著者
賈 瑞晨 佐藤 廉也 縄田 浩志 松永 光平 劉 国彬 張 文輝 山中 典和
出版者
九州大学大学院比較社会文化学府
雑誌
比較社会文化 : 九州大学大学院比較社会文化学府紀要 (ISSN:13411659)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.17-35, 2011

経済成長に伴う貨幣経済の急速な浸透によって、中国内陸部の農村における物質・社会生活は激しく変容している。こうした背景のなかで、本稿は中国・黄土高原の農村における一つの結婚式を取り上げ、その縁談成立から挙式までの詳細を記述することによって、現代中国農村における伝統と変容の一断面を明らかにし、考察の材料を提供することを目指した。結果として、貨幣経済の浸透によって結婚式は豪華かつ派手になったことにより、婿方の出費は膨大となり、借金の返済が出稼ぎ流動を促す大きな要因となっていることが明らかになると同時に、一方で嫁取り婚・夫方居住や男児偏重の傾向、さらには村の互酬的な人間関係が基層的な社会関係として持続している様相が浮かび上がった。
著者
中島 皇 竹内 典之 酒井 徹朗 山中 典和 徳地 直子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

温帯のスギと広葉樹が混交する天然林において総合的な調査を開始した。森林の動態の解明を大きな目標として、森の動きと働きを明らかにするのがこの研究の目的である。今回は特に物質の動きに注目して、今後の研究の基礎固めを行った。12年間に3回の毎木調査を行ったことにより、集水域が約8haある天然林の大まかな動きが捉えられた。小径の広葉樹ではソヨゴ、リョウブの枯死が多く、ソヨゴは常緑であるため冬の積雪の影響を大きく受けて「幹裂け」の状態を示しているものが多く見られた。流出物調査では北米で報告されている量と同程度の値が観測され、渓流水質調査では過去の観測データと比較すると硝酸濃度の上昇傾向が見られるなど、新たな知見が得られた。他方で、いろいろなイベントが森の動きに大きく影響を及ぼしており、そのイベントが生じた直後でなければ、なかなか影響を顕著に見つけられないことも事実である。この点は流出水量・流出リター量・渓流水質においても同様で、イベント時の現象を詳細に捉え、解析することが、今後の大きな課題である。毎木(成長量・枯死量)、樹木位置図、流出水量、流出リター量、渓流水質などの調査はいずれも時間と労力を必要とするもので、多くの人の力が必要である。森林という人間などよりはるかに長寿命の生物と付き合うためには、長期的な戦略と長期的なデータに裏付けられた息の長い調査・研究が今後とも必要である。