著者
山田 峰彦 柿崎 藤泰 渋谷 まさと 中山 秀章 廿楽 裕 田中 一正 鈴木 一 本間 生夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.646-652, 1996-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

呼吸筋ストレッチ体操 (RMSG) プログラムを作成し, 肺機能, 運動能力, 呼吸困難感, 生活の質 (QOL) に与える効果について4週間のトレーニングの前後で検討した. 13名の慢性閉塞性肺疾患患者 (平均FEV1: 1.24L) を対象とし, 4週間にわたりRMSGを1日3回実施した. 12名が検討終了した. FRC (前4.19±1.27, 後3.88±1.03L), TLC (前5.98±1.35, 後5.66±1.20L), RV (前3.29±1.16, 後2.89±0.89L), 残気率 (前53.9±11.2, 後50.6±9.74%) はそれぞれ有意 (p<0.01) に低下した. 6分間歩行距離 (6MD) は平均43±30m (+15%, p<0.01) 延長した. 6MD終了時の呼吸困難感 (150mm VAS) は (前65.1±40.8, 後36.1±36.8mm) と有意 (p<0.05) に低下した. QOLは Guyatt らの The Chronic Respiratory Disease Questionnaire により評価し, 有意な改善が認められた. RMSGは呼吸リハビリテーションとして有用性があると考えられた.
著者
金子 雅明 岡崎 倫江 上條 史子 上田 泰久 柿崎 藤泰 桜庭 景植
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.27-31, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2

〔目的〕足部・足関節アライメントに着目しACL損傷の危険肢位とされる膝関節軽度屈曲・外反および着地直前および直後の下肢筋群筋活動との関係を明確にし,予防や再建術後プログラムの指導に役立つ指標を示すことを目的とした。〔対象〕健常成人男性27名を対象とした。〔方法〕左片脚着地後の最大膝関節屈曲角と外反角,着地直前直後の筋活動,下肢アライメント評価として,脛骨捻転角,thigh foot angle,leg-heel angle,navicular drop testを計測した。〔結果〕navicular drop testの値が小さい場合,左片脚着地後の最大膝関節外反角が大きくなるとともに着地直前直後の半腱様筋の筋活動が大きくなった。〔結語〕navicular drop testの値が小さいことは,ACL損傷の危険肢位である膝関節外反を生じる可能性が高い選手を把握する指標になることが示唆された。
著者
川崎 卓也 坂井 泰 柿崎 藤泰 竹澤 美穂
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.DbPI1348, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 横隔膜は胸腔と腹腔を隔てる膜状の横紋筋であり,呼吸運動の主動作筋としての機能と,下部体幹の安定化に関与するという二重作用を有する.付着部位が胸骨部,肋骨部,腰椎部からなるドーム状の形状をしており,その走行から重力の影響を受けやすい筋肉であると考えられる.その為,姿勢変化に伴って横隔膜自体の形状も変化し,呼吸時には特異的な運動が生じてくると考えられる.臨床上,体幹機能を評価する際に,呼吸運動や下部体幹の安定性に関与している横隔膜の動きを体表から評価する事も多い.今後の横隔膜機能評価法を確立するため,本研究では姿勢変化に伴う呼吸時の横隔膜運動の質的な検証を行った.【方法】 対象は健常成人男性10名(平均年齢±標準偏差26.6±4.5歳)とした.測定肢位は背臥位と座位の2通りとした.背臥位はベッド上での解剖学的肢位とし,座位は股関節,膝関節90°屈曲位の姿勢となるように座面高を調整した背もたれ座位とした.その際,両上肢は乳頭レベルの高位で腕を組んだ姿勢とした.測定機器は超音波診断装置(東芝メディオ製および日立メディコ製)を使用した.