著者
阪上 弘彬 渡邉 巧 大坂 遊 岡田 了祐
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.149-161, 2020 (Released:2020-07-23)
参考文献数
62
被引用文献数
1

欧米の地理教育・社会科教育では近年,古典的な地理情報システム(GIS)教育の代替案として提案された「空間的な市民性教育(Spatial Citizenship Education;以下 SCE)」が注目されている。本稿では文献研究を通して,欧米の地理教育・社会科教育における SCE の研究動向および特質を明らかにする。SCE では,空間,場所,スケール,権力,そして人間―環境関係といった地理の概念が重視されるとともに,社会的な意思決定プロセスに参加できる市民の育成が目指されている。その際に重要とされるのが地理空間情報や GIS をはじめとするジオメディアである。具体的な取り組みに関しては,初等・中等教育におけるジオメディアを用いた学習だけでなく,地理教師のためのコンピテンスや研修カリキュラムといった教師教育に関するものもみられた。SCE の動向の検討から,日本の地理教育・社会科教育においても,地理学者・地理教育の専門家と社会科教育の専門家によるそれぞれの専門性を踏まえた SCE 研究,教師教育の推進が不可欠である。
著者
岡田 了祐
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.103-116, 2015 (Released:2020-01-26)
参考文献数
11

本稿の目的は,多様な子どもの学びを捉える構築型評価モデルを使って,典型的な社会科授業の一つである概念的社会認識形成型社会科,その中でも概念の構築型授業における子どもたちの社会認識形成過程について理論的な説明をすることにある。当該授業では5つの認識類型が混在しており,各類型から1名ずつ抽出し,上記のモデルを使って個々の認識形成過程を分析した上でそれらを比較考察した。その結果,自他の観点の比較による因果の関連づけの有無が飛躍とつまずきの分岐点となることが当該授業における認識形成過程の特質として浮上し,それを踏まえ指導を検討した。本稿の意義は以下の4点である。①当該授業における5つの認識類型を見いだし,個々の認識形成過程を実証した点。②当該授業における個々の認識形成過程が異なる理由を実証した点。③認識形成過程の評価の具体を示した点。④目標論のみの評価では捨象される子どもの学びを明らかにした点。
著者
高木 融 佐藤 滋 黒田 直樹 逢坂 由昭 高木 眞人 林 幹也 村田 和彦 岡田 了祐 青木 達哉 小柳 泰久
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.888-891, 1999-03-01
参考文献数
8
被引用文献数
10

従来より食道気管支瘻に対して, 保存的治療, 内視鏡治療, 手術などが行われてきた. 今回, 我々は生体接着剤であるEthyl-2-cyanoacrylate(以下, ECAと略す)を用いた内視鏡的瘻孔閉鎖術を試み, 良好な結果を得たので報告する. 症例は73歳の男性. 平成9年6月初めより胸部不快感出現し, 6月6日内視鏡検査にて上切歯列より32cm, 3時方向に憩室があり, 憩室内に2mmの瘻孔を認めた. 7月2日瘻孔造影にて右B6がら造影剤の流出を認めた. 7月10日散布チューブよりECA1mlを瘻孔開口部に散布し, 造影にて瘻孔が閉鎖しているのを確認した. 散布後4日目の造影で一部造影剤の流出を認めたため, 再度ECA1mlを散布した.翌日より食事を開始し退院となった. ECAによる内視鏡的瘻孔閉鎖術は, 比較的簡単な手技で安全に繰り返し施行できるため, 手術を考慮する前や, 全身状態の悪い症例に有効な方法と思われた.