著者
神谷 英紀 姫野 龍仁 渡会 敦子 馬場 正之 西村 理明 田嶼 尚子 中村 二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.645-654, 2023-08-20 (Released:2023-08-30)
参考文献数
29

JDCP studyベースライン時の2型糖尿病患者5,451人の糖尿病性対称性多発神経障害(DSPN)の有病率と特徴を調査した.DSPNは糖尿病性神経障害を考える会の簡易診断基準を用いて診断し,有病率は35.8 %であった.DSPNの有意なリスク因子は,年齢(OR 1.57;95 %CI 1.42-1.73),糖尿病罹病期間(1.32;1.21-1.43),BMI(1.19;1.09-1.30),収縮期血圧(1.06;1.01-1.10),HbA1c(1.15;1.09-1.22),ビグアナイド薬の使用(1.22;1.06-1.39),インスリン療法(1.59,1.36-1.84),TC(0.98;0.96-1.00),運動療法(0.85;0.73-0.98)であった.本調査により日本人2型糖尿病患者におけるDSPNの有病率と特徴およびリスク因子が明らかとなった.
著者
馬場 正之 村上 千恵子 小川 吉司
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.497-501, 2016-12-01 (Released:2017-12-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

原因不明の突然死を来した糖尿病患者3例の神経伝導検査所見と突然死に至るまでの臨床経過を報告し, 糖尿病性神経障害が突然死の基盤となった可能性を論じる。いずれの患者も2007年~2009年に神経伝導検査によって重度~廃絶性神経障害と診断された41名中に属し, その後の足病変イベント発生の前向き調査中に突然死を来したもので, 死亡直前の血糖コントロールは安定し, 低血糖や致死的な心・脳血管障害を思わせる症状・徴候はなかった。同時期に神経障害なしあるいは軽度・中等度障害としてフォロー中の糖尿病患者189名に突然死は5年間全く出ていない。神経伝導検査による神経障害重症度の客観的評価法の有用性と, 神経伝導検査専門検査技師養成の意義についても述べた。
著者
馬場 正之
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.143-150, 2013-06-01 (Released:2015-02-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3

進行した糖尿病性多発神経障害diabetic polyneuropathy (以下DPN) は生命予後を短縮し, 患者の生活の質を著しく損なう。DPNの客観的重症度判定法確立が世界中から切実に求められているのは, それゆえである。本稿では, 個々のDPN患者における各種伝導パラメータ異常が持つ意味をもとに, DPN進行に関わるNCS異常のとらえかた, および糖尿病性神経障害重症度判定の可能性を検証し, I度: 速度系パラメータ異常のみ, II度: 腓腹神経感覚電位低下, III度: 脛骨神経M波振幅低下, IV度: 脛骨M波高度低下の4段階評価基準がDPN重症度判定に有効であることを解説した。また, それをもとに筆者が作成した重症度アルゴリズムを提示し, 臨床現場での使用法をまとめた。神経伝導検査は世界的にDPNのgolden standardとされるほど客観性に優れるが, このような重症度判定アルゴリズムの導入が糖尿病患者管理の精度向上に寄与するとともに, DPN診療現場における神経伝導検査の重要性をより明確にできると期待される。
著者
額田 均 八木橋 操六 馬場 正之 土原 豊一 根本 孝一 成瀬 桂子 中村 二郎 マルカス ミュラー 小笠原 早織 辻井 麻里 デニース マックラクラン
出版者
(財)額田医学生物学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)高血圧が糖尿病性神経障害の発症・進展に関与していることは、大規模疫学調査から証明されたが、高血圧自体が末梢神経障害を惹起するかは不明だった。今回、高血圧ラットを用いた実験において、高血圧自体が末梢神経障害を起こすことが明らかになった。また、高血圧ラットの末梢神経では、糖尿病性神経に認められたのと同様に、虚血・再灌流傷害に対して形態学的・電気生理学的に脆弱性を認める。2)糖尿病性神経障害の発症機序は解明されていない。糖尿病ラットを用いて、神経内鞘マクロファージの活性化が、その発症に関与していることが証明された。3)末梢動脈閉塞症に伴う痛み・灼熱感、血行再建術後に出現するしびれなどの感覚障害に対しては早急な治療法の確立が望まれる。HGF遺伝子の逆行性神経内導入により感覚障害の改善が認められた。本法は虚血再灌流障害に対する有効な治療法となりうると考えられた。
著者
冨山 誠彦 今 智矢 船水 章央 上野 達哉 羽賀 理恵 西嶌 春生 新井 陽 鈴木 千恵子 布村 仁一 馬場 正之
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.642-645, 2017 (Released:2017-04-30)
参考文献数
10