測定項目として,横隔膜筋厚はBモード法(周波数:7.5MHz)を使用し,横隔膜変位量はMモード法(周波数:3.5MHz)にて測定した.測定部位として,横隔膜筋厚は,右中腋窩線上で,第7肋間から第9肋間で,横隔膜が最も明瞭に描出される部位とした.横隔膜変位量に関しては,右鎖骨中線と前腋窩線との中点で,肋骨弓の下縁より横隔膜後方部の変位量を計測した.呼吸パターンは安静呼吸と努力性最大吸気とした.そして安静呼気時の横隔膜の状態を基準とし,安静吸気,努力性最大吸気の横隔膜筋厚,横隔膜変位量を測定した.また,テープメジャーにて剣状突起部での胸郭周囲径を測定した.測定はそれぞれ3回ずつ行い,その平均値を用いた.統計解析は姿勢変化を要因とした一元配置分散分析を行った.横隔膜筋厚,横隔膜変位量,胸郭周囲径についてPearsonの積率相関係数を算出し,有意水準は5%未満とした.なお,予備実験での検者内信頼性ICC(1,1)は,横隔膜筋厚で0.87~0.99,横隔膜変位量で0.47~0.97であった.【説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿い,対象者には研究内容に関して十分な説明の上,同意の得られた者を対象として実施した.【結果】 安静呼気,安静吸気,努力性最大吸気の横隔膜筋厚は背臥位で1.84±0.29mm,1.97±0.30mm,3.00±0.76mm,座位で1.97±0.36mm,2.58±0.42mm,3.40±0.83mmであった.また,安静呼気を基準とした安静吸気での横隔膜変位量と,努力性最大吸気での横隔膜変位量は背臥位で17.26±7.74mm,52.47±13.00mm,座位で12.10±3.24mm,34.78±10.10mmであった.胸郭周囲径の変化量では安静呼気を基準に,安静吸気と努力性最大吸気は背臥位で0.80±0.59mm,3.57±0.72mm,座位で1.03±0.49mm,3.65±0.84mmであった.姿勢変化を要因とした一元配置分散分析の結果,安静吸気時の横隔膜筋厚と,努力性最大吸気時の横隔膜変位量に有意差を認めた(p=0.001,p=0.003).背臥位,座位ともに横隔膜筋厚,横隔膜変位量,胸郭周囲径との間に相関関係は認められなかった.【考察】 本研究結果から,背臥位では座位と比較し横隔膜の変位量が増大する傾向が示された.背臥位では努力性最大吸気時の横隔膜変位量が有意に大きい一方で,座位では横隔膜は重力によって吸気時に尾側へ変位しやすいはずであるが,背臥位と比較し変位量は少なかった.これは背臥位では腹部内容物が頭側へ移動する際に生じる圧力による影響が大きいと考えられる.座位では背臥位と比較し横隔膜筋厚と胸郭周囲径が増大する傾向が示された.これは横隔膜変位量減少の代償とも考えられるが定かではない.今後,肺機能検査を含めた検討を行っていく必要があると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 横隔膜機能評価法を確立するために,背臥位と座位における横隔膜筋厚と横隔膜変位量の関連性について検討を行った.様々な因子を含む体幹機能を漠然と定量化することは不可能であるが,呼吸運動と下部体幹の安定化の二重作用を有する横隔膜の機能評価法が確立できるならば,体幹機能評価の一つとして利用できるのではないかと考える.
著者
江戸 優裕 柿崎 藤泰 山本 澄子 角本 貴彦 石田 行知
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.173-176, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

〔目的〕体幹の回旋運動に伴って副次的に生じる胸郭の前後・左右への並進の運動特性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は健常若年者13名とした.光学式三次元動作解析システムを用いて立位での身体の回旋動作を計測し,骨盤に対する胸郭の回旋角度と前後・左右への偏位距離を分析した.〔結果〕体幹の回旋には前方および回旋と反対側への胸郭の並進が伴っていた.また,回旋に伴う前方並進が大きければ対側並進が小さく,前方並進が小さければ対側並進が大きかった.〔結語〕体幹の回旋に伴う胸郭の前方並進と回旋と反対側への並進は補完的な関係にあることが示唆された.
