著者
井上 徹志 張 筱墀 池田 彩花 河野 祥子 勝山 一朗 山田 昌郎 金子 元 渡部 終五 山田 明徳 工藤 俊章
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.261-268, 2014 (Released:2015-01-07)
参考文献数
29
被引用文献数
1

食材性二枚貝であるフナクイムシは,他の食材性の動物同様,その消化管内にセルロースを利用する細菌が生息していることが予想されるが,その細菌相に関する知見はほとんどない。本研究では,フナクイムシ(Teredo navalis)由来のセルロース分解菌を単離することを目的に,フナクイムシ由来の197株およびフナクイムシ周辺環境としての木片由来の47株の単離株について,セルロース,キシラン,アルギン酸などの難分解性多糖類に対する分解活性を判定した。セルロース分解活性を示したフナクイムシ由来34株,木片由来7株の単離株について,16S rRNA 遺伝子の部分配列による相同性検索の結果,単離株は10属に分類された。フナクイムシ由来のセルロース分解菌は,耐アルカリ性あるいは好アルカリ性,中度あるいは高度好塩菌を含み,フナクイムシがセルロース分解能をもつ極限環境微生物の分離源になり得ることが示唆された。
著者
本郷 裕一 山田 明徳 伊藤 武彦 猪飼 桂 守川 貴裕 髙橋 雄大
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

シロアリの餌である木片の消化の大部分は、シロアリと1.5億年以上前に共生を開始した腸内原生生物群集が担っているが、それら原生生物の起源や共生に至った過程は未知である。本研究の主目的は、木質分解性原生生物を進化過程で喪失した「高等シロアリ」の一系統群が比較的最近、新規な木質分解性原生生物を再獲得した可能性の検証である。結果、新規原生生物は多様な高等シロアリに共生しているものの、多数の原生生物細胞が見られるのはやはり一系統群のみであること、同原生生細胞質が木片で充満していること、同原生生物を含む腸画分はセルロース分解活性を有することなど、今後の研究の基盤となる重要な情報を得ることができた。
著者
山田 明徳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究計画の主要な仮説は「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に競争関係がある」のではないか、というものである。前年度までに、微生物によるリターの分解量(リターの炭素無機化量=呼吸量による二酸化炭素の放出量)が雨期になると増加することを示してきた。「熱帯林床のリター(枯葉、枯枝)をめぐって、微生物とシロアリとの間に資源獲得競争関係がある」とすれば、微生物によるリター分解量が比較的少ない乾期にシロアリによるリター分解量が多くなることが予想される。そこで、タイ国・サケラートのシロアリによるリター分解を代表するキノコシロアリの菌園の現存量(土壌中に分布するキノコシロアリの菌園の現存量)を雨期と乾期とで比較し、乾期に比べると雨期では統計的有意に少なくなることを明らかにした。したがって、熱帯林の降水量の変化は微生物とシロアリによる分解量のそれぞれに逆の影響を及ぼし、微生物とシロアリが結果として相補的に熱帯林床におけるリターの迅速な消失(分解)に関係していることが示された。熱帯林におけるリター分解におけるシロアリの重要性は上述のように定量的には明らかになってきたが、空間的にどのようにシロアリがリター分解に関わっているか、ということは明らかになっていない。しかしながら、リターの分解過程を詳細に明らかにし、熱帯林の炭素循環や二酸化炭素収支などを考える上では、空間的に不均質に分布するシロアリによるリター分解パターンを解明することは必要不可欠である。そこで、メッシュサイズが異なる2種類のケージを用いてそれを比較することで、シロアリによるリター分解の強度と頻度を調査した。その結果、シロアリによるリター分解は微生物によるリター分解と比べると局所的・集中的に起こることが明らかになり、シロアリはリターの分解過程を空間的に不均質にするような効果があること明らかになった。