著者
桑原 斉 池谷 和
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.148-158, 2018-04-01 (Released:2019-08-21)
参考文献数
37

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)の社会的な認知度が向上し概念が整理されたのは,最近30年ほどのことである。この間に,社会の側ではメディアで報道される犯罪・触法行為についてASDとの関連が取りざたされることが増えているように思われる。また,医療の側ではASDによる犯罪・触法行為についてケースレポートによる報告が蓄積されている。これらの逸話的な報道・報告は,犯罪・触法行為とASDの親和性を強調するが,犯罪・触法行為とASDの関連についての科学的な事実は多くない。本稿では,犯罪・触法行為とASDの関係について,現在までの知見を概説し,若干の考察を加える。
著者
本郷 美奈子 大島 郁葉 清水 栄司 桑原 斉 大渓 俊幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

成人の高機能自閉スペクトラム症(High-functioning Autism spectrum disorder:HF-ASD)者 は「自分は異端である」などのスティグマを持ちやすく,そのため定型発達者の社会に過剰適応する「社会的カモフラージュ行動」を取りやすいが,その行動はメンタルヘルスに負の影響をもたらすことが指摘されている.本研究では,成人のHF-ASD者の社会的カモフラージュ行動の要因について解明する.その知見をもとに,成人のHF-ASD者に対する新たな対処方略の構築を目的とした認知行動療法を開発・施行し,その効果を検証する.
著者
和久田 智靖 横倉 正倫 間賀田 泰寛 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

統合失調症は、20歳代に発病する主要な精神疾患である。症状には陽性症状(幻覚妄想)、陰性症状(感情の平板化など)、認知機能障害(記憶力障害など)があり、陰性症状と認知機能障害に対する治療法は未だ確立されていない。喫煙(ニコチン)が統合失調症の陰性症状や認知機能障害を改善させるという報告を手掛かりに、本研究では、PETを用いて統合失調症者のニコチン受容体と活性化ミクログリア結合能を測定することで、新たな創薬標的を創出することを目指す。
著者
栃木 衛 桑原 斉 垣内 千尋 佐々木 司 池淵 恵美 赤羽 晃寿
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

統合失調症、双極性障害、パニック障害などを含む精神疾患、および自閉症、トゥレット障害などを含む発達障害などの精神科領域の疾患について、多発家系、孤発例家系や一卵性双生児不一致例についてDNAサンプルの蓄積を図った。また、これらのサンプルについて、次世代シークエンサーを利用したエクソーム解析や、マイクロアレイを利用した解析を行うことにより、統合失調症およびトゥレット障害の有力な候補遺伝子の同定に至った。
著者
亀野 陽亮 横倉 正倫 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典 和久田 智靖
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

うつ病患者数は年々増加し、その対策は喫緊の課題である。近年、神経炎症仮説とグルタミン神経仮説に基づく新薬の治験結果が報告されたが、いずれも効果は非常に限定的であった。そこで、活性化ミクログリアとセロトニントランスポーターのダブルトレーサーPET、1H MEGA-PRESS MRS、炎症性サイトカインとトリプトファン代謝物のメタボローム解析によるマルチモダル解析を行い、神経炎症とセロトニン/グルタミン神経系と抑うつ症状の相関性を検討する。そして、うつ病病態における活性化ミクログリアとセロトニン/グルタミン神経系の相互作用の役割を明確にし、新たな治療シーズの創出を目指す。