- 著者
-
山末 英典
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.85-89, 2020 (Released:2020-06-30)
- 参考文献数
- 14
オキシトシンによって,現在は治療が困難な自閉スペクトラム症の中核症状が治療できるようになることが期待されている。しかし,これまでの報告を概観すると,単回投与では一貫して改善効果を報告してきた一方で,反復投与では,改善の有無についての結果が食い違っていた。その理由として,オキシトシンは反復投与すると効果の強さが変化することも疑われたが,これまでは自閉スペクトラム症の中核症状を繰り返して評価できるような客観的な方法がなかったため,この疑問を確かめることができなかった。この疑問に対して筆者らは,脳機能から生化学的検討まで含んだマルチモダリティの脳画像解析や定量的表情分析を評価項目に応用して行った自主臨床試験の解析結果を示し,さらに動物実験による検証を行い,反復投与による改善効果の経時変化や反復投与に特異的な効果発現メカニズムを示してきた。本稿では,これらの研究成果について概説する。