著者
本間 友貴 柿崎 藤泰 石塚 達也 西田 直弥 茂原 亜由美 平山 哲郎 泉崎 雅彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0561, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに/目的】我々は腰部骨盤帯の機能評価の一つとして筋の収縮性左右差を重要視し,理学療法に役立てている。そのなかでも腰方形筋(QL)の収縮性は特に左側において低下を認めることが多い。またQLが付着する第12肋骨(12rib)位置を評価すると,右側に比べて左側が水平面上で外方に位置している例が多い。共通して観察されるこの左右差から,QLの収縮性と12rib位置は関係があると推測される。そこで今回は,QLの収縮性に左右差が生じるメカニズムを明らかにするため,骨盤挙上運動におけるQLや12ribの位置変化,その他の下部体幹筋の左右を比較したところ,興味ある知見が得られたのでここに報告する。【対象と方法】対象は健常成人男性12名とした(平均年齢23.5±2.9歳)。課題動作は腹臥位での骨盤挙上運動(等尺性収縮)とし,大腿遠位部に装着した骨盤下制ベルトを介して体重の20%の重さで牽引した。計測項目は12ribとQL,脊柱起立筋群(ES),広背筋(LD),外腹斜筋(EOA)とし,超音波画像診断装置(EUB-8500,日立メディコ社)を用いて計測した。12ribとLDの測定位置は,上後腸骨棘を通過する腰椎長軸に並行な線と12ribの交点とした。QL,ESは第3腰椎レベルとし,EOAは同レベルの側腹部とした。得られた画像から画像解析ソフトImage J(米国国立研究所)を用いて,安静時12rib位置と各筋の断面積および筋厚,また挙上時12rib内方移動率と各筋の増加率を算出した。左右各3回におけるそれぞれの平均値を用いた。統計学的解析は12rib位置と各筋の左右比較をそれぞれ対応のあるt検定を用い,左右の12rib内方移動率と各筋における増加率の関係はPearsonの積率相関係数を用いて分析した。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】安静時12rib位置は右側が内方に位置し(p<0.05),挙上時12rib内方移動率は右側が大きかった(p<0.01)。QL,LD,EOAの安静時断面積および筋厚,挙上時増加率は共に右側が大きく(p<0.05),ESは共に左側が大きかった(p<0.01)。右側の12rib内方移動率とQL,LDの間には正の相関が示された(r=0.68,0.83)。また左側の12rib内方移動率とESの間には負の相関が示された(r=-0.68)。【結論】本研究結果より,骨盤挙上運動におけるQLやLD,EOAの収縮性の優位性は右側に見られた。また右側QLの収縮性は12ribの内方移動と関係していた。解剖学的にLDやEOAは12ribを内方移動させる役割があるとされる。右側に見られるこれらの筋群が12ribを内方移動させ,QLの収縮性を高めたものと考えられる。一方,左側はESが強く運動関与していた。ESは12ribの内方移動を阻害し,QLの選択的収縮を困難にしていることが考えられ,代償的なものと捉えている。今回,QLの収縮性に関与する12ribの位置変化や下部体幹筋の収縮性の左右差が認められた。この左右差は体幹機能を評価する上で重要な基礎データとなり得ると考えられる。
著者
川﨑 智子 平山 哲郎 多米 一矢 西田 直弥 小関 泰一 藤原 務 稲垣 郁哉 小関 博久 石田 行知 柿崎 藤泰
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0994, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】頚椎は胸郭上に位置しており,頚椎肢位や運動は胸郭のコンディションに依存する。特に胸郭は,前額面において左側方に偏位している割合が多いとの石塚ら2011)の報告があり,その要因から考えても頚椎肢位や運動に影響を及ぼすことが十分予測される。日常の臨床のなかで,胸郭の定型的な形状の定着により,頚椎肢位や運動のバリエーションの低下を引き起こす現象も多く観察している。そこで本研究では,頚椎側屈運動における水平面上の胸郭形状変化と左右座圧分布を観察するため,3次元動作解析装置と床反力計を用いて胸郭形状と頚椎運動の左右特性を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,整形外科的疾患の既往がない健常成人男性10名(平均年齢27.7±3.6歳)とした。頚椎側屈運動における上下部胸郭前後径変化を観察するため,3次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。赤外線反射マーカー貼付位置は,頭部マーカーを前後左右の計4点,上下部胸郭マーカーをそれぞれ左右第3胸肋関節の中点と剣状突起(A点),A点を背面に投影した棘突起上の点(B点),A点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,各3点)の計16点とした。また,同時に座圧分布を床反力計(Zebris社製)を用いて計測した。