著者
蔦原 宏一 栗林 宗平 山道 岳 川村 正隆 中野 剛佑 岸本 望 谷川 剛 今村 亮一 高尾 徹也 山口 誓司
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.97-100, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
10

鏡視下ドナー腎採取術においては左腎の方が右腎より血管長の確保が容易であることから,左側の腎採取が選択される場合が多い.手術成績について採取側別に比較検討した. 対象は2003年1月から2014年6月までに当科で後腹膜鏡下ドナー腎採取術を施行した98例を対象とした.右腎採取は26例(26.5%)であった.手術時間,出血量,温阻血時間など各因子について検討した. 手術時間は左257.5(182-506)分,右256(196-374)分,温阻血時間は左150(60-330)秒,右204(120-393)秒,総阻血時間は左120(69-637)分,右104(60-183)分であった.温阻血時間については右腎採取において有意な延長を認めたが,総阻血時間については逆に左腎採取において有意に長かった. 左腎採取に比べ右腎採取では温阻血時間の延長を認めたが,総阻血時間については右腎採取で短く手術成績は両側とも遜色ないものと考えられた.
著者
福原 慎一郎 川村 憲彦 角田 洋一 今津 哲央 原 恒男 山口 誓司
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.829-831, 2007-11

33歳男性。患者は血尿および失神を主訴に近医を受診, 救急入院となり, 膀胱鏡にて球部尿道に出血を伴うびらんを認め, 精査加療目的に著者らの施設へ紹介入院となった。静脈性腎盂造影・腹部CTおよび生検では異常所見は認められず, 陰茎MRIにて外因性による尿道損傷が疑われた。一方, 失神の原因検索を行うも明らかな異常所見は認めず, 入院後も尿道よりの出血を伴う失神発作を繰り返した。失神する場所が常に個室トイレであること, バルーンカテーテル留置中は尿道出血だけでなく失神発作も起こさないこと, 明らかな原因疾患がないことより, 自慰行為を含めた自傷行為が強く疑われた。確定診断には至らなかったが, 繰り返す出血に対し対症療法にて経過観察を行ったところ, 偶然ウエストポーチの中より血液の付着した塗り箸がみつかり, これによる自傷行為と判明した。精神科による検査の結果, ミュンヒハウゼン症候群の診断に至り, 患者は精神病院へ転院となった。A 33-year-old man presented with urethral bleeding and syncope. Urethroscopy revealed erosive lesion with bleeding at bulbar urethra. Magnetic resonance imaging, biopsy, and blood examination were performed, but the cause of urethral bleeding was not identified. By accident, chopsticks with blood ware detected in his ward. It was revealed that urethral bleeding was caused by self-mutilation with chopsticks. He consulted a psychiatrist, and was diagnosed with 'munchausen's syndrome'.
著者
谷川 剛 山口 誓司
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-33, 2014 (Released:2015-05-01)
参考文献数
19

褐色細胞腫クリーゼはカテコラミン過剰放出により多彩な臨床像を呈し,発症急性期での診断が困難で,急激に全身状態が悪化しうるため適切な治療がなされなければ致死的となることもある内分泌緊急疾患である。急性期治療はまず薬物療法を行い,状態を安定させた後に手術による摘除を行う。薬物治療に抵抗性の場合は腫瘍切除が考慮されるが急性期の緊急手術はリスクが高く,治療成績向上のためには術前コントロールの成否が重要となる。当院では多臓器不全を合併した褐色細胞腫クリーゼを薬物療法に加え,持続血液透析濾過法(continuous hemodiafiltration;CHDF)によりカテコラミンを除去することで全身状態を改善させた後に待機的手術を施行し,救命しえた2例を経験した。いずれも手術による合併症を認めず,良好な経過をたどった。CHDFによる過剰なカテコラミン除去は内科的治療に抵抗する褐色細胞腫クリーゼの術前コントロールのための一つの有効な手段となりうる。
著者
山本 圭介 松岡 庸洋 高尾 徹也 辻村 晃 奥山 明彦 久保 盾貴 細川 亙 角田 洋一 山口 誓司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.500-503, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
13

