著者
岡部 隆志
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.1-10, 1999-05-10

記紀や風土記には、神婚の物語が多数含まれる。それらの神婚譚は、人々の幻想が生み出したものにせよ、神の妻として世間から認知される巫女の憑依体験が内在されていると考えられる。神の憑依にはレギュラーとイレギュラーとがある。イレギュラーの憑依体験は人間に「畏れ」を抱かせるが、その意味では、イレギュラーの憑依体験が、一般的な神の子の物語とはならない異類婚姻譚などの、人間の側の「畏れ」を内在させた物語を生み出す契機になっているのではないか。
著者
岡部 隆志
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.1-10, 1999-05-10 (Released:2017-08-01)

記紀や風土記には、神婚の物語が多数含まれる。それらの神婚譚は、人々の幻想が生み出したものにせよ、神の妻として世間から認知される巫女の憑依体験が内在されていると考えられる。神の憑依にはレギュラーとイレギュラーとがある。イレギュラーの憑依体験は人間に「畏れ」を抱かせるが、その意味では、イレギュラーの憑依体験が、一般的な神の子の物語とはならない異類婚姻譚などの、人間の側の「畏れ」を内在させた物語を生み出す契機になっているのではないか。
著者
岡部 隆志
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.12-21, 2006-05-10 (Released:2017-08-01)

中国居住の少数民族は豊かな歌垣文化を持っている。日本古代の歌垣研究も少数民族の歌垣研究からの成果をもとに再検討が必要だ。例えば、少数民族の歌垣では、歌い手の世俗的な現実が歌に織り込まれることで、歌の掛け合いが持続していくという面がある。日本の歌垣論では歌垣を儀礼として捉えがちで、こういった歌の実態が見えてこない。少数民族の歌垣を踏まえれば、歌垣における歌についてのより深い考察が可能となるであろう。
著者
中村 生雄 岡部 隆志 佐藤 宏之 原田 信男 三浦 佑之 六車 由実 田口 洋美 松井 章 永松 敦
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、日本および隣接東アジア地域の狩猟民俗と動物供犠の幅広い事例収集を通じて、西洋近代率会において形成された「供犠」概念の相対化と批判的克服を行ない、東アジアにおける人と自然の対抗・親和の諸関係を明らかにすることを目的とした。言うまでもなく、狩猟と供犠は人が自然にたいして行なう暴力的な介入とその儀礼的な代償行為として人類史に普遍的であるが、その発現形態は環境・生業・宗教の相違にしたがって各様であり、今回はその課題を、北海道の擦文・オホーツク・アイヌ各文化における自然利用の考察、飛騨地方の熊猟の事例研究、沖縄におけるシマクサラシやハマエーグトゥといった動物供犠儀礼の実地調査などのほか、東アジアでの関連諸事例として、台湾・プユマ(卑南)族のハラアバカイ行事(邪気を払う行事)と猿刺し祭、中国雲南省弥勒県イ族の火祭の調査をとおして追求した。その結果明らかになったことは、日本本土においては古代の「供犠の文化」が急速に抑圧されて「供養の文化」に置き換わっていったのにたいして、沖縄および東アジアの諸地域においては一連の祭祀や儀礼のなかに「供犠の文化」の要素と「供養の文化」の要素とが並存したり融合して存在する事例が一般的であることであった。そして後者の理由としては、東アジアにおけるdomesticationのプロセスが西南アジアのそれに比して不徹底であったという事実に加え、成立宗教である仏教・儒教の死者祭祀儀礼や祖先観念が東アジアでは地域ごとに一様でない影響を及ぼし、そのため自己完結的な霊魂観や死後イメージが形成されにくかった点が明らかになった。またく狩猟民俗と動物供犠とに共通する「殺し」と「血」の倫理学的・象徴論的な解明、さらには、人間と自然とが出会うとき不可避的に出現する「暴力」の多面的な検証が不可欠であることが改めて確認された。