測定肢位は上肢をscapular plane上で腋窩レベルまで挙上した安静座位とし,上肢の影響を最小限に,また肩甲帯や体幹による代償が生じないよう考慮した。測定課題は安静呼気位における頚椎最大右側屈,頚椎最大左側屈の2条件とした。メトロノームに合わせて3秒間で最終域に達するよう指示し,実施前に十分な練習を行った。得られた標点の位置データから上部胸郭前後径をB-C点間,下部胸郭前後径をA-C点間の距離としてそれぞれ算出した。また,左右座圧分布は得られた床反力データからそれぞれ相対値を算出した。統計処理は安静時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右比較,頚椎右側屈と左側屈時における上下部胸郭前後径と座圧分布の左右差の比較に対応のあるt検定を用いて検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS18J(SPSS社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。【結果】安静時,頚椎右側屈,左側屈において,上部胸郭前後径と座圧分布の左右における変化に一様の傾向が示された。上部胸郭前後径と座圧分布は,安静時において全例で右側と比較して左側が有意に大きかった(p<0.01,p<0.01)。また,その差は頚椎右側屈時において有意に減少し,左側屈時においては有意に増加した(p<0.01,p<0.01)。しかし,下部胸郭前後径は,安静時において全例で左側と比較して右側が有意に大きかったものの(p<0.05),頚椎側屈時においては有意差がみられなかった。なお,頚椎最大側屈角度には左右で有意な差がみられなかった。【考察】本研究の検討から,全例において胸郭は左側方偏位していることが安静時座圧分布より観察され,石塚ら2011)の報告と同様の特徴が示された。また,胸郭形状においても臨床で観察される定型的な非対称性がみられた。この特徴が定着した状態で頚椎側屈運動を行うと,頭部質量の側方移動にともない,右側屈時には上半身質量中心の正中化が生じ,左側屈時には左側方偏位の増大が生じることがわかった。また,上半身質量中心の左側方偏位は上部胸郭形状の非対称性を増加させるものと考えられる。これらのことから,上部胸郭の定型的な形状や側方偏位の定着は,頚椎肢位や運動の多様性に影響を及ぼすことが考えられる。また,その結果として生じる頚椎運動の左右特性にともない,上部胸郭形状に一様の変化をもたらすことが示唆された。上部胸郭の可動性低下や上半身重心のコントロール機能低下は,頚椎側屈運動の制限因子となることが考えられ,疼痛やメカニカルストレスの原因となることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の検討から,頚椎側屈運動における上部胸郭形状と座圧の変化には左右特性が存在することが示された。これは健常人においてもみられる特徴であり,ヒトに共通する形態や運動特性が存在することが考えられる。これらの強調や逆転は,整形外科疾患における病態や機能低下の一要因となることが考えられ,頚椎疾患をはじめとするあらゆる運動器疾患に対する理学療法に応用できるものと考えられる。
著者
正保 哲 柿崎 藤泰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.689-692, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
11

〔目的〕高強度レジスタンストレーニング前後の循環動態を把握するために,高強度の運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性の変化を明らかにすることとした.〔対象〕運動習慣の無い健常男性11名とした.〔方法〕臥位下肢伸展挙上にて最大随意筋力の80%の負荷で10回実施する運動課題を設定し,運動前後の循環動態を分析し,運動前後の一回拍出量,末梢血管抵抗,圧受容器反射感受性を比較検討した.〔結果〕収縮期血圧とLF/HFに運動後の有意な低下を,圧受容体反射感受性に有意な上昇が認められた.全末梢血管抵抗には,運動後1~2分での有意な低下がみられた.〔結語〕今後は,TPRの低下による末梢血管の弛緩作用と循環血液量の増加が認められ,交感神経活動亢進が持続しない運動負荷強度の設定が必要である.
著者
柿崎 藤泰 根本 伸洋 角本 貴彦 山﨑 敦 仲保 徹 福井 勉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0312, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】体幹の運動機能を評価する過程で、骨盤との運動連鎖に注目した評価は重要であり、臨床でも良く行われる評価であると考える。しかし、体幹機能の評価で、肋骨の分節的な評価や、他の分節との運動連鎖を観察する一般的な評価はあまりにも少ない。呼吸器疾患をはじめ、他の運動器疾患でもより効果的な理学療法治療を展開するうえで、体幹の運動機能を障害するファクターとしてなりうる胸郭運動の病態把握は重要であると考えている。今回我々は、体幹の複合動作である回旋運動に着目し、胸郭の歪みを形成する肋骨の動きを検討したので報告する。