著者
松本 麻友子 山本 将士 速水 敏彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.432-441, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
10 8 4

本研究の目的は, 仮想的有能感といじめ加害経験, 被害経験との関連を検討することであった。高校生1,062名を対象に仮想的有能感, 自尊感情, いじめ加害経験, 被害経験(身体的いじめ, 言語的いじめ, 間接的いじめ)の尺度が実施された。その結果, 仮想的有能感と全てのいじめ加害経験, 被害経験との間に正の相関が見られた。同様に, 自尊感情との組み合わせによる有能感タイプといじめとの関連を検討した結果, 仮想的有能感の高い「仮想型」・「全能型」ではいじめ加害経験, 被害経験が多く, 仮想的有能感の低い「萎縮型」・「自尊型」ではいじめ加害経験, 被害経験が少ないことが示された。本研究の結果から, いじめ加害経験, 被害経験には, 自尊感情よりもむしろ, 仮想的有能感が強く関連していることが示された。
著者
松本 麻友子 速水 敏彦 山本 将士
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.87-90, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

This study investigated what influences assumed competence in high school students. In Study 1, the association between assumed competence and interpersonal relationships was examined. The results showed that good relationships with school teachers reduced assumed competence. In Study 2, a semi-structured interview of class teachers was conducted about their relationships with the students. The results suggested that teachers' deep understanding of each student in the class was an important factor for the decline of the students' assumed competence.
著者
山本 将士
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.153-170, 2008-12-23

本稿の目的は,笠地蔵の教材価値の再発見,笠地蔵の変容過程に関する調査研究,絵本として再話された作品分析である。比較研究の結果,民話「笠地蔵」絵本は,本来「貧乏な爺が満足な正月を迎えたいという願望を叶えるために町へ買い物に行く。しかし町へ行く途中に,地蔵が雪を被っているのを見つけて,爺が2人でこしらえた売り物の笠を地蔵にかぶせるが,笠が1つ足りないので,自分の笠(手ぬぐい,ふんどし)を地蔵に被せてあげる。爺が家に帰って,何も持っていない理由を説明すると,婆も一緒に喜んでくれるが,大晦日に食べものが何もないために,そのまま2人とも寝てしまう。夜中に地蔵が賽物,金銀,米,餅を運んで来てくれる翌朝外を見ると,地蔵が立ち去る後姿が確認できた。そして,爺婆は良い正月を迎えることができた。」が,理想の物語であるとことを示すことができた。また,上述した条件に,最も近似する笠地蔵の採話が,『日本昔話名彙』(柳田國男,1951)であった。さらに,これまでに出版された58冊の絵本を評価した結果,(稲田・梅田,1978) 『かさこじぞう』,(瀬田・赤羽,1966) 『かさじぞう』の2冊を優れた民話絵本であることを示すことができた。
著者
山本 将士
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.191-205, 2007-12

本研究では、いじめの規定因として他者軽視に基づく仮想的有能感に注目し、検討することを目的とした。2007年1月中旬に、被験者である高校2年生453名(男子243名、女子210名)に対して(1)他者軽視、(2)自尊感情、(3)過去半年間のいじめの経験、(4)過去のいじめ経験、の尺度で調査を実施した。その結果、自尊感情が高く仮想的有能感も高い「全能型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去半年間のいじめ(加害)の生起が多かった。また、自尊感情が低く仮想的有能感が高い「仮想型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去半年間のいじめ(被害)の生起が多いことも示された。さらに、「全能型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去のいじめ(加害)の生起が多く、「仮想型」の生徒は、他の有能感タイプよりも過去のいじめ(被害)の生起が多いことが示された。自尊感情と仮想的有能感がともに低い「萎縮型」は、間接的いじめに限り被害者になりやすいことが確認された。