著者
深野 麻美 春山 成子 桶谷 政一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-14, 2010 (Released:2010-08-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

カンボジア・トンレサップ湖岸北西部は,アンコール王朝期より地形面の人為改変を受けているが,地形面特性については明瞭に理解されていない.本稿では,現地調査,空中写真,SRTMデータをもとに湖岸地域の地形分類を行った.この地域は扇状地,砂堤,湖岸段丘I・II,湖岸湿地に分類できた.また,ボーリング試料から人為改変を受けた湖岸平野の地形変化についても検討した.湖岸段丘の一部では,アンコール王朝期の河道変更の影響を受けて,自然堤防が形成されたことが示唆された.
著者
春山 成子 大矢 雅彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.571-588, 1986-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
2 2

隣り合って流れる庄内川,矢作川の河成平野の地形分類図を作成した.地形要素の組合わせは庄内川は小型自然堤防+高位デルタ+低位デルタ,矢作川は扇状地的自然堤防+高位扇状地的デルタ+低位扇状地的デルタとなっており,著しい地域差が見られた. この原因を次のように考えた. (a) 矢作川は高度分布,高度分散量,起伏量平均値共に大きく,かつ風化しやすい花崩岩からなるため,山地崩壊が庄内川より大である. (b) 庄内川は河川縦断勾配が緩でかつ盆地,峡谷の繰り返しとなっており,下流平野へ流下する砂礫量は矢作川より少ない. (c) 縄文海進時に堆積した海成層上の河成沖積層の厚さは庄内川平野の方が薄い. (d) 氾濫原の幅は庄内川平野では上,中流は狭く,下流は広い.このため,上,中流では河道変遷は少なく,洪水は集中型となるが,下流は変遷が大きく,溢流型となる.矢作川は氾濫原の幅の変化は少なく,洪水は平野上流側はショートカット型,下流側は盗流型となっている.
著者
室岡 瑞恵 桑原 康裕 春山 成子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.138-148, 2012 (Released:2012-03-26)
参考文献数
5

アムール川は主に中国とロシアの国境を流れる国際河川である.中流域では高い頻度で洪水が起こっているが,定期観測データがほとんど無く,洪水の実態は明らかにされてこなかった.本研究ではアムール川中流域のハバロフスクにおける降水量データと流量データを基に洪水の数値解析を行い,現地での聞き取り調査と照合した.さらに,地形分類図を作製した上でJERS-1/SARデータにより湿地図を作製し,遊水地としての機能を多く果たす地形を明らかにした.その結果,月降水量の頻度は指数分布に従っており,5・10・20・50・100年確率降水量を算出することができた.また,降水量と流量の関係はロジスティック曲線に従っており,理論上,降水量96.5mm/月を超えると河川氾濫が始まることがわかった.当該地域の地形は丘陵地,氾濫原,自然堤防,低位及び高位段丘に分類できた.この中で湿地が多く分布するのは氾濫原で,湿地面積と降水量に相関がみられ,遊水地としての機能を大きく果たしていることがわかった.
著者
氷見山 幸夫 春山 成子 土居 晴洋 木本 浩一 元木 靖 季 増民 季 増民
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