Istradefyllineはウエアリング・オフのあるParkinson病患者の運動症状を改善する.しかし実臨床ではistradefyllineが有効でないこともしばしばあり,どのような患者にistradefyllineが有用なのか迷うことも多い.そこでウエアリング・オフがあり,オン時の運動症状が軽度なParkinson病患者(オン時のUPDRSパートIIIスコアが15点以下)を対象にistradefylline 20mg/日の有効性をオープンラベル試験にて評価した.14例の患者が8週間の試験を終了できた.Istradefyllineの追加投与により,オン時のUPDRSパートIIIスコアが有意に低下し,オフ時間が有意に短縮した.そのうちの13例は試験終了時にParkinson病症状の改善を自覚しており,istradefyllineの内服継続を希望した.ウエアリング・オフがあり,オン時の運動症状が軽度でドパ反応性が保たれている患者でのistradefyllineの有用性が示唆された.
著者
尾崎 勇 神成 一哉 馬場 正之
雑誌
青森県立保健大学雑誌 = Journai of Aomori University of Health and Welfare (ISSN:13493272)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-36, 2016-03

【目的】パーキンソン病患者において,発病の危険因子と考えられている農薬ばく露について調査すること。【方法】2013 年7 月から11 月の間にA 県S 地方のM総合病院の神経内科外来に通院している患者に農薬ばく露に関するアンケート調査を実施した。調査票回収後にパーキンソン病(PD 群)とパーキンソン病以外の神経疾患(Non-PD 群)の2 群に分類して解析を行った。【結果】PD 群56 名(男性14 名,女性42 名,平均年齢74.1±9.9 歳(平均±標準偏差)),Non-PD 群81 名(男性29 名,女性52 名,平均年齢64.1±16.8 歳)であった。農薬ばく露スコア(最高点が8 点)の平均値はPD 群3.2±2.6 で,Non-PD 群1.9±2.2 で,2 群間で平均値も分布の型も統計学的に有意に異なっていた。PD 群では農業従事者の比率が高く,農薬ばく露の頻度が高かった。【結論】A 県S 地方ではパーキンソン病患者に占める農業従事者の比率,農薬ばく露の頻度ともに高かったことから,農薬ばく露がパーキンソン病発病の危険因子の1 つであることが確認された。【Purpose】We conducted a questionnaire survey on exposure to agricultural chemicals and risk ofParkinson disease.【Methods 】A short form of agricultural chemicals exposure questionnaire was developed. The questionnaire was administered to all patients who visited the outpatient clinic of Neurology, M GeneralHospital in the S district of A prefecture, between July 1 and November 30, 2013. The collected questionnaires were divided into two groups based on the clinical diagnosis of the patients; Parkinsondisease (PD) group and other neurological diseases (Non-PD) group.【Results 】PD group consisted of 56 patients (14 males, 42 females; mean age: 74.1±9.9 years (mean±standard deviation)).Non-PD group included 81 patients(29 males, 52 females; mean age: 64.1±16.8 years). The mean value of agricultural chemicals exposure score (the maximum score is 8) for PD group was 3.2±2.6 and that for Non-PD group, 1.9±2.2 ; The mean value and a pattern of distribution for agricultural chemicals exposure score differed between the two groups. In PD group, the ratio of thefarmer was high compared to Non-PD group and thereby, the incidence of agricultural chemicals exposure also was high.【Conclusions】We found that, in the S district of A prefecture, the ratio of the farmer and the incidence ofagricultural chemicals exposure are high in patients with PD and confirmed that agricultural chemicalsexposure is one of the risk factors for PD.