著者
岩崎 一郎 佐藤 嘉寿子
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.14-30,99, 2004-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

1998年に始動したハンガリーの新年金制度は,強制的私的積立年金の導入という点で画期的である。しかし,年金改革をめぐる政治的意思決定プロセスとその後の制度運用は,省庁間の利害対立,与野党間の政治力学,労働組合や金融機関を含む利益集団の存在に大きく左右された。それは,強制的私的積立年金の制度的枠組や私的年金基金の経営実績にも一定の悪影響を及ぼした可能性が高い。強制的私的積立年金が将来においてサステナブルであるためにも,保険加入者の利益が最も優先されるようなガバナンス改革やモニタリング機構の強化が求められる。
著者
長岡 貞男 岩崎 一郎
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-17,120, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

市場経済移行と経済開放は,旧社会主義諸国の研究開発体制に変革を迫ってきた。本稿は,中欧諸国に焦点を当てて,その技術パフォーマンスを分析する。主要な結論は以下の通りである。これらの国はバルト諸国とともに,ハイテク輸出の拡大,情報技術の普及で証拠付けられるように外国技術の吸収という面で大きな成果がもたらされている。研究開発は縮小したが経済の基礎条件から見て過小な水準ではなく,他のOECD諸国の経験から外国直接投資は長期的には研究開発の水準を減少させる可能性も否定できないが,少なくとも国内企業がその効率的な企業体制を整備するまではそれを下支えする効果がある。しかし,これらの国々の特許生産性で評価した研究開発効率は依然著しく低く,グローバルに競争的な研究開発体制の構築は今もなお時間を要する課題であることも同時に明らかとなった。
著者
岩崎 一郎
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.131-132,213, 2002 (Released:2009-07-31)
参考文献数
3

With the aim of illuminating causality between reform process and economic performance of the Central Asian states under systemic transformation towards a market economy, I classify them into two categories from the viewpoint of the institutional allocations, which characterize relations between government and business firms. Theoretical discussions and some empirical evidences strongly suggest that the differences in government-business relationship of each country have deeply interrelated with robustness of industrial production against so-called 'transformational recession' and incentive levels of the former socialist enterprises for their restructuring during the initial phase of transitional period. It seems to me that these findings may be suggestive also for other FSU countries.
著者
西村 可明 田畑 理一 岩崎 一郎 雲 和広 杉浦 史和 塩原 俊彦 荒井 信雄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,ロシアにおいて市場経済化が開始されて十年以上経過した時点で,既に市場経済が成立したといえるのかどうか,経済成長の中長期的展望はいかなるものかについて,経済学的に正確な見解を提示することにある。そのために,(1)1992年以降のロシア経済の発展動向の分析,(2)経済改革の進捗状況の分析,(3)マクロ経済の推移と展望,(4)企業・ミクロ経済制度の考察の課題に,研究分担者・協力者による共同研究を通じて応えようとするものである。我々のある程度結論的な見解は,次の通りである。すなわち,(1)ロシア経済は1992年以降外部から移植された市場経済制度にもとづく経済活動を通じて、持続的な経済成長が確保されるようになっていることから,基本的には市場経済が成立したと見なしうること,(2)その事はミクロレベルでは企業のコーポレートガバナンスの形成によっても裏付けられること,(3)但し金融市場の整備は遅れていること,(4)経済改革の動向は一義的に分明ではなく,自由経済への接近と国家資本主 義的動きとが錯綜していること,(5)ロシア経済は長期的には人口減少の問題を抱えているが,独自のイノベーションなど技術革新が無くても,先進国からの平均的技術の輸入によってキャッチアップしながら成長を続ける巨大な可能性があることの5点に要約できる。この様な見解は,我々の研究成果の中で提示されておりそれは,大別すれば,(1)ロシア・マクロ経済の発展動向と見通しに関するもの,(2)ロシアにおける経済改革の動向に関するもの,(3)ロシアにおける経済体制の現状に関するもの,(4)ロシア企業・金融機関の制度的・実証的分析にかかわるもの,(5)その他に分類することができる。