41歳, 男性.家族歴・往歴に特記すべきことなし.以前より陰茎腫大を自覚し, 排尿時痛も出現したため前医受診.陰茎の著明な腫大を認めた.MRIにて, 陰茎皮膚および皮下組織の著明な肥厚を認めた.自排尿困難のため, 尿道カテーテル留置の上, 当科紹介.病的な皮膚・皮下組織を切除し, 左大腿部より採取した分層皮弁を陰茎に巻きつけて植皮を行った.病理診断では悪性所見を認めず, 非特異的炎症性変化であった.植皮の生着は良好で, 痛みは減少し尿道カテーテル抜去後も排尿可能であった.術後6カ月現在, 明らかな再発を認めず, 排尿・性機能についても特に問題ない.象皮病はリンパ浮腫の終末像であり, フィラリア感染や外傷・治療・腫瘍・液状異物自己注入などが原因で生じる.自験例ではフィラリア感染は否定的であり, 特発性と考えられた.
著者
栗林 宗平 蔦原 宏一 山道 岳 大草 卓也 谷口 歩 岸本 望 谷川 剛 高尾 徹也 山口 誓司
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 = Acta urologica Japonica (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.141-143, 2016-03-31

We report a case of recurring foreign bodies in the urinary bladder. A 67-year-old male inserted a foreign body into the urinary bladder during masturbation. Eight months later, he experienced a fever and went to a hospital where ultrasonography revealed a foreign body in his urinary bladder. Then, he was referred to our hospital for surgical treatment. The patient’s surgical record indicated that he had undergone the same operation 3 times in the past thirty years. The inserted foreign body was successfully removed by suprapubic cystotomy, and he was discharged 13 days after the operation. He was also evaluated by psychiatrists, but they diagnosed that he had no mental disorder. To our knowledge, this is the first report on the removal of a foreign body in the urinary bladder four times in the same patient.
著者
中野 悦次 吉岡 俊昭 松田 稔 園田 孝夫 矢野 久雄 伊原 義博 黒田 秀也 岸本 知己 櫻井 勗 内田 欽也 児島 康行 中村 隆幸 清原 久和 佐川 史郎 関井 謙一郎 古武 敏彦 宇佐美 道之 三木 恒治 黒田 昌男 細木 茂 前田 修 友岡 義夫 吉村 一宏 水谷 修太郎 岩尾 典夫 三好 進 井上 彦八郎 本城 充 藤岡 秀樹 本多 正人 高羽 津 岡 聖次 松宮 清美 原 恒男 三宅 修 坂口 洋 竹山 政美 板谷 宏彬 宇都宮 正登 伊東 博 新 武三 永野 俊介 市川 靖二 野島 道生 長船 匡男 客野 宮治 山口 誓司 多田 安温
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.635-642, 1990-05

膀胱乳剤にフェルビナクのエチルエステルを封入させたLM-001静注剤を尿路結石による疼痛と膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対する有効性ならびに安全性について検討した.1)尿路結石による疼痛に対しては53例中49例に効果がみられた.有効例49例中41例までが本剤投与15分以内に効果が発現した.また26例において効果が24時間以上持続した.2)膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対しても29例中25例に効果がみられた.有効例25例中16例までが15分以内に効果発現した.また13例において効果が24時間以上持続した.3)副作用として血管痛,熱感,視力軽度低下,血圧の一時低下がみられたが,いずれもきわめて軽度で何ら処置することもなく短期間に消失した.また,3例に白血球増多,1例にA1-pの上昇がみられたが,その程度は軽度であり,すぐに正常化した.4)LM-001は尿路結石による疼痛の緩和と膀胱・前立腺手術後の膀胱切迫感に対し,速効性で高い有効率を示し,かつ作用時間が長いこと,また副作用がきわめて少ないことから優れた薬剤と評価し得たClinical effect of LM-001, a prostaglandin synthetic inhibitor developed from a drug delivery system, was evaluated in 54 patients with pain from urinary tract stones (stone pain) and 32 with vesical urgency after an operation on bladder or prostate. LM-001, felbinac ethyl incorporated in lipid microsphere, wes intravenously administered at the onset of stone pain or vesical urgency. Of 54 with stones and 32 with urgency, 53 and 29 were eligible for response, respectively. The symptoms improved or disappeared in some cases just after the administration and in the majority of patients within 15 minutes, in 49 of 53 patients with stone pain. Further, the effectiveness lasted over 24 hours in 26 of the 49 responding to this agent. On one hand, improvement or disappearance of vesical urgency was recognized in 25 of 29 patients, and the effectiveness was observed shortly after injection in 16 and lasted over 24 hours in 13 cases. Toxicities of this drug were investigated in 54 patients with stone pain and 32 with urinary urgency. Side effects consisted of pain at the injection site in 4, a slight fall of blood pressure in 1, slight visual disturbance in 1, body heat sensation in 1, leukocytosis in 3 and elevation of alkaline phosphatase in 1. These symptoms were transient and disappeared without use of any agent. LM-001 is concluded to be a useful drug for controlling stone pain and vesical urgency since an immediate effect, long durability and high response rates were obtained without severe side