アジアにおける持続可能な土地利用の形成に向け、日本、中国、インド、極東ロシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ミャンマーで広域の土地利用変化データファイル(オリジナル電子地図、多数の現地写真等)を作成し、土地利用の現況と変化及び関連する諸問題を明らかにした。その成果はSLUAS英文成果報告他多くの雑誌・文献等で公刊した。また国際地理学連合、日本学術会議、日本地球惑星科学連合などと連携してアジア各地と国内で多くのシンポジウム等を主催・共催・後援し、研究成果を発信し、持続可能な土地利用に関する理解の向上に貢献した。東日本大震災発災後は土地利用持続可能性の観点から深く関わり、学術会議提言に寄与した。
著者
松本 淳 多田 隆治 茅根 創 春山 成子 小口 高 横山 祐典 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,アジアモンスーン地域における過去の気候資料と,日本のさまざまな緯度帯から取得される地質試料(サンゴ年輪やボーリングコア等)の解析によって,過去数10年〜数千年の時間スケールでアジアモンスーン域の降水量変動および各流域洪水の洪水史をまとめ,モンスーンにともなう降水量変動と洪水の歴史の関係を長期的に復元し,地表環境の変化との関係を考察することを目的として研究を行なった。千年規模での変動として,日本海南部隠岐堆の海底コア三重県雲出川流域のボーリングコアを解析した。後氷期には約1700,4200,6200年前に揚子江流域で夏季モンスーン性降雨が強まり,雲出川流域において約6000年前には堆積速度が大変に速く,この時代には広域的に洪水が頻発していた可能性が判明した。また,琉球列島南端の石垣島で採集されたサンゴ年輪コアの酸素同位体比と蛍光強度の分析によって,過去の塩分変動を定量的に復元できることがわかった。20世紀後半の変動としては,近年洪水が頻発するバングラデシュにおいて,GISとリモートセンシングデータによってブラマプトラ川の河道変遷と洪水との関係を検討し,河道が約10年周期で河川の平衡状態への接近と乖離とを繰り返したことがわかった。また大洪水が雨季には稲作に大きな被害をもたらすものの,引き続く乾季には大幅な収量増加がみられることを見出した。流入河川上流域のネパールでの降水特性を検討し,ネパールで豪雨が頻発した年とバングラデシュにおける洪水年とが対応していないことがわかった。さらに日本においては,冬の終了や梅雨入り・梅雨明けが近年遅くなっていることを明らかにした。気候変動研究に多用されているNCEP/NCARの長期再解析データには,中国大陸上で観測記録と一致しない変動がみられることを見出し,アジアモンスーンの長期変動解析にこのデータを使用するのは不適切であることを示した。
著者
春山 成子 WEICHSELGARTNER J. JUERGEN Wisergartner
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

今年度は、アジア太平洋地域で発生している自然災害の研究事例を統合化することを中心に研究を行った。また、2004年度では日本で異常な洪水・台風災害が発生していることもあり、自然災害のなかでも洪水事例を多く取り上げることにした。さらに、アジア太平洋地域で発生した自然災害についても、統計資料、及び、データなどを収集して、統計的な処理を行い、分析を行った。この際、ことに社会的な見地、人文科学的な研究視点に立脚して、自然災害の研究を行っている研究者に面会することにした。自然災害の研究概況を掌握するために、岐阜大学工学部の高木先生に面会して、工学部における日本人研究者の災害研究の蓄積と現在の研究動向を探るとともに、岐阜大学においてジョイント講義を行い、岐阜大学の研究者との研究連絡の輪を作り、今後の研究の展望を話しあうとともに、ヨーロッパにおける自然災害研究者との知識を共有するために数回の討議を行った。また、アジア各国からの研究者との面会を行い、欧米とアジアの自然環境認識の違いについて話し合った。さらに、つくばの防災科学研究所佐藤研究室を訪問し、日本で試みている「統合的な自然災害研究の将来的な方針」を聴取するとともに、ドイツの防災システムについてのユルゲンが報告し、意見交換を行った。さらに、神戸市で開催された「地震災害10年」の企画による国際会議(自然災害会議)に参加して、各国からの来日している研究者および行政、研究機関の事務官、国連の各機関の実務担当官との個別の会合を持ち、2004年度及び2005年度始めの災害研究のあり方、及び、実務としての自然災害・防災・警報システムに関わる手法、技術などの討議を行った。学内においては、水曜日午後にサイエンスコミュニケーショの講義を行い、日本人学生に向けた災害研究の知識の共有に関する自主ゼミの中で、科学知識の統合化に関わるゲーミング理論を構築するとともに実践した。また、これらの研究を通して、4月2日には弥生講堂において研究成果の一部を発表した。
著者
内海 真希 春山 成子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.72, 2003