【方法】対象は特に整形外科的疾患をもたない健常成人10名(男性9名、女性1名)で、平均年齢は25.2±3.9歳であった。 計測はzebris社製の CMS20S Measuring system を用いた。マーカーポインターにより測定した部位は、両側肩峰部、両側上前腸骨棘、胸骨柄、剣状突起下端部、第1、3、7、12胸椎棘突起部の各部分であった。各部位の測定では、部分の凹凸に対し、最も陥没している部位、または最も突出している頂点部分にポイントするよう注意を払った。被験者には両手を頭の後に組んだ状態で、40cmの椅子に座ってもらった。静止座位と体幹回旋位で2回の測定が行われた。体幹回旋角度の規定は特に設定せず、骨盤中間位にて、上半身のみの回旋運動で、無理なく運動が遂行できるところまでとし、被験者の任意の角度で測定した。肋骨の動きは、胸骨の長軸を通る直線と第1から第3胸椎、第3から第7胸椎、第7から第12胸椎の各々を結ぶ直線とを前額面上で投影させ、その2直線の交差する角度で判定した。【結果】胸骨長軸直線と各々の胸椎直線との間に、共通した関係はみられなかった。しかし、胸骨長軸直線と第3-7胸椎直線とを投影する角度が、安静座位で2度未満(平行状態に近い)のものが5例、安静座位の時点ですでに4度以上の角度で交差しているものが5例いた。4度以上の5例では、安静時に比べ、回旋位での2直線の角度が全例で減少した。また、対照的に2度未満の5例では、安静時に比べ回旋位での2直線の角度が全例で増加した。そして、2度未満の5例の任意の平均回旋角は4度以上の5例に比較し、より大きな値を示した。【考察】今回の検討にて、胸骨長軸直線と胸椎の各文節との間には明確な関係はみられなかったが、胸骨長軸直線と第3-7胸椎直線との正中化が得られている場合、胸郭形態を無理なく歪ませることのできる機能を有しており、そのことは体幹の回旋運動に有利な条件となることが示唆された。理由として、肋間筋の体幹の回旋作用を指摘する報告もあり、予め胸郭形状に変化が生じている場合、肋間筋の長さにも影響を及ぼし、回旋動作障害に起因する可能性もあること、また第3-7胸椎の中間的役割としての機能が低下することなどが考えられる。
著者
茂原 亜由美 本間 友貴 平山 哲郎 石田 行知 柿崎 藤泰 泉﨑 雅彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.467-472, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
37

〔目的〕努力呼気における広背筋下部線維筋厚の左右非対称性の有無と,骨盤側方挙上角度,呼吸機能との関連性を検討した.〔対象と方法〕若年健常成人男性20名を対象とし,安静呼気位と最大呼気位での左右広背筋下部線維筋厚,骨盤側方挙上角度を測定,また,呼吸機能検査を実施した.〔結果〕安静呼気位において広背筋下部線維筋厚は右側が厚く,筋厚左右比率と%ICの間に負の相関を認めた.最大呼気位には左側広背筋下部線維筋厚が増大した.最大呼気位での筋厚左右比率と骨盤側方挙上角度,%PE maxの間に負の相関を認めた.〔結語〕左右の広背筋下部線維筋厚は,骨盤の前額面上での水平化および%IC,%PE maxとの間に関連性があることが示唆された.
著者
正保 哲 柿崎 藤泰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.881-884, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
17
被引用文献数
7 6

〔目的〕胸郭拡張差と胸郭の部位別体積変化との関連性を検討し,部位の違いによる胸郭拡張差1 cm当たりの体積変化を示すことを目的とした.〔対象〕対象は若年男性12名とした.〔方法〕三次元動作解析装置による体表に貼付したマーカの変化量から算出される胸郭拡張差と胸郭体積変化を計測した.胸郭拡張差の測定部位は,第3肋骨と胸骨剣状突起および第10肋骨の高さとし,胸郭体積変化は胸骨剣状突起より上部を上部胸郭,下部を下部胸郭とした.〔結果〕胸郭拡張差の各高さと部分的体積変化には,高い正の相関関係が認められた.〔結語〕胸郭拡張差と部分的体積変化の間には高い相関があり,胸郭拡張差1 cm当たりの換気量は,臨床において胸郭可動性から換気量を推察する上で呼吸理学療法の評価法の一助となると思われる.
著者
正保 哲 柿崎 藤泰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.499-502, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
16
被引用文献数
4 3

〔目的〕中間座位と後傾座位において胸郭拡張差と上下胸郭体積変化について検討することを目的とした.〔対象〕若年男性12名とした.〔方法〕三次元動作解析装置を用い胸郭拡張差と胸郭体積変化を算出した.胸郭拡張差の測定は,第3肋骨と第10肋骨の高さとし,胸郭体積変化は胸骨剣状突起より上部を上部胸郭,下部を下部胸郭とした.〔結果〕上下部胸郭の体積変化は,中間座位で上部胸郭が下部胸郭に対して有意に大きく,後傾座位で上部胸郭,下部胸郭に対して有意な減少を示した.〔結語〕後傾座位では上部胸郭の体積変化が大きく減少し,この体積減少が肺活量および最大吸気量低下の要因になることが示唆された.
