著者
岡田 裕之 清水 良幸 吉川 悦次 江田 英雄 尾内 康臣
出版者
Japan Society for Laser Surgery and Medicine
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.167-175, 2015-07-15 (Released:2017-04-03)
参考文献数
23

高周波領域非可聴音を含む音楽の刺激で若中年者と健常高齢者にハイパーソニック・エフェクトが発現するか,PET (Positron Emission Tomography)による脳イメージング,脳波(Electroencephalogram:EEG)計測を用いて検証した.対象は平均年齢36.8 歳SD±7.7 歳(27 歳~48 歳),男性3 名,女性5 名,合計8名の若中年者健常ボランティアと平均年齢 77.6 歳SD±4.1 歳(72 歳~88 歳),男性5 名,女性10 名,合計15 名の健常高齢者である.高周波領域非可聴音刺激は脳幹を刺激し,後頭葉のα波を増大させたことから,ハイパーソニック・エフェクトは若年者だけてなく高齢者においても発現することが分かった.
著者
尾内 康臣
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.134-139, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
13

蛍光物質導入と二光子や多光子励起顕微鏡などを用いて,数ミクロンオーダーでミクログリア突起等を観察することができるのがミクログリアのin vivo イメージングである。一方in vivo 分子イメージングでは,ミクログリアの活性化で変化する分子の挙動や発現に着目して画像化する方法であり,同じ生体イメージングと言っても両者は大きく異なる。解像度的にははるかに劣るが,脳表への侵襲がないことやヒトを対象に応用できる点が,分子イメージング法のメリットと言える。本稿では,分子イメージングを代表とするポジトロン断層画像法(PET)と Translocater protein(TSPO)という蛋白に結合する PET プローブを用いて,ミクログリア活性を画像化する方法を概説するとともに,認知症や精神神経疾患におけるミクログリア活性を含む病態について記述する。
著者
和久田 智靖 横倉 正倫 間賀田 泰寛 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

統合失調症は、20歳代に発病する主要な精神疾患である。症状には陽性症状(幻覚妄想)、陰性症状(感情の平板化など)、認知機能障害(記憶力障害など)があり、陰性症状と認知機能障害に対する治療法は未だ確立されていない。喫煙(ニコチン)が統合失調症の陰性症状や認知機能障害を改善させるという報告を手掛かりに、本研究では、PETを用いて統合失調症者のニコチン受容体と活性化ミクログリア結合能を測定することで、新たな創薬標的を創出することを目指す。
著者
村山 千尋 尾内 康臣 千住 淳 山末 英典
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-24, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
32

自閉スペクトラム症(ASD)の原因や病態はその多くが未解明である.それに対し,陽電子断層撮像法(PET)は,生体内の特定の分子の分布や動態を定量的に測定できる強力な研究手法である.2020年以降,ASDを対象としたドーパミン受容体のPET研究が立て続けに報告されており,ASDの病態へのドーパミン系の関わりが注目されている.本稿では特に,私たちが行ったASDの線条体外領域におけるドーパミンD2/3受容体のPET研究を紹介する.この研究によって,ASD者では,ドーパミンD2/3受容体の豊富に存在する線条体外領域全体でドーパミンD2/3受容体結合能が有意に低下していることが明らかになった.中でも視床枕に相当する視床後部領域で結合能の低下は最大であり,この低下は,ASDの社会的コミュニケーション障害の重症度と相関していた.また安静時機能的MRI研究と組み合わせることにより,この線条体外領域におけるドーパミンD2/3受容体結合能の低下が,ASD者における社会脳領域の安静時機能的結合性の変化に関係していることが明らかになった.
著者
亀野 陽亮 横倉 正倫 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典 和久田 智靖
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

うつ病患者数は年々増加し、その対策は喫緊の課題である。近年、神経炎症仮説とグルタミン神経仮説に基づく新薬の治験結果が報告されたが、いずれも効果は非常に限定的であった。そこで、活性化ミクログリアとセロトニントランスポーターのダブルトレーサーPET、1H MEGA-PRESS MRS、炎症性サイトカインとトリプトファン代謝物のメタボローム解析によるマルチモダル解析を行い、神経炎症とセロトニン/グルタミン神経系と抑うつ症状の相関性を検討する。そして、うつ病病態における活性化ミクログリアとセロトニン/グルタミン神経系の相互作用の役割を明確にし、新たな治療シーズの創出を目指す。
著者
尾内 康臣
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.925-928, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

