著者
井口 義信 尾崎 勇 橋本 勲
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-14, 2011 (Released:2017-04-12)

注意に伴う感覚皮質の反応様式の変化について、著者らの脳磁界計測の研究成果を中心にreviewした。注意レベル変化に応じて感覚入力に対する一次感覚皮質における賦活領域が変化し、聴覚皮質では音のピッチに注意するとtonotopyが明瞭化すること、また一次体性感覚皮質では、手指に注意するとsomatotopyが明瞭化することを示した。また、体性感覚に関しては、注意を向ける刺激のコントラストの違いによって二次感覚皮質の反応が増減すること、振動刺激の識別という難度の高い課題では、聴覚野が協調的に活動しうることも示した。おそらく感覚入力に関わる複雑な脳内ネットワーク間の相互信号伝達によって感覚の心象が形成されるが、中でも感覚野は実際の感覚入力を取得する場であり、その調整・加工を行う実行単位としての役割を担うので、感覚の心象表現に深く関わると思われる。
著者
尾崎 勇 神成 一哉 馬場 正之
雑誌
青森県立保健大学雑誌 = Journai of Aomori University of Health and Welfare (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-36, 2016-03

【目的】パーキンソン病患者において,発病の危険因子と考えられている農薬ばく露について調査すること。【方法】2013 年7 月から11 月の間にA 県S 地方のM総合病院の神経内科外来に通院している患者に農薬ばく露に関するアンケート調査を実施した。調査票回収後にパーキンソン病(PD 群)とパーキンソン病以外の神経疾患(Non-PD 群)の2 群に分類して解析を行った。【結果】PD 群56 名(男性14 名,女性42 名,平均年齢74.1±9.9 歳(平均±標準偏差)),Non-PD 群81 名(男性29 名,女性52 名,平均年齢64.1±16.8 歳)であった。農薬ばく露スコア(最高点が8 点)の平均値はPD 群3.2±2.6 で,Non-PD 群1.9±2.2 で,2 群間で平均値も分布の型も統計学的に有意に異なっていた。PD 群では農業従事者の比率が高く,農薬ばく露の頻度が高かった。【結論】A 県S 地方ではパーキンソン病患者に占める農業従事者の比率,農薬ばく露の頻度ともに高かったことから,農薬ばく露がパーキンソン病発病の危険因子の1 つであることが確認された。【Purpose】We conducted a questionnaire survey on exposure to agricultural chemicals and risk ofParkinson disease.【Methods 】A short form of agricultural chemicals exposure questionnaire was developed. The questionnaire was administered to all patients who visited the outpatient clinic of Neurology, M GeneralHospital in the S district of A prefecture, between July 1 and November 30, 2013. The collected questionnaires were divided into two groups based on the clinical diagnosis of the patients; Parkinsondisease (PD) group and other neurological diseases (Non-PD) group.【Results 】PD group consisted of 56 patients (14 males, 42 females; mean age: 74.1±9.9 years (mean±standard deviation)).Non-PD group included 81 patients(29 males, 52 females; mean age: 64.1±16.8 years). The mean value of agricultural chemicals exposure score (the maximum score is 8) for PD group was 3.2±2.6 and that for Non-PD group, 1.9±2.2 ; The mean value and a pattern of distribution for agricultural chemicals exposure score differed between the two groups. In PD group, the ratio of thefarmer was high compared to Non-PD group and thereby, the incidence of agricultural chemicals exposure also was high.【Conclusions】We found that, in the S district of A prefecture, the ratio of the farmer and the incidence ofagricultural chemicals exposure are high in patients with PD and confirmed that agricultural chemicalsexposure is one of the risk factors for PD.
著者
尾崎 勇 橋本 勲
出版者
Japanese Society of Clinical Neurophysiology
雑誌
臨床神経生理学 : Japanese journal of clinical neurophysiology (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.19-28, 2012-02-01

正中神経刺激による体性感覚誘発電位 (SEP) と誘発脳磁界 (SEF) の特徴についてレビューした。視床皮質線維の活動を反映するM15磁界成分と対応するP15電位, 体性感覚皮質の600 Hz高周波信号について最新の知見を述べた。一次体性感覚皮質起源の中・長潜時SEP反応が刺激頻度の相違によって変化すること, また末梢及び中枢体性感覚伝導路の機能障害のためにN20が消失あるいは不明瞭な患者においても, 中・長潜時SEP波形は長い潜時ほど振幅が大きくなる, クレッシェンドパターンで記録され、決して消失しないことを述べた。したがって、N20が消失あるいは不明瞭な場合, 低酸素虚血性脳症など重篤な脳傷害と診断する際には、適切な記録条件で得られた中・長潜時SEP反応が両側性に全て消失していることが重要であると提案した。
著者
福島 真人 尾崎 勇
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

痛覚,脳または自律神経の反応における呼吸の影響を検討するために,脳波,交感神経皮膚反応(SSR),指尖容積脈波(DPG),主観的痛みスケールを記録した。左手に呼気と吸気時にそれぞれ電気刺激を与えた。刺激強度は痛覚閾値とした。刺激強度は同一であったにも関わらず,被験者の主観的痛みスケールでは,吸気の電気刺激に比較して呼気刺激で痛みが弱いと感じていた。痛み関連脳電位の後期成分の振幅は吸気よりも呼気で小さかった。痛みの情報処理は呼吸によって動揺し,痛みは呼気時に中枢神経システムによって制御されていることが示唆された。