1.はじめに(背景) わが国の環境問題を解決するためには、廃棄物投棄・処理による汚染をいかに抑制するかが大きな問題である。産業廃棄物は都市部で大量に排出される一方で、周辺地域の近郊農村あるいは遠隔地農村へと運ばれながら処理・処分される過程で、大気・土壌汚染など自然・生活環境に多大な悪影響を及ぼしている。とりわけ、首都圏近郊において、所沢周辺(「埼玉県西部地域」)には、最も多くの産業廃棄物処理業者が長期にわたって集中してきたため、ダイオキシン問題が発生した。 局地的で大きな環境汚染を引き起こす産業廃棄物の集中を抑制し、問題の早期解決を図るために、こうした立地・集中の空間要因を分析し、把握することが不可欠であると考える。2.研究目的 産業廃棄物集中の要因を、都市近郊農村地域における農業的土地利用変化と、「土地」に帰属する社会的な要因を軸に評価する。具体的には、_丸1_立地要因として、産業廃棄物の集中・分布形態と土地環境(土地利用・市街化調整区域ほかゾーニング)との関係 _丸2_社会要因として、産業廃棄物業者の集中に大きな影響を与えた、地域内の土地税制などの個別農家の土地問題および、共有地としての入会林野についての問題等を明らかにする。3・対象地 首都圏30km圏にある所沢市と隣接市町村(川越市・狭山市・三芳町など)。産業廃棄物処理業者が日本で最も多く密集して集中している地域である、三富地域と関越道所沢IC周辺を対象とした。4.研究方法 社会問題を生じさせることになった、産業廃棄物処理施設・不法投棄の分布調査を行い、最近20年間を時間軸として分布域を特定する。得られた分布データと周辺の細密数値情報(10mメッシュ土地利用)との関係をGISにより分析し、ヒアリングや統計資料とあわせて、土地環境から立地(集中)要因を明らかにする。 さらに、埼玉県庁・所沢市役所などの自治体や所沢の農業従事者・周辺住民へのヒアリングや行政資料調査から、立地のプロセスと要因を総合的に把握し、その中で特に土地問題に焦点を当てて、社会要因を分析する。5.考察 産業廃棄物処理施設の立地には、「排出地からのアクセス」と「業者による用地取得」が容易であることが前提となる。まず、所沢地域は「関越自動車道」や「川越街道」に隣接し、排出地・東京から大量の産廃を大型のトラックやダンプカーで運搬してくるには都合がよい環境にある。また、高速道路のインター(所沢IC)の存在は、東京からの産廃の出口の機能としてだけでなく、一度中間処理や保管積み替えを経て、北関東や東北地方の最終処分場へと送り出すルートの「入口」としても機能してきた。さらに、地元住民(農家)による土地所有の維持困難から、「業者による用地取得」の容易性が確保される。そのような土地所有に関する問題として、農業形態の変化による平地林の管理放棄と荒廃化、入会形態の消失による個人所有形態の卓越、さらに相続税問題・農業外収入確保の必要性、といった問題が複雑に絡み合い、それらによって平地林や一部農地の売却・賃貸を余儀なくされる。それらに加え、業者による土地取得と操業を容易にするのが、「市街化調整区域」のゾーニングである。「市街化を抑制すべき区域」である調整区域内では、商業施設や宅地開発が法制度上難しく、地主にとっても宅地開発に面倒な手続きがかかる」が、例外的に建設できる「第一種工作物」や大規模な開発を伴わない小規模な焼却炉は許可を必要としなかったことが業者にとって、産廃施設誘致に好都合であったといえる。
著者
垂澤 悠史 松本 真弓 春山 成子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.115, 2010