ミクログリアは脳実質内グリア細胞の10%を占め,安静時ではramified型をして繊毛突起を出して絶えず移動して免疫監視作用にかかわっている.ところが,脳組織が傷害を受けると傷害された神経細胞やアストロサイトからの刺激によってameboid型と形を変え,ミクログリアが傷害側まで誘導される.血管障害や変性疾患などの神経疾患だけでなく,直接的な脳病理学的所見が不明確とされる精神疾患においても,神経細胞やアストロサイトの異常によってミクログリア活性が上昇していることが最近報告されている.活性化ミクログリアはグルタミン酸神経シナプスなどを剥離して異常興奮を抑制する神経保護に関与する一方,炎症性サイトカインを放出し細胞傷害を惹起する.すなわちミクログリアの活性化こそ脳内での炎症の存在を示す証拠となる.この神経炎症を死後脳でなく,生きた脳で捉えることは疾患の病態を評価し,治療方針の決定に重要となる.活性化したミクログリアには,末梢性ベンゾジアゼピン受容体が多数発現し,その受容体に結合するトレーサーとPETを使うことで可視化できる.様々なトレーサー開発がおこなわれているが,中でも[11C](R)-PK11195は感度は低いが世界で広く臨床利用されているPETトレーサーである.このトレーサーは傷害性ミクログリアと保護的ミクログリア(果たして末梢性ベンゾジアゼピン受容体の差で差別化できるか疑問であるが)の区別なく,活性化したミクログリアを検出することができる.本シンポジウムでは神経・精神疾患の患者脳におけるミクログリア活性について述べる.
著者
鈴木 勝昭 武井 教使 土屋 賢治 宮地 泰士 中村 和彦 岩田 泰秀 竹林 淳和 吉原 雄二郎 須田 史朗 尾内 康臣 辻井 正次
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、自閉症の病態において脳内コリン系の果たす役割を明らかにすることにある。自閉症者脳内のアセチルコリンエステラーゼ活性を陽電子断層法(PET)により計測したところ、顔認知に重要な紡錘状回において有意に低下していた。さらに、この低下は社会性の障害の重症度と逆相関していた。すなわち、紡錘状回におけるコリン系の障害が強いほど、社会性の障害が強いという相関関係が示唆された。この結果は、自閉症のコリン系の障害は発達の早期に既に起こっており、顔認知の障害がもたらされ、もって社会性の障害の基盤となっていることを示唆している。そこで、認知の障害を注視点分布によって検出し、早期診断に役立てるために、乳幼児でもストレスなく注視点を測定可能な機器の開発を産学連携で行い、現在も継続中である。
著者
岡田 裕之 清水 良幸 吉川 悦次 江田 英雄 尾内 康臣
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
pp.jslsm-36_0015, (Released:2015-04-30)
参考文献数
23

高周波領域非可聴音を含む音楽の刺激で若中年者と健常高齢者にハイパーソニック・エフェクトが発現するか,PET (Positron Emission Tomography)による脳イメージング,脳波(Electroencephalogram:EEG)計測を用いて検証した.対象は平均年齢36.8 歳SD±7.7 歳(27 歳~48 歳),男性3 名,女性5 名,合計8名の若中年者健常ボランティアと平均年齢 77.6 歳SD±4.1 歳(72 歳~88 歳),男性5 名,女性10 名,合計15 名の健常高齢者である.高周波領域非可聴音刺激は脳幹を刺激し,後頭葉のα波を増大させたことから,ハイパーソニック・エフェクトは若年者だけてなく高齢者においても発現することが分かった.
著者
高貝 就 中村 和彦 鈴木 勝昭 岩田 泰秀 尾内 康臣 竹林 淳和 森 則夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

高機能自閉症者にみられる「タイムスリップ現象」に代表される記憶再構築障害に果たすドパミン系の役割を、ポジトロン断層法(PET)を用いて検討した。すなわち、定常状態とタイムスリップ現象を誘発するようなcueを負荷した状態とにおいて、ドパミンD1受容体密度を特異的トレーサー[llC]SCH23390とPETで計測した。現在、その結果について解析中である。