著者
江戸 優裕 柿崎 藤泰 山本 澄子 角本 貴彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2115, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 体幹は身体質量の50%以上を占め(松井1956)大きな慣性を有することから、その運動が動作に与える影響は小さくない。それを裏付けるように、体幹の特異的な運動が腰痛や下肢の整形外科的疾患に結び付くことや、動作の効率性を損ねる要因になり得るという主張は散見される。 体幹運動の中でも特に回旋に関する報告は多く、古くから様々な知見が得られている。しかし、それらのほとんどは三次元的に生じる体幹運動から回旋角度のみを抽出して分析したものであり、回旋に伴う副次的な運動を含めて分析した研究は少ない。臨床的には体幹の回旋動作に側屈等が伴ってくることで、あたかも骨盤に対して胸郭が前後左右に並進してくるような動きを呈することが多い。また、物理学的にも剛体の運動は回転と並進で表わされるため、体幹運動についても回旋のみでなく、並進を加えて分析することによって、より本質的な動態を把握できるものと考える。 そこで、本研究では体幹の回旋に伴って生じる骨盤に対する胸郭の並進運動を計測し、若干の知見を得たので報告する。【方法】 対象は健常成人12名(男性8名・女性4名、平均年齢25.8±4.1歳)とした。 計測課題は静止立位と、立位での身体回旋動作とした。回旋については左右交互に4回ずつ、一定速度で無理のない範囲で行った。計測には三次元動作解析装置VICON-MX(VICON PEAK社製)を使用し、両側のASIS・PSIS・烏口突起、そして第1胸椎棘突起の計7点に貼付した赤外線反射標点の三次元位置座標を計測した。得られた標点の位置データから、骨盤に対する胸郭の相対的な回旋角度と、左右・前後への並進量を算出した。尚、並進については骨盤の局所座標系(両ASISの中点と両PSISの中点を結ぶ線の中点を原点とする)に胸郭中心(両烏口突起の中点とT1を結ぶ線の中点)を投影させて算出した。 そして、回旋方向別にXを回旋角度[°]・Yを並進量[mm]とする散布図を求め、更に最小二乗法により一次方程式に近似した。得られた直線の傾きを、回旋に伴う並進の割合を示す並進率(並進量/回旋角度)として分析に使用した。 統計学的分析における検定方法については結果に記した。尚、有意水準は全て5%とした。【説明と同意】 対象者には研究の主旨を口頭で説明し、参加に同意を得た。【結果】・体幹の回旋に伴って、回旋とは反対方向への胸郭の並進が生じた(側方並進率-0.58±0.44)。また、回旋に伴い前方への胸郭の並進が生じた(前方偏位率0.42±0.31)。これらの並進率は、例えば10度の体幹右回旋に約6mmの胸郭左方並進と4mmの前方並進が伴うことを意味する値である。・回旋動作における側方並進率と前方並進率の関係において、ピアソンの相関係数を求めた結果、有意な正の相関が認められた(p<0.05・r=0.46)。・静止立位での体幹肢位(回旋側及び側方偏位側)により分類した右回旋動作と左回旋動作における並進率の比較について、対応のあるt検定を用いたところ、前方・側方共に有意な差は認められなかった。【考察】 体幹の回旋動作は純粋な軸回旋運動ではなく、回旋とは反対方向及び前方への胸郭の並進が伴う運動であることを確認した。 また、前方並進と側方並進は相関関係にあり、互いに補完的に生じていることが示唆された。つまり、回旋時に対側並進が大きければ前方並進は小さく、逆に前方並進が大きければ対側並進は小さいという関係にあることが分かった。このことは、臨床において対側並進と前方並進のどちらか一方の動きに対して介入を加えることで、他方の動きをコントロールできる可能性があることを示唆していると考える。こうしたアプローチの妥当性に関しては、今回の分析に含めていない骨盤・胸郭の傾斜等が結果への交絡となっている可能性もあるため、更なる検討が必要である。 立位時の体幹肢位と回旋動作時の並進率については、今回は一定の関係を認めなかったが、建内ら(2010)は立位姿勢と体幹回旋可動域には関連があることを報告している。このことから、立位時の体幹肢位は動作時の回旋量の指標にはなり得るが、回旋に伴う胸郭の並進を反映するものではないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は、臨床的にも研究的にも回旋角度のみを指標とされる場合が多いが、実際には前後左右への並進を伴う三次元運動である。そして、副次的に生じる前方並進と側方並進の間に一定の関係が認められたことは、体幹運動の評価にとって有益な情報であると考える。
著者
平山 哲郎 本間 友貴 茂原 亜由美 柿崎 藤泰 泉﨑 雅彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.513-518, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
26
被引用文献数
3

〔目的〕水平面上の胸郭形状を3次元画像解析装置で測定し,胸郭形状の左右非対称性の程度が胸郭可動性,呼吸機能に与える影響について検討した.〔対象と方法〕対象は健常成人男性20名とした.安静呼気位における胸郭水平断面図を作成し,断面積比を左右で比較検討した.また,胸郭断面積左右比と胸郭可動性,呼吸機能の関係について検討した.〔結果〕胸郭断面積比の左右比較では上部胸郭で左側が,下部胸郭で右側が増大する左右非対称性がみられた.また,胸郭断面積左右比,胸郭拡張率,呼吸機能には相関関係が認められた.〔結語〕安静呼気位の胸郭形状には上部胸郭で左側が,下部胸郭で右側が増大する左右非対称性が存在していた.この胸郭形状の左右非対称性の程度は,呼吸運動における胸郭可動性や呼吸機能に反映したものと考える.
