著者
高畑 雅一 冨永 佳也 神崎 亮平 青木 清 宗岡 洋二郎 水波 誠 山口 恒夫 堀田 凱樹 横張 文男 鈴木 良次 桑澤 清明 勝木 元也
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

平成10〜13年度に実施した特定領域研究(A)「微小脳システムの適応的設計」の研究成果を、2つの研究項目についてそれぞれの班長および領域代表が中心となって詳細に吟味し、領域としての到達点と今後の展望を取りまとめて、研究成果報告書を作成し関係者に配付した。到達点として特に着目される業績としては、感覚連合中枢であるキノコ体のモジュール構造の発見やキノコ体のシグナル伝達機構の解明、また、湿度温度受容を含む機械感覚統合に関する多くの新しい知見などがあげられる。研究報告書には、計画および公募研究課題で公表された主要論文の別刷を添付し、最終的は400頁を越える分量となった。また、平成14年10月に文部科学省にて実施された最終ヒアリングにおいて、領域代表と研究項目代表者が出席して、領域研究の成果が、<わが国における節足動物微小脳による行動制御機構の研究を、従来の個々のモダリティーの感覚情報処理、個々の種特異的行動のパターン形成機構、具体的行動から単離され一般化された神経回路網の学習・記憶機構などの研究から、個体レベルの行動の多様性および複雑性と密接に関連づける研究という方向に向けて、大きく舵を切ったものと意義づけられる>という結論を報告し、審査員と質疑応答を行った結果、<期待どおり研究が進展した>との評価Aを受けた。また、審査報告に述べられた<今後もさらに個体レベルの行動の多様性や複雑性の解明へと取り組んでいただきたい>とのコメントを受け、次年度からの新しい微小脳プロジェクト申請のための打合せ会議を開催し、「微小脳システムの適応的設計」での成果をさらに発展させる目的で平成15年度特定領域研究「コミュニケーションのニューロン機構」(領域代表横張文男福岡大学教授)を申請した。
著者
山口 恒夫
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.94, pp.75-79, 2006-11-10 (Released:2010-05-07)
参考文献数
6

今日の大学における教員養成教育の課題のひとつは、学校での「体験」と大学での「省察 (reflection) 」をいかに有機的に結びつけるかという点にある。日本教育大学協会の答申「教員養成『モデル・コア・カリキュラム』の検討」 (二〇〇四年) をも契機として、「〈体験〉-〈省察〉的な科目群」や「臨床経験科目」が多くの教員養成系大学・学部の教員養成プログラムに導入されている。そこでは、教員の職務の体験や子どもたちとの触れ合いを目的として、教育現場での体験的学修の機会が養成段階の初期から提供されている、しかし、子どもとの触れ合いを積み重ね、教員の職務にいわば身体知によって接近しても、それが単なる児童生徒の操作技法の獲得に終わっては、教師の職務を単なる専門技術者のレベルに貶めることになりかねない。重要なのは、「臨床の場」で求められる判断力や子どもたちとの相互作用を省察する態度と方策を身につけることである。臨床の場とは、状況に捲き込まれつつ、当事者同士がコミュニケーションを進展させながら「関係」を構築する場である。こうした臨床の場に立つケアの専門家-教師や看護師等-には、状況にコミットしつつ、自己自身の応答や作用過程に対して不断にモニタリング=リフレクションする能力が求められる。「省察=リフレクション」は、ドナルド・ショーンによる「反省的実践家 (reflective practitioner) 」の概念の提唱を契機として、教員養成ばかりでなく、医学教育・医師養成や看護教育においても重要なキーワードとなっているが、リフレクションの意義やその理論的基礎づけは必ずしも十分ではない。筆者らの研究グループが取り組んでいるプロセスレコードによる「臨床経験」のリフレクションの試みは、教育実践の現場に立ち会う教員や実習生と子どもとの関係の生成過程をつぶさに浮かび上がらせる方法の探究であるとともに、子どもとの多様な相互作用場面における教師の判断・応答の適切性とは何か、また、その適切さの根拠はどこに求められるべきかを明らかにする試みでもある。
著者
山口 恒夫
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.30, pp.1-15, 1974 (Released:2009-09-04)
参考文献数
58

The concept of “democracy” which was inherent in the republicanism of Thonas Jefferson (1743-1826) at the time of independence and most of all in his educational thought, had at its basis a strong belief in “reason” and “morality” of man who possesses the right of “self-government” as a natural right, and it included originally some kind of moral meaning.According to Jefferson the function of public education was to cultivate “reason” and “moral sense”, universal faculties and endowments peculiar to man, and thus to improve the capability of man for self-government. It consisted on the one hand of elementary ebucation with the purpose of making autonomous personalities out of the people by fostering their autonomous judgment through spreading widely knowledge and the art of reading and writing ; on the other hand it consisted of secondary and higher education with the purpose of training trustworthy leaders ; students with a high degree of morality and intellectual capacity were to be chosen for this level and educated at public expense. The creative element in this educational theory of Jefferson consists in the fact that that he visualized education in connection with political and social problems, developing the human right of self-government and laying the foundations for it by creating the corresponding capacity.
著者
山口 恒夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.161-167, 2007-06-25 (Released:2011-02-07)
被引用文献数
3

1) 現代は専門職観の大きな転換期である.それは, 「反省的実践家」という新しい専門職増によって特徴づけられる.2) 専門職の養成は, 3つのモデル (理念型) に分類できる.すなわち, 「徒弟修業的自己形成モデル」「技術的熟達者育成モデル」「反省的実践家モデル」である.3) 徒弟関係は, 「師」と「弟子」の関係に近代的な意味での教育的な関係が存在せず, 「同一化」と「模倣」による自己形成を原理としている.4) 現代社会における問題状況の複雑さ, 不安定さ, 固有性, 価値の対立は, 技術的合理性の限界を露呈し, 専門職は「問題」の明確化 (問題状況の物語化) という新たな課題を担うことになった.5)「反省的実践家」の特徴は「省察」にある.「省察・省察的であること」は, 問題状況に捲き込まれている専門職自身を含む当事者間の協働的関係の構築を目指し, 専門職が内属するコミュニティ在り方の問いなおしを目指す.
著者
山口 恒夫 高橋 知音 鷲塚 伸介 上村 惠津子 森光 晃子 小田 佳代子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

自閉症スペクトラム障害(以下ASD)と注意欠陥多動性障害(以下ADHD)の傾向に関わる困り感と支援ニーズを把握するための質問紙を実施し、その特徴及び信頼性、妥当性を検討した。ASD困り感質問紙ADHD困り感質問紙は、既存の自己評価質問紙の項目に加え、事例報告論文、当事者の手記等から行動特徴、困難経験を表す記述を抜き出したものを項目化し、それらの困り感を4段階評定で問う質問紙であった。分析の結果、十分な信頼性が示され、外的変数との関連から妥当性に関する証拠も得られた。