- 著者
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尾内 康臣
- 出版者
- 日本神経学会
- 雑誌
- 臨床神経学 (ISSN:0009918X)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.11, pp.925-928, 2009 (Released:2009-12-28)
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
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ミクログリアは脳実質内グリア細胞の10%を占め,安静時ではramified型をして繊毛突起を出して絶えず移動して免疫監視作用にかかわっている.ところが,脳組織が傷害を受けると傷害された神経細胞やアストロサイトからの刺激によってameboid型と形を変え,ミクログリアが傷害側まで誘導される.血管障害や変性疾患などの神経疾患だけでなく,直接的な脳病理学的所見が不明確とされる精神疾患においても,神経細胞やアストロサイトの異常によってミクログリア活性が上昇していることが最近報告されている.活性化ミクログリアはグルタミン酸神経シナプスなどを剥離して異常興奮を抑制する神経保護に関与する一方,炎症性サイトカインを放出し細胞傷害を惹起する.すなわちミクログリアの活性化こそ脳内での炎症の存在を示す証拠となる.この神経炎症を死後脳でなく,生きた脳で捉えることは疾患の病態を評価し,治療方針の決定に重要となる.活性化したミクログリアには,末梢性ベンゾジアゼピン受容体が多数発現し,その受容体に結合するトレーサーとPETを使うことで可視化できる.様々なトレーサー開発がおこなわれているが,中でも[11C](R)-PK11195は感度は低いが世界で広く臨床利用されているPETトレーサーである.このトレーサーは傷害性ミクログリアと保護的ミクログリア(果たして末梢性ベンゾジアゼピン受容体の差で差別化できるか疑問であるが)の区別なく,活性化したミクログリアを検出することができる.本シンポジウムでは神経・精神疾患の患者脳におけるミクログリア活性について述べる.