著者
森 済
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

阿蘇カルデラは、カルデラ中央を西南西-東北東方向に国土地理院の一等水準路線が貫いている。10点余りの一等水準点がカルデラ内にあり、1893年以来の水準測量データがある。カルデラ中央部を含めた上下変動を100年以上にわたって直接見ることのできる、わが国では唯一のカルデラである。また、20世紀末の1990年代から整備された国土地理院のGNSS連続観測点(電子基準点)が3点もカルデラ内に置かれており、1997年4月以降、カルデラ内の上下変動が、3点で連続的に観測できるというわが国で最も恵まれたカルデラである。1893年以来5回(他の4回は、1941年、1964年、1988年、2003年)行われている一等水準測量のデータから、100年間余の上下変動について検討した。その結果、1941年以降カルデラ内の水準点が、カルデラ外の点に対して沈降していることがわかった。1941年以降の20世紀は、長期的な沈降傾向にあり、地下深部からのマグマの供給等カルデラ噴火につながるような現象は無いと考えられる。公開されている九州中部の国土地理院GNSS連続観測点(Geonet点)の日々の座標値(F3値)を用いて、2016年熊本地震前までの、阿蘇カルデラ内の観測点の上下変動の時間変化を検討してみた。なお、熊本地震以降の変動については、地震時の変動および余効変動が顕著であり、カルデラ内の3点でも向きや量が異なり、評価が困難なので、今回は議論から除外した。その結果、1998年以降熊本地震発生前までは、阿蘇カルデラ内および九重山付近のGeonet点は、その他の周辺のGeonet 点と比較して、沈降量がおおきく、沈降傾向にあることがわかった。すなわち、阿蘇カルデラは、20世紀末以降、沈降傾向が継続している。地理院の一等水準測量とGNSSによる阿蘇カルデラの上下変動の結果から、20世紀以降2016年熊本地震前までは沈降傾向にあることがわかった。したがって、20世紀以降の阿蘇カルデラは、地下深部からの新たなマグマの供給は無く、カルデラ規模のマグマ溜りの成長も起きていない。つまり、長期的に見てカルデラ噴火の可能性はほとんど無いと言える。
著者
木股 文昭 石原 和弘 植木 貞人 内田 和也 小山 悦郎 佐藤 峰司 鈴木 敦生 高山 鐵朗 竹田 豊太郎 辻 浩 寺田 暁彦 中坊 真 浜ロ 博之 平野 舟一郎 松島 健 宮島 力雄 森 済 八木原 寛 山本 圭吾 渡辺 秀文
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報 (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.35-43, 1999-04

1998年以降, 火山活動が活発化している岩手山火山において, 火山活動に伴う地殻上下変動とその圧力源を議論する目的で, 水準路線を設置し, 1998年7, 9, 11月に精密水準測量を実施した。1998年9月3日, 水準測量実施中に, 直下でM6.1の地震が発生し, 20cmに達する断層運動を水準測量で検出した。岩手山南麓ではこの4ヶ, 月間に4cmに達する山側隆起の上下変動が観測され, その圧力源は岩手山西方に深さ3km前後と推定される。Earthquake swarm is observed around the Iwate-san Volcano, Northeast Japan since 1998. The leveling route with distance of 36 km was set up around the volcano and the precise levelings have been repeated to discuss the crustal deformation four times in July, September, September and November in 1998. When the precise levelingis doing in September 3, 1998, earthquake of M6. 1 was occurred close to the volcano. One leveling team was making leveling in the epicenter area, Re-levelings were repeated since the next day of the earthquake, and coseisimic deformations of 20 cm are detected along the leveling route. However the precursor of the vertical movements is not recognized in the leveling data made just before the earthquake. Uplift of the Iwate-san Volcano is observed and which amounts to 4 cm in the period of July to November in 1998. The pressure sources of the vertical deformations are estimated to be under the west side of the volcano with depth of 3 kim, which is the almost the same location of the pressure estimated by GPS measurements and the DInSAR (Differential Interferometric SAR).
著者
宮町 宏樹 泊 知里 八木原 寛 井口 正人 為栗 健 山本 圭吾 大倉 敬宏 安藤 隆志 尾西 恭亮 清水 洋 山下 裕亮 中道 治久 山脇 輝夫 及川 純 植木 貞人 筒井 智樹 森 済 西田 誠 平松 秀行 小枝 智幸 増田 与志郎 加藤 幸司 畠山 謙吾 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-237, 2013-03-29

2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.