著者
入谷 誠 山嵜 勉 大野 範夫 山口 光国 内田 俊彦 筒井 廣明 黒木 良克
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-40, 1991-01-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
3

今回,我々は足位,すなわちFOOT ANGLEの変化が,骨盤の側方安定性に関与する中殿筋活動の動態と距骨下関節の内外反角度にどの様に影響をするかをX線学的及び筋電図学的に検索した。その結果,X線学的には,TOE-OUTで距骨下関節は内反し,TOE-INで距骨下関節は外反した。筋電図学的分析では,中殿筋の活動はTOE-OUTからTOE-INに向かって,明らかに増加した。さらに中殿筋の活動量が最も大きかったTOE-IN 30°でアーチサポートを挿入すると,中殿筋の活動量が明らかに低下したことから,中殿筋の活動量はFOOT ANGLEの変化のみならず,足部アーチの状態も大きく影響を及ぼしていることを示唆した。
著者
入谷 誠 山嵜 勉 大野 範夫 山口 光国 内田 俊彦 森 雄二郎 黒木 良克
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法のための運動生理 (ISSN:09127100)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.47-54, 1992

下肢障害の理学療法の目的は下肢機能の再建である。下肢の機能と下肢筋力とは切り放して考えることはできないが、我々は個々の筋力強化を行うのではなく、下肢全体の統合された機能を最大限に発揮させることにより、筋力も自然と改善され、結果的に機能をよリ早期に、また効率よく改善することができるものと考えている。したがって我々の理学療法は機能的な診方、特に下肢各関節の相互の関連を中心に診て、荷重位での機能的な訓練を中心に行っている。ここでは主として正中位感覚獲得法、テーピング、足底挿板(Dynamic Shoe Insole)について紹介した。
著者
久保 祐子 山口 光国 大野 範夫 福井 勉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.118-118, 2003

【はじめに】我々は、身体を上半身と下半身とに分けた各々の質量中心点より身体重心を求める「身体重心点の視覚的評価」を考案し、臨床場面で姿勢や動作を観察する際に利用している。第36、37回日本理学療法士学術大会において、この評価をもとに歩行時の上半身の動きについて調査し、上半身質量中心点の動きが歩行時の身体重心の移動や調節に関係していると考えられた。今回は、これまでに調査した上半身の回旋運動と左右座標における上半身質量中心点の動きとの関係を調査し、さらに検討した。【方法】対象は健常者10名(男性5名、女性5名)、平均年齢25.7歳であった。動きの観察には三次元動作解析装置VICON370(oxfordmetrics社製)を用い、被験者の身体に13標点(左右肩峰、大転子、外果、第2、7、11胸椎棘突起より左右へ5cmの位置、第7胸椎棘突起)を付け、自由に歩行したところを観察及び計測した。歩行中の上半身回旋運動は、第7胸椎レベルに対する第2、第11胸椎レベルの回旋角度変化から、その回旋方向について、また歩行中の上半身質量中心点の動きとして、第7胸椎の左右座標における移動方向と速度及び加速度変化を調査した。【結果】全被験者において、上半身の回旋運動は第7胸椎の上部と下部で反対方向へ回旋し、踵接地から反対側踵接地までは、立脚側において上部は後から前、下部は前から後へ回旋していた。左右座標における第7胸椎の移動は、踵接地から立脚中期にかけて立脚側へ移動し、立脚中期に最大となり、その後、反対側へ移動していた。これは各部位においても同様の傾向を示した。上半身質量中心点における速度及び加速度は踵接地時にその方向が替わり、踵接地時には、次の支持基底面側への変化を示していた。【考察】今回の結果から、上半身質量中心点の存在する第7胸椎を支点として上半身の回旋運動が認められ、これまでの報告と同様に、効率の良い重心移動に関係していると考えられる。また、上半身質量中心点の左右座標における移動に関しては、他の部位における動きと同様であることから、これらは支持基底面上に身体重心を移動させるための変化として捉えられる。しかし、上半身質量中心点の速度及び加速度変化に着目すると、踵接地時には次の支持基底面側への力を受けており、上半身では、すでに反対側への対応が開始されているものと推察される。これまでの上半身質量中心点の観察は、身体運動に伴う受動的な変化として捉えられていたが、今回の調査から、単に受動的な変化だけでなく、連続した運動における能動的な身体調節が行われている可能性が示唆された。 今後このような上半身質量中心点の特徴を踏まえ、下半身の動きを調査に加え、歩行時における身体重心位置の調節について更に検討する必要があると考える。