- 著者
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山本 将士
- 雑誌
- 人間文化研究 (ISSN:13480308)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.153-170, 2008-12-23
本稿の目的は,笠地蔵の教材価値の再発見,笠地蔵の変容過程に関する調査研究,絵本として再話された作品分析である。比較研究の結果,民話「笠地蔵」絵本は,本来「貧乏な爺が満足な正月を迎えたいという願望を叶えるために町へ買い物に行く。しかし町へ行く途中に,地蔵が雪を被っているのを見つけて,爺が2人でこしらえた売り物の笠を地蔵にかぶせるが,笠が1つ足りないので,自分の笠(手ぬぐい,ふんどし)を地蔵に被せてあげる。爺が家に帰って,何も持っていない理由を説明すると,婆も一緒に喜んでくれるが,大晦日に食べものが何もないために,そのまま2人とも寝てしまう。夜中に地蔵が賽物,金銀,米,餅を運んで来てくれる翌朝外を見ると,地蔵が立ち去る後姿が確認できた。そして,爺婆は良い正月を迎えることができた。」が,理想の物語であるとことを示すことができた。また,上述した条件に,最も近似する笠地蔵の採話が,『日本昔話名彙』(柳田國男,1951)であった。さらに,これまでに出版された58冊の絵本を評価した結果,(稲田・梅田,1978) 『かさこじぞう』,(瀬田・赤羽,1966) 『かさじぞう』の2冊を優れた民話絵本であることを示すことができた。