1. はじめに<BR> 人間活動は自然環境と調和した文化景観を育み、生活・生業の在り方を表す景観地について、当該地域の風土により形成された景観地で日本国民の生活または生業の理解のために欠くことのできないものであり、これらを文化的景観と表現してきた(文化庁)。すでに、春山(2004)は中山間地域の星野村の棚田の文化的景観について、自然環境・人文環境の相互関係の中で成立していることを示し、当該地域の住民のアンケート調査から、「なじみの景観」の中に高い評価点を見出していることも示した。一方、域外からの来訪者の意識の中にはプロトタイプの日本の原風景としての棚田への強い意識の上に文化的景観の咀嚼が認められた。近年では、さらに広い空間を対象として、河川景観に着目して四万十川流域を重要文化的景観として評価されてきているが、必ずしも、河川流域の文化的景観に対しての評価手法が整えられてわけではない。<BR> そこで、今回、三重県、和歌山県、奈良県の県境を流れる一級河川である新宮川(熊野川)流域が世界遺産として登録されている中世以降の信仰地域としての景観を残していることに注目して、河川景観の中に残されている歴史文化的景観のフオトボイス分析手法によって文化的景観の分析を行おうとした。上流地域には林業地域としての景観、神社森を含めた歴史的信仰景観、水運景観が複雑に入り組んでおり、自然災害としての斜面崩壊地、土砂災害などの自然災害と防災に取り組む景観も含まれている。新宮川の美しい自然景観の中に人類の多様な営みの景観が独特に共存しているのである。<BR><BR>2. 景観をとらえる手法について<BR> 文化的景観は局地的な微気候・表層地質と地形・植生などの自然的な環境要素を基層として、この上に成り立っているさまざまな人間の社会的な活動を反映している。ここには、歴史的・民俗的・文化的な要素が複雑に関係生を均衡させている。それらの諸要素の解釈にむけて、将来に向けた河川景観についての評価を考えるために、景観評価を画一的な手法で分析を試みようとした。ここではフオトボイス分析を用いることにした。また、景観評価にかかわり当該地域の住民の心象風景についての聞き取り調査を行った。現地調査は2009年10月、2010年5月に行い、新宮市の教育委員会での資料探査、新宮川河口部から本宮までの河川景観の写真撮影とその解釈を行った。<BR><BR>3. 新宮川(熊野川)の河川流域の中に残る信仰景観<BR> 新宮川下流には速玉神社と神社森、本宮の神社森が重要な信仰空間として上下流に対置している。いずれの社寺地も河川に隣接している。また、日本有数の豪雨地帯を背後に抱えているために、本宮は新宮川の洪水に伴って河道変遷が生じたために、神社社寺地の空間的な立地は大きく変化を受けた。しかし、旧社寺地は神社森として河道近くに保存さており、河川流域の変化を記憶として残している。一方、河川・河道においては、かつての重要な参宮路としての水運のための航路の歴史的な痕跡が残されている。現在、防災施設の設置によって河川景観は大きく変動してはいるが、俯瞰しうる河川景観には信仰景観を大きく感じることのできる空間である。<BR><BR>文献<BR>春山成子編著(2004)棚田の自然景観・文化景観、農林統計協会出版
著者
春山 成子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

アジア太平洋地域での災害は地震・津波、洪水、地すべり、旱魃など多様であり、災害発生時において自らが考え行動できることが望まれている。このため地理・地学教育の双方から学びあいが求められる。地球を学び、地球に生きることを視野に入れ社会科と理科が合同で教育することが防災・減災に向けた情報強化につながる。さらに自然観察の技術を磨くため、現地見学会を含めた地学・地理合同の教育、地域の将来を見据え社会イノベーションを考えるためのジオパーク活用と地域活性化とを同時に考えるために地域性を加味した具体的な環境教育の拡充を実現することで、空洞化していく地域社会の抱える問題の解決策に糸口を見出すことができるような教育体系を考えることが求められている。
著者
春山 成子 辻村 晶子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-20, 2009 (Released:2010-02-24)
参考文献数
11
被引用文献数
3

河川洪水による被害を軽減するためには,堤防・ダムなどの防災施設の構造物建設を先行させる工学的手法とともに,地形条件を勘案した最適な土地利用計画を編み出すための手法を開発すること,災害時に速やかに活動しうる社会構造・社会組織母体を形成させること,これらの活動を通して災害時の避難活動を円滑にさせることも重要な課題である.減災にむけた社会組織の活動を円滑に進めるためには,ハザードマップ,リスクマップを作成し,地域住民に災害ポテンシャルを周知させるような住民参加型の防災計画の樹立が求められている.本研究では2004年豊岡洪水の現地調査から社会組織の最小レベルである地区内に設けられた「隣保」と自主防災組織に着目して,速やかな防災活動を進める地域の工夫を確認した.
著者
春山 成子 葛葉 泰久 宮岡 邦任 佐藤 照子
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

中部ミヤンマーにおいて中心となるイラワジ河流域の自然環境の変動を完新世に照準に合わせてオールコアボーリングによって得た試料、衛星画像を用いた地形解析を中心にして行った。その結果、完新世の初期には現在のデルタは扇状地として形成されていたものが完新世中期以降に自然堤防地帯からデルタ地域への変遷が認められるようになった。人間の世紀以降の流域の土地被覆変化は河川の流出土砂量に影響を与えことが河川流路変動から明らかになった。