著者
小門 穂
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.93-103, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
56

本報告は,代理出産を女性の身体の資源化ととらえ,母体の資源化に抗うにはどうすればよいのかという観点から,日本とフランスで公表されてきたルールなどにおける代理出産の禁止のあり方に着目し,どのように禁止してきたのか,禁止のやり方は変わってきたのか,禁止の効果はどのようなものかを明らかにすることを試みる.両国とも代理出産が容認されていないが,その禁止の方法や,外国での代理出産で生まれた子の国内での親子関係確立に対する扱いは異なる.日本ではガイドラインにより実施が認められていないという状況が続いているが,代理出産に関する紛争を抑えるという面では一定の効果を挙げているように思われる.フランスでは法律で禁止してきたが,近年のヨーロッパ人権裁判所の判決を受け,外国での代理出産で生まれた子の国内の父子関係は容認されるようになった.フランスの現状は,禁止する法律を作ることだけで抗うのは難しいことを示している.
著者
小門 穂 Minori KOKADO
出版者
神戸女学院大学女性学インスティチュート
雑誌
女性学評論 = Women's studies forum (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.30, pp.21-41, 2016-03

本論文では、フランス生命倫理法を対象とし、生殖補助医療の実施に際して、配偶子(精子・卵子)の提供者はどのような基準に従って、どのように選ばれているのかを検討する。配偶子提供の制度という「見える文化」から、フランス社会における配偶子提供者のいちづけという「見えない文化」を明らかにすることを目指す。フランスでは、産婦人科のある大学病院や公立病院に併設されているCECOS ( Centre d' Etudes de Conservation des OEufs et du Sperme : 卵子精子研究保管センター)が提供配偶子を提供者から受け入れ、保管、利用のための受け渡しを行っている。精子提供は、CECOS設立以降、CECOSの精子取り扱い基準、つづいて、1994年からは生命倫理法に基づいて設けられた配偶子の提供者に関する基準にしたがって実施される。提供者は、感染症の検査や家族歴と病歴の聴取に医学的な問題が発見されず、生殖の経験があり(実子がおり)、書面による同意を行った者である。生殖能力を損なう医療処置を受ける予定があり、後の自己の利用を目的として配偶子や生殖組織を保存する者は、生殖の経験がなくとも、保存する配偶子の一部を提供することができるようになった。SECOSの精子取り扱い基準やこれを踏襲した1994年の生命倫理法が規定していた要件ー提供者がカップルの一員であること、生殖の経験が必須であることーは、2004年と2011年の生命倫理法改正の際に提供者不足の解消を目的として緩和されてきた。提供者を、受領者からの要望はなく、議論もなされていない。提供者の要件の緩和から、提供者を確保するために、提供者の「非人間化」(南 2010)がゆるやかに進んできたことをみてとることができる。
著者
柘植 あづみ 武藤 香織 洪 賢秀 熱田 敬子 岩江 荘介 八代 嘉美 粥川 準二 小門 穂 仙波 由加里 張 チョンファン 三村 恭子 渡部 麻衣子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

医療技術の開発/応用とジェンダーの関係を検討するために日本、韓国、アメリカ等での遺伝子技術、生殖技術、再生医療研究の患者/利用者、研究者への聞き取り調査を実施し、さらにインド、中国などの情報を収集した。そこから医療技術の開発/応用にジェンダー役割が無批判に受容され、それが技術を要請する根拠になることを示した。その上で新しい医療技術の規制を考える際にジェンダーの視点の必要性を指摘した。