著者
田村 淳 入野 彰夫 山根 正伸 勝山 輝男
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.11-17, 2005-06-30
被引用文献数
11

ニホンジカの採食圧により林床植生が衰退した丹沢山地冷温帯の3タイプ(オオモミジガサーブナ群集, ヤマボウシーブナ群集, イワボタンーシオジ群集)の植物群落に設置した植生保護柵25基において, 設置4年後に植物相を調査した.柵の中(3.7ha)で334種の維管束植物を確認した.その中には県の絶滅種, 絶滅危惧種など12種, および県新発見種1種が含まれていた.オオモミジガサーブナ群集は出現種の5.1%が希少種で他の2群落よりも希少種の出現率が高かった.対象地域の過去の植物相と比較すると, シカの採食圧下で一度消失したと考えられる希少種5種が出現し, 過去に未確認だった希少種も6種出現した.したがって, ニホンジカの採食圧が強い丹沢山地冷温帯において, 植生保護柵の設置は単に林床植生の保護だけでなく, 希少種の保護・回復にも有効な手段と考えられた.