻酔体制や手術室の整備が必要とされている. しかし手術室数が限られたまま, 増員することの不可能な麻酔科や外科の医師, 手術室看護師の自己犠牲的な粉骨砕身の努力で, ようやく急増する手術をこなしているのが実情である. 医療安全の面からは, 手術室での安全性の確保はきわめて重要である. ミスが少なく安全に効率よく手術室を運営するには, 多職種の医療者が協力してチーム医療を推進することが重要であるが, そのためにも手術室においては麻酔科医が強力なリーダーシップを発揮することが必要であると外科医として実感している. そこでNTT東日本関東病院における手術室の運営の実際, 電子カルテやパスの普及による麻酔科医と外科医および手術室看護師とのチーム医療の展開の現況を紹介し, 安全で効率的な手術室運営を行うにあたっての麻酔科医の役割の重要性について, 外科医の立場から述べた.
著者
森兼 啓太 小西 敏郎 阿部 哲夫 阿川 千一郎 西岡 みどり 谷村 久美 野口 浩恵 小林 寛伊
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.139-144, 2000-05-18
被引用文献数
7

消化器手術後の手術部位感染 (SSI) サーベイランスを米国のNNISシステムに従って施行した.対象は当科で9ヵ月間に施行された消化器外科開腹手術症例364例とした.感染制御チームを結成し, 巡回により基礎データを収集しSSIを拾い上げ, 外科医が創を観察しCDCの基準に従ってSSIか否かを判定した. 一方でCDCのSSI防止ガイドラインのうち現状を改善することが可能と思われる対策を講じ, 介入を行いつつサーベイランスを継続した.まず, 初めの4ヵ月間の創分類III, IV (汚染, 感染創) の症例ではそれぞれ9例中5例 (56%), 10例中9例 (90%) と高率にSSI発生を認め, 全体のSSI発生率に対する大きな撹乱因子となると考え, 以下の検討から除外した.創分類I, II (清潔, 準清潔創) の症例におけるSSI発生率は全体で35/323 (10.8%) であり, 術式別に分類しても, またrisk index score別にみてもNNISのデータより約3-5倍の高率であった.しかし, 米国では後期SSI発生症例を遺漏している可能性がある. 全例に術後30日のサーベイランスを遂行できた我々のデータとCDCのデータとの単純な比較はできないと思われた.サーベイランスの施行に並行して介入を行い, 主として抗生物質の術前投与が徹底された.しかし本研究期間内にSSI発生率の低下はみられなかった. 今後も継続的にサーベイランスを施行していく必要があると考えられた.
著者
小西 敏郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.465-471, 2002-03-22
被引用文献数
1

リスク管理には,過去のインシデントのレポートを集積して検討し対策をたてること,そして医師を含めてナースや医療従事者の個人個人がリスク管理面での医療知識レベルを向上させること,また医療従事著聞のコミュニケーションをよくして情報をできるだけ共有化すること,医療の標準化を図って医療内容を効率化して無駄な検査や治療を減らすことなどが重要である.これらのいずれにもクリニカルパスは極めて有効である.さらに重要なことは,クリニカルパスから逸脱する異常を患者自身あるいは家族が早期からチェックできることもクリニカルパスの大きな利点である.これからの医療システムにおいては,患者および家族からのチェックシステムも加えることにより,医療過誤を防ぎ,発生した異常に対して早期に治療を開始することが必要である.クリニカルパスは医療費の診断群類別の定額支払い制度(DRG/PPS)への対応として注目を集めているが,リスク管理の面でも極めて有用であるので,21世紀の医療変革にクリニカルパスの導入は必須である.