著者
藤原 務 平山 哲郎 小関 泰一 多米 一矢 川﨑 智子 稲垣 郁哉 小関 博久 石田 行知 柿崎 藤泰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0455, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腹直筋,側腹筋群は,胸郭と骨盤を連結し体幹の安定性に重要な役割を果たす。また恒常的な胸郭可動性の維持や強制呼気に重要な作用を担う。体幹側方偏位の増大は胸郭形状の左右非対称性が助長され胸郭に付着する腹直筋,側腹筋群の長さ,張力関係にも変化を来たし体幹機能に影響を及ぼすと考えられる。したがって収縮活動の左右差を可及的に最小限にすることは臨床結果を判定する指標になり得る。本研究の目的は体幹の側方偏位が腹直筋,側腹筋群筋厚および呼吸機能への影響を検討することとした。【方法】対象は健常成人男性15名であった。測定肢位は安静背臥位とした。体幹偏位の測定はデジタルカメラを用い,得られた画像を画像解析ソフトImageJにて体幹偏位量を算出した。この値を元に,他動的にベッドをスライドさせ安静位,正中位,偏位量増大位の3条件で検討した。腹直筋および側腹筋群筋厚の測定は超音波診断装置を用いた。課題動作は安静呼気,努力呼気とし,腹直筋の測定は第3筋区画の中央点にプローブを位置させ,側腹筋群筋厚の測定は第10肋骨下端と骨盤の中央点にプローブを位置させ短軸像を抽出した。それぞれの呼気終末時で得た画像は画像解析ソフトImageJを用いて筋膜間距離を筋厚として算出した。呼吸機能の測定は,呼気ガス分析装置とスパイロメーターを用いて測定した。統計処理は各項目における代表値を対応のあるt検定を用いて比較検討した。なお,危険率5%未満を有意とした。【結果】体幹偏位は有意に左側へ偏位していた(p<0.01)。腹直筋および側腹筋群筋厚は,安静呼気において偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.01,p<0.01)。また努力呼気でも両筋は偏位量増大位で左側が有意に減少した(p<0.05,p<0.05)。正中位は,安静呼気および努力呼気で両筋に有意な差がみられなかった(n.s.)。呼吸機能は,TVにおいて偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)RRは偏位量増大位で有意に増大した(p<0.01)。MVは有意な差がみられなかった(n.s.)。VC,FVC,PEFR,%VCおよびV25においては偏位量増大位で有意に減少した(p<0.05)。FEV1.0においては有意な差がみられなかった(n.s.)。また,FEV1.0%は偏位量増大位で有意に増加した(p<0.05)。【結論】今回の結果から安静背臥位では,骨盤に対して体幹は有意に左側へ偏位し左側方偏位が増大すると左右の腹直筋,側腹筋群筋厚に左右差が生じ呼出機能低下に通ずることが示された。体幹側方偏位の改善は,胸郭のニュートラル化に寄与し付着する左右腹直筋,側腹筋群の均等な張力の再建に結びつき,呼吸運動における左右対称性の胸郭運動や筋活動により呼出機能改善が図れたと考察する。また,強制呼気に関与する協調的な腹直筋,側腹筋群機能の発揮が得られ,効率的な呼出機能が獲得できたと考察する。体幹側方偏位に伴う胸郭機能低下は,呼吸機能低下の一要因に関与し,呼吸器疾患をはじめ多くの臨床応用ができるものと考察する。
著者
石塚 達也 柿崎 藤泰 本間 友貴 石田 行知
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0683-Ab0683, 2012

【目的】 体幹は身体質量比の0.479を占めるため、上半身質量中心点を含む胸郭の変位が身体運動に与える影響は大きい。臨床的には前額面上、胸郭が骨盤に対して正中に位置している例は少なく、多くの例で左側に変位している。我々は体幹の形態として胸郭が骨盤に対して左側に変位していることは一般的であると捉えている。そこで今回は胸郭側方変位と座位における体幹の荷重左右差の関係を定量的に示すことができたためここに報告する。【方法】 対象は成人男性13名とした(年齢 21.8±1.0歳、身長 171.2±3.4cm、体重 63.5±9.3kg、座高 92.5±1.9cm、BMI 21.6±2.6)。胸郭側方変位の判定は3DイメージメジャラーQM-3000(株式会社トプコンテクノハウス社製)を用いて行った。2台のデジタルカメラを縦に並列にステレオ配置し、基線長が40cmのステレオカメラを作成した。そのステレオカメラを2台使用した。ステレオカメラの位置は左右50°の角度で撮影距離は2mとした。ステレオカメラの後方にはプロジェクターをそれぞれ配置させた。計測肢位は自然立位とし、上肢はレッドコード(インターリハ社製)を用いてゼロポジションで固定した。身体マーキング位置は、頸切痕、剣状突起、両ASIS、両ASIS間の中点、中腋窩線と腸骨稜の交点、中腋窩線と剣状突起を通る床との水平線との交点とした。写真撮影は、プロジェクターにてランダムドットパターン無と有の光を照射し、2パターン行った。撮影した画像データはPCで読み込み、QM-3000にてポイント計測、ポリライン計測し3次元化を行った。その3次元化データより断面図作成を行った。断面図作成は両側の中腋窩線を通る床との垂線とし、前額面上での胸郭側方変位を判定できるものとした。断面図データはCSVファイルに変換し処理を行った。下限はASISレベル、上限は腋窩レベルとし、両ASIS間の中点をy軸に合わせ骨盤中心線とした。その骨盤中心線により体幹を左右に分け、体幹の右側面積、左側面積を求めた。左右で面積が大きい方を胸郭変位側とした。統計処理は対応のあるt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。また椅子に体重計を2つ横に並べ、左右の坐骨結節がそれぞれの体重計の中央に位置するように坐骨支持の端座位をとらせた。レッドコード(インターリハ社製)を用いて上肢と下肢をスリングし、上下肢の質量を除いた条件下で体幹の荷重左右差をみた。統計処理は対応のあるt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。そして胸郭の側方変位量と体幹の荷重左右差との関係をPearsonの相関係数にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に沿い、各対象者に対して本研究内容の趣旨を十分に説明し本人の承諾を得た後、同意書に署名した上で計測を実施した。【結果】 胸郭側方変位は右側面積410.8±44.0cm<sup>2</sup>、左側面積426.8±43.8cm<sup>2</sup>で左側面積が有意に大きかった(p<0.05)。体幹の荷重左右差は右側体重17.2±4.0kg、左側体重19.3±2.5kgで左側体重が有意に大きかった(p<0.05)。胸郭側方変位と体幹の荷重左右差の間には、胸郭変位側に荷重の偏りがあるという正の相関がみられた(n=13、r=0.59、p<0.05)。【考察】 今回の研究より、胸郭は左側への変位が多いという結果となった。実際の臨床においても胸郭は骨盤に対して左側に変位している例が多く、その臨床像を反映する結果である。また体幹の荷重左右差については、右側に比べ左側が大きかった。これは左側への胸郭変位の存在により、上下肢の影響を除いた条件下では荷重も左側に偏りを伴うためである。左側への胸郭変位と体幹荷重の左側への偏りの関係が一般的であるが、右側への胸郭変位を呈する例や胸郭変位側とは反対側への荷重の偏りがある例は異常性があると捉えている。例えば、臨床的には腰痛症状を持つ例や腰部の構造破綻のある例などは右側への胸郭変位を呈していることが多い。結果を総合すると、姿勢や体幹機能評価で側方への胸郭変位や荷重の偏りなども考慮することは理学療法の効果判定に有効となると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果より、胸郭は左側への変位が多く、体幹の荷重は左側に偏りがあることが定量的に示された。これは姿勢や体幹機能評価などの理学療法評価や治療に有益な情報となると考える。
著者
山田 峰彦 柿崎 藤泰 渋谷 まさと 中山 秀章 廿楽 裕 田中 一正 鈴木 一 本間 生夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 = The Japanese journal of thoracic diseases (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.646-652, 1996-06-25
被引用文献数
12

呼吸筋ストレッチ体操 (RMSG) プログラムを作成し, 肺機能, 運動能力, 呼吸困難感, 生活の質 (QOL) に与える効果について4週間のトレーニングの前後で検討した. 13名の慢性閉塞性肺疾患患者 (平均FEV<sub>1</sub>: 1.24L) を対象とし, 4週間にわたりRMSGを1日3回実施した. 12名が検討終了した. FRC (前4.19±1.27, 後3.88±1.03L), TLC (前5.98±1.35, 後5.66±1.20L), RV (前3.29±1.16, 後2.89±0.89L), 残気率 (前53.9±11.2, 後50.6±9.74%) はそれぞれ有意 (p<0.01) に低下した. 6分間歩行距離 (6MD) は平均43±30m (+15%, p<0.01) 延長した. 6MD終了時の呼吸困難感 (150mm VAS) は (前65.1±40.8, 後36.1±36.8mm) と有意 (p<0.05) に低下した. QOLは Guyatt らの The Chronic Respiratory Disease Questionnaire により評価し, 有意な改善が認められた. RMSGは呼吸リハビリテーションとして有用性があると考えられた.