著者
山内 星子 伊藤 大幸
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.294-304, 2008

両親の夫婦関係が青年の結婚観に影響を与える過程として,連合学習のようなシンプルなメカニズムによって直接的に影響する「直接ルート」と,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的に影響する「モデリングルート」とを想定し,実証的に検討した。さらに,モデリングルートのうち,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響については,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が調整変数として機能するという仮説を立て,検証を行った。大学生213名(男性95名,女性112名,不明6名)から得られたデータに対して共分散構造分析を行った結果,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が高い群においては,親の夫婦関係が直接に青年の結婚観に影響を与え,また,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的にも影響を及ぼしていた。一方,親の夫婦関係への評価が低い群では,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響は見られず,親の夫婦関係と青年の恋愛関係が独立に青年の結婚観に影響を与えていた。これらの結果は,直接ルートが親の夫婦関係への青年の評価にかかわらず成立するのに対し,モデリングルートは評価が高いときにのみ成立することを示している。
著者
山内 星子 松本 真理子 織田 万美子 松本 寿弥 杉岡 正典 鈴木 健一
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.47-54, 2020-12-31 (Released:2021-04-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿の目的は,大学で行われた新型コロナウイルス感染症流行下の学生支援実践を報告することである。2019年度卒業式の中止を皮切りに,大学のほぼすべての活動は制限され,2020年8月現在も登校禁止の状況が続く。筆者の所属する名古屋大学学生支援センターにおいて行われた支援を,不適応を呈した学生,その家族,関係教職員を対象とした三次支援,現時点では不適応を呈していないがその可能性の高い者を対象とした二次支援,全構成員を対象とした一次支援の3つのレベルに分けて報告する。
著者
山内 星子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.287-295, 2010-09-20

本研究は,感情のデュアルプロセス理論の枠組みを用いて,母親の感情特性が青年の感情特性に影響を与えるメカニズムを検討することを目的とした。感情生起に先行する認知的評価の枠組みが母親から子へと言語的やりとりを媒介して伝達し,間接的に青年の感情特性に影響するという"認知レベルの学習"と,母親の感情特性が連合学習によって直接的に青年の感情特性に影響するという"行動レベルの学習"の2つの学習の存在を仮定した。高校生97名とその母親(計194名)から得られたペアデータに対して共分散構造分析を行ったところ,4つの感情(怒り,悲しみ,不安,恥)において"認知レベルの学習"のみが見出された。一方,"行動レベルの学習"はいずれの感情においても見出されなかった。この結果は,青年の感情特性が,連合学習のようなシンプルなメカニズムではなく,認知的評価に関する母親との言語的やりとりのような,比較的高度な認知処理をともなう過程によって形成されていることを示唆しており,不適応的な感情特性の形成に対する予防的アプローチの可